兄上と父上
はじめましてはじめです。
再びの方はこんばんは。
こちら設定詰めてないので矛盾があったらご指摘を……なるべくすぐに直します
「お前姉上に結婚してくれはないだろう」
そうだよな。俺もそう思う。
「気が動転してたんだ。しかし、この家はみんな美男美女だよな」
「それ自画自賛か?」
マルセルが呆れたように、俺を見る。そういえば今の俺は五割君の容姿じゃなくてアルフォンソだったな。
「そうかもな」
はぁ、とため息を吐くマルセル。
「ちょっといいか?」
「兄上!」
マルセルは突然声をかけてきた兄上に駆けて行く。
俺とはえらい違いだな、おい。名前は確か……
「レオン兄さんとかでいいって、兄上って柄じゃないっていつも言ってるだろ」
「いえ、兄上は兄上です」
相変わらず人の話を聞かない阿呆だな。しかし、マルセルよりは話が通じそうだ。
「レオン兄さん。何か用事ですか?」
「あれ?アル、雰囲気変わった?」
「そ、そんなことないですよ」
なんか今日誤魔化してばかりいる気がする。
「アルがそう言うならそうか。そうだ。エリー姉さんと何かあった?帰ってくるなりアルの勘違いで激昂してたかと思えば頬を赤くしてニヤニヤしてたけど、あんなエリー姉さん初めて見たよ」
おおう。それは別の意味で怖いな。
「あはは、なんででしょうね?」
「それは……いっんんっ!」
俺はマルセルの足を蹴って、口をふさぐ。
「驚いたな。いつの間にそんなに中が良くなったんだい?」
まただ。
「いやぁ、今日ちょっと軽く頭をうってね。記憶が飛んでるんだ。だからさっき雰囲気が変わって見えたんじゃないかな?」
「えっ?それ大丈夫なのか?」
「大丈夫だって、医者にも見てもらったし」
「まぁ、アルは元々しっかりしてるから心配はしないけどさ。何かあったら言うんだよ」
いい家族だな。マルセル以外は。
「んー!んー!」
「そろそろ離してあげたら?窒息しそうだよ」
おっと口だけじゃなくて鼻もふさいでたか。
「こっ、殺す気か……」
「大丈夫だって、人間そんな簡単に死なない。そうだろ?」
笑顔でマルセルを見る。
「お前な……」
マルセルはそう言って黙る。昼間の事を言わないだけ俺は優しいと思う。
「そういえばレオン兄さんのユニークスキルって何なの?」
「ん?ああ記憶飛んでるんだっけ?僕のは農耕スキルだね」
何と庶民的な……。
けど、なんとなく似合ってる気がする。
「兄上、ユニークスキルって生まれてから変わることってある?」
「変わる?変な事を聞くね。増えることはあるけど変わることなんてないよ」
えっ?増えるんだ。俺の場合おそらく転生したことで元のアルフォンソのスキルが消えて五割再現なんて俺そのもののスキルが付いたんだろうけど。
「アル、ちょっと見せて見ろよ。剣で良いから」
「何言ってるんだ?アルのユニークスキルは僕と同じ農耕スキルで畑を耕すものだよ」
あ、五割再現でよかった。
「まあ、減るもんじゃないしいいよ。あ、ユニークスキルって使用回数ないよね?」
「安心して、そんなのないから」
レオンが笑いながら答えてくれた。なら安心だ。
「五割再現」
俺は右手を前にかざし剣を五割で再現する。切れ味五割、強度五割だ。ただし見た身は同じ。ここは謎だな。
俺は作った剣をレオン兄さんに渡す。
「凄いな。五割再現か。あれ、けどこの剣」
レオン兄さんは気づいた様だ。
「レオン兄さんは凄いね。レオン兄さんが思った通りだよ。その剣は切れ味も強度もその剣本来の力の半分なんだ」
「そうなのか?案外使えないな」
「うるせーよ」
俺はまたマルセルの足を蹴る。
「けど、これは凄いな。あっ、けどユニークスキルが変わったなんて普通の人には言わない方が良いよ。自分のスキルを変えたいって人が沢山いるからね」
「そうだね。頭をうったのが原因じゃないと思うし、みんなの頭を殴るのは疲れそうだ」
みんながみんな頭をうって異世界転生するわけでもないだろう。そんなの非現実的だ。転生の時点で現実も何もないが。
「この剣て作ったらそのまま?」
どうだろう?再現したものを消したことないし、再現なのだから消えないと思う。
一応試してみるが消えなかった。
「ならこの剣は僕が貰っていいかな?」
「いいですけど使い物にならないですよ」
「弟がユニークスキルで作ったものだし記念にね」
そう言ってイケメンスマイルを振りまくレオン兄様。かっこいい。
何処かの阿呆な兄とは大違いだ。
「そろそろ晩御飯だね。行こうか」
そう言って剣を腰にさげ、レオン兄さんは部屋を出て行く。俺たちもあとに続いた。貴族の食事……楽しみだ!
