魔法とスキル
はじめましてはじめです。
再びの方はこんばんは。
今日凄く仕事が忙しくて更新少なくてごめんなさい。
明日はつるぎも凡汎も両方三回以上更新するので今日はご勘弁を……
「レオン兄さんこの辺り本当に何もないね」
俺は素直に思ったことを口にしていた。立派な屋敷以外、このあたりには何もなかった。
道があるにはあるがほっといたらすぐに雑草で覆われそうだ。
「まあ、父上が辺境伯と言ってもここは辺境だからね。爵位なんて名ばかりだよ。開拓しなくちゃ村すらない」
「街は?」
「あはは。あると思うかい?」
ないのかよ!マジで名前だけだな。通りで飯が不味いはずだ。
「けど王国の首都から離れすぎているからもう貧乏な国みたいなものだけどね。違う領主の土地まで馬車で一ヶ月かかるし」
なんでこんな土地にまで国を広げたんだよ。
俺は国王にそう言ってやりたかった。
「さてと、魔法だったかな?教えてほしいのは?」
レオン兄さんは俺の作った剣を手にしながら話を進める。
ここに来るまでに聞いた話だとどうやら昨日はここから少し離れた住人の家で農作業をしていたらしい。
マルセルは俺の面倒を見るとか言って昨日は残ったそうだが、そのせいで俺はこの身体に転生することになった。もしくは駄女神のせい。
今日は無理言って、レオン兄さんに残ってもらい、マルセルを代わりに行かせた。
しかし母さんとエリー姉さんはあんなお洒落してて大丈夫なのかな?
農作業……だよな?
「アル?」
「ああ、ごめんなさい。レオン兄さん。魔法。魔法使いたいんだ」
「一応説明するけどよく見ておいて、ファイアーボール!」
レオン兄さんは草原に向かって炎の球を手から打ち出す。
雑草が燃え火柱が上がる。これ焼け野原……山火事的なものになるんじゃね?
「ウォータースプラッシュ!」
おおー!レオン兄さんの手から水が飛び出し、火柱を消してゆく。
流石お兄様!後のことも考えていらっしゃる。何処かのミジンコとはホントに大違いだ。
「魔法は大体想像通りに発動するから、さっやってみて」
説明それだけ?マジか!?
しかし、前世では五割君の名を好き放題にしていた俺だ。一度見たものは五割で再現できる。
「ファイアーボール!」
…………
「ウォータースプラッシュ!」
…………
無駄に声高らかに叫んで右手を突き出した分、恥ずかしさも倍増だ。幸い言いふらしそうにないレオン兄さんで良かった。
「あれ?」
レオン兄さんが不思議そうに俺に近づいてくる。
「前のアルなら問題なく使えたんだけどな」
そう言ってカバンをごそごそしだす。何か秘密兵器が……?
レオン兄さんがカバンから取り出したのは透明な石だった。黄色く光っている。
「この石は魔力の才能がある人が触れると光るんだ。アル。ちょっと持ってみて」
片手に収まる石を手にする。黄色い光はなくなり、何も反応しない。
「え?故障かな?」
石に故障って……まさかとは思うけど……
レオン兄さんが再び持つと黄色い光が再び輝き出す。
俺は両膝と両手を地につけ絶望する。
俺の魔法ライフが……
「信じられないけど、アル」
その先は言わなくてもわかってる。
「魔法の才能なくなってるね」
だろうよ。その水○式みたいな石が反応しないならそういう事ですよね。
「そう落ち込まなくても……使えない人多いから」
けど使える人も多いんでしょ……
「そ、それにアルには特殊なユニークスキルがあるじゃないか」
「それだ!」
そう魔法を使えなくても俺には五割再現がある。昨日魔法も再現できていた。出力五割だが。
「五割再現!」
右手をかざしレオン兄さんが焼き払った所にファイアーボールを放つ。
「五割再現!」
そしてウォータースプラッシュを放つ。あ、これ出力気にしなければ魔法より便利かも。放つときに技名でバレることがない。寧ろ何が出てくるか相手に動揺させる隙ができる。
「魔法を発動させるユニークスキルなんて初めて見たよ」
レオン兄さんは自分の事のように喜ぶ。
その姿に俺も少し嬉しくなった。
「ちなみに技名って言わないと出なかったりする?」
「無詠唱でできる人はいるね。基本喋った方が想像し易いからそうしてる人のほうが大半だけど呼び方は様々かな」
なるほど。ならさっきの隙の件は難しいな。
「まだ試してもいいですか?」
「いいよ、今日はとことん付き合うから」
よし、なら同時出しだ。しかも無詠唱でやってみよう。
「…………」
ユニークスキルは発動しなかった。スキルは喋らないと発動しないのか単純に実力か経験が足りないからだろう。
「五割再現!」
俺の右手から炎球と水流が放たれる。しかしファイアーボールは水流に飲まれ途中で消える。
「アル!何したの!?」
レオン兄さんが興奮気味に近づいてくる。初めて見る表情だ。
「もう一回!もう一回やってみてくれ!」
一人で盛り上がるレオン兄さんは俺の肩をガシッと掴む。
「顔っ!顔近いからっ!」
まじでキスする五センチ前だった……
「五割再現」
レオン兄さんが離れてから、俺は先程と同じ様に炎球と水流を放つ。
「やっぱりっ……」
「近い近い近い!」
レオン兄さんの顔を必死に押し返す。
「ごめんごめん。興奮しちゃった」
興奮しちゃったじゃねーよ。なんなんだよ!兄上も姉上も違う意味でこえーよ。
「で、何か変なところでもあった?」
「ありまくりだね!まず魔法は片手から一つの魔法しか放てないんだ」
ふむふむ。
「けど、アルは片手でファイアーボールとウォータースプラッシュを同時に出したよね?」
「そんなに驚くこと?」
「魔法を使うときの魔力の通り道は一つだからね。普通一つの入り口からは二つの物が同時に出たりできない。僕が知る限り、そんな事ができるのはアルだけだよ」
異世界初。そう聞いて少しテンションが上がる。
けど待てよ?俺の使ってるのは魔法なのかな?ユニークスキルで再現しているからいまいち魔法を使った感覚はない。
「けどレオン兄さん。俺のはユニークスキルの力で魔法じゃないからじゃないかな?」
「そうかも知れないけど、それが誰にわかる?」
つまり一般人的には魔法を同時に行使したのと変わらないということか。
なんというか……手品みたいだな。
まぁ、使えることに越したことはないし、組み合わせ次第でもっと凄い魔法になるかもしれない。
そんな淡い希望をいだきながら、俺はレオン兄さんに、こう言った。
「じゃ、とりあえずレオン兄さんが使える魔法とりあえず全力で全部見せてよ」
ただレオン兄さんの魔法を五割再現しても威力がなくて意味がない。
全力の魔法を五割再現してやっと使い物になるだろう。と考えた俺は笑顔でレオン兄さんを見る。
「えっ……。本気で言ってる?」
「うん!」
夕方。レオン兄さんはその場に倒れ込んでいた。魔力の使いすぎだそうだ。
俺はレオン兄さんが放った魔法全てを五割再現で再現する。
おお、使える。使える!
それに魔法じゃなくてスキルだからかいくら使っても疲れる感じがない。
「レオン兄さん!ありがとう!」
俺が感謝の言葉を贈ると、レオン兄さんは倒れたまま無言で、片手を振る。
やりすぎたかな?
とりあえず、明日はエリー姉さんに協力してもらおう。
そう決めて、俺はレオン兄さんを引きずりながら、屋敷に戻った。
あっ、魔法に夢中で狩りのことすっかり忘れてた……
俺は今日の晩御飯を想像し、がっくりと肩を落とした。