俺は期待を胸にリビング……で良いのだろうか?リビングに向かった。
屋敷はでかい。それにダイニングルームもでかかった。しかし食事はとても質素だった。味も薄い。
みな、黙々と作業の様に口に運んでいた。使用人も離れたところで遅れて食事を取っていた。
もしかして屋敷はでかいけど貧乏なのかな。辺境伯ってそんなに偉くない?
「どうしたアルフォンソ?手が進んでないようだが」
「きっと今日頭をうったといってたから……」
「それはまことか!」
それは関係ない。正直食事が不味いからだとはなんとなく言えなかった。
しかし親父、そんな立ち上がらなくても。
「それなんですが父上」
「なんだレオン?家ではパパでいいんだぞ」
えらく緩いなシュルツ家は。親父はレオン兄さんが話しかけると座った。
「アルの体調は大丈夫そうですが、ユニークスキルが変化したようです」
「それはまことか!」
先程とは違う意味でそう言ってまた立ち上がる。あ、絶対マルセルの親父だわ。そしてレオンは母さん似だ。姉上は……食事が始まってからニマニマしながら何度も俺を見てくるので無視だ。
隣のマルセルも不気味がってる。
「噂を広めないためにこの屋敷内だけの話にしたいのです」
「止む終えまい」
使用人いるけど言っちゃっていいの?何処か抜けてる気がするが。
「セバス。今の話は他言無用だ。もし街でその話を聞いたらわかっておるな?」
怖いよ親父。誰か殺すくらいなら別にバレていいよ。
セバスと呼ばれた執事が静かに一礼した。
「して変わったというユニークスキルはなんだ?」
「なんでも半分の精度で再現できるスキルのようです」
「半分?」
「アル。スキルを使ってくれる?」
「いいよ。五割再現」
俺はなんとなくボールペンを作ってみた。なんとなく知ってるものなら作れる気がしたからだ。結果は……
インクが少なくて書けるが薄いボールペンが出来てしまった。
微妙……
使い方を教えて親父に渡す。レオン兄さんは剣を作ると思っていたのか驚いていた。
「何とこれは!インクをつけなくても書けるではないか!薄いが凄いものだぞ!!」
あっそう?気に入ってもらえたのなら良かったよ。
「ますますこれは公言出来んな。みなも黙っているように」
家族と使用人が頷く。まっ、俺も不用意に前世の物を作らないようにしよう。大概ラノベでは無茶苦茶やって成功しているがそれは架空の話だ。
現実的じゃない。このスキルで良からぬ事を企む者もいるだろうしな。
「アルは凄いわねぇ。誇らしいわ」
いえいえそんな。
おい、マルセルなんで睨む。
「姉としても誇らしいですわ。アル後であたくしの部屋に来なさい」
ぶるっと俺とマルセルが身体を震わせる。
嫌だ……とは言えなかった。気持ち悪いのを除けばドストライクなのだ。正直部屋に行ってみたい。
「わ、わかりました姉上」
「エリー」
「え、エリー姉さん」
「あらまあ」
母さんは嬉しそうにその様子を見る。ホントに俺が転生するまでどんな兄弟関係だったんだ。
そうして、俺のユニークスキルの話題で持ちきりになった食卓は過ぎていった。
肉もあったが味が薄すい上に少なくて食べた気がしなかった。
明日は魔法の特訓のついでに狩りでもしてみようかな。
俺はそんな事を考えながら食事を取り終えた。