母上と姉上
はじめましてはじめです。
再びの方はこんばんは。
思ったよりより早くかけたので九時前に投稿。
つるぎも更新してるのでよろしくお願いします。
「おい!アル!そろそろお父様のお迎えに行くぞ!」
なんだよマルセル。人が気持ちよく寝てたのに。
俺は両手を上げ、あくびをする。ベットの端を見るとソフィアがうたた寝していた。
ソフィアもよく寝てるな。メイドの仕事って忙しいんだな。
「案の定か。ほら行くぞ!」
「はいよー」
俺はソフィアを起こして、マルセルに着いていく。
ほんとにすぐかっかするところがなければそこそこ良い兄だと思う。
「お父様とお母様になんて説明しよう」
俺は両手を頭の後ろで組んでそう呟く。
「そのまま話すしかないだろ」
「えっ?いいの。兄上にボコボコにされて記憶を失いましたって。言っていいの?」
「ゔっ……」
マルセルは立ち止まる。自分のした事を数時間で忘れる阿呆な兄をその場において俺は大きな玄関ホールに出る。すでにソフィア以外のメイドがいてソフィアはそちらに並びに行く。
「ま、俺気にしてないから適当に言うよ。マブダチだろ俺たち」
少し遅れてやって来たマルセルにそう話し、近くの花瓶を眺める。元の世界では見ない花が綺麗に飾られていた。
「兄弟だ!友達じゃねーよ!」
「えー。俺とマルセルの仲じゃん」
「どうやったら家族から友達に降格するんだよ!」
「そりゃあ、ボコボコにされたり?」
「ほんとに悪かったよ!」
俺とマルセルのやり取りにその場にいた執事やメイドが微笑ましそうに眺める。一部メイドが吹き出して、マルセルが睨む。
「おいおい。マルセル。八つ当たりはよくないぜ?」
「してねーよ!……ほんと調子狂うなぁ。まあ、俺としては前より話しやすいけどな」
そう言ってそっぽを向くマルセル。
やめて。男のツンデレとか俺には需要ないから。
「何やら騒々しいな。外まで声が聞こえておるぞ」
メイドによって開かれた扉から身なりのいい四人が入ってくる。
うん、今話したのが親父だな。
「「おかえりなさいませ」」
執事及び、メイド。そしてマルセルが頭を下げる。マルセルは直ぐに俺の頭を抑え下げさせる。
「とりあえず俺の真似をしろ」
「えー……」
「えー……じゃない」
小声で俺とマルセルは話し合う。マルセルが頭を上げたので、俺も真似て頭を上げる。
そこヘ姉上らしき人がかけてくる。
「アルー!」
縦巻きロールの金髪美女が俺にかけてくる。
そうか、ここは天国か。
「姉上ー!」
「えっ?」
姉上わかるの?と言った声を出すマルセル。
そりゃ四人しかいないんだ。当然わかるに決まってる。
「もう、ママの顔忘れちゃったの?まあママもまだ若いから仕方ないわね」
どうやら母親だったらしい。ママの背後から物凄く冷たい視線を浴びている気がするが……うん。気のせいだな。
「わしらは先に自室に戻るぞ」
親父がそう言って、帰ってきた三人は玄関ホールの階段を登っていく。
俺は何とか母親の胸の中で姉上をやり過ごせたようだ。
しかし、いい匂いがする。
「おい、アル」
「なに?」
「姉上相当キレてたぞ」
「だよな」
「あら?あらら?」
母が俺とマルセルを交互に見る。
母親にこう言うのも変だが仕草も可愛い。
「あなた達仲良くなったのね。いつも話さえしないのに」
どんな仲だったんだ。俺はマルセルを見るがそっぽ向きやがった。
「やだなぁ、母さん。マルセルとはいつも仲いいじゃん」
「あら?あらら?」
やっべ、喋り方変だった?
母が俺を見つめてくる。やめて、顔近い照れる!
「母さんだなんて……いつもママ、ママって可愛いのに……」
「そっちかい!」
思わず突っ込む。
「アルちゃんが大声出すなんて……」
今にも泣きそうになるママ……母さん。
マルセルは額に手を当てている。半分お前のせいだろ。
「ま……ママ、ママ!?ごめんなさい。今日ちょっと頭をうっちゃって記憶が曖昧なんだ」
「まぁ!それはいけません。早くお医者さまに……」
「だ、大丈夫。ソフィアがじじい……お医者さまを呼んでくれて見てもらったから。何も問題ないって」
またあのじじいを呼ばれたらたまったもんじゃない。
後ろでマルセルが笑っていたが後でしばく。
「ほら、ママも疲れてるでしょ。部屋でゆっくりしてて」
俺は母さんを引き離し、玄関ホールの階段に押していく。
「じゃ、じゃあ部屋に一旦戻るけど、何かあったらすぐに言うのよ」
そう言って母さんは階段を登っていた。さて。
「マルセル。俺の部屋に集合だ」
「なんでだよ」
「今後の作戦会議に決まってるだろ。お前のせいなんだから」
ったく、途中からの異世界転生は面倒だな。
「後、笑ってただろ」
「いや、いや笑ってない」
平気で嘘つきやがる。
「全く。とりあえずあるきながらでいいから、この世界と魔法とか、この家の事とか教えてよ」
なんだかんだ面倒見がいいから、そう言えば教えてくれると踏んで俺はそう言った。
「ま、まぁ良いぞ。この兄上が教えてあげよう」
「知識ないの、何度も言うけどマルセルのせいだからな」
「ぐっ……」
マルセルは苦虫を噛み潰した顔をしたが、すぐに色々教えてくれた。
この世界ウィルダネスについて。
ウィルダネスには人間の他に妖精やエルフ、ドワーフなど多種多様な人種がいて、獣人もいるらしい。それを聞いた俺は目を輝かせていたに違いない。ドワーフに興味はなかったけど。エルフ!獣人。猫耳メイド!
夢が膨らんだ。何をやっても五割な俺でもこの世界でスキルや魔法を使えば……それに貴族だし勝者じゃね?俺はニマニマしていた。
他にもこの家は貴族で親父は辺境伯らしい。この街以外にも土地を治めている領主ということだ。
辺境伯がどれくらい偉いのか知らないけど、かなり偉いに違いない。俺の期待は膨らんだ。
そして重要な魔法。これは才能があれば誰でも使えるらしい。マルセルは俺も使えると言っていたので俺も使えるのだろう。これも夢が膨らむ話だ。
こうなれば明日からは魔法の練習だな。
俺が意気揚々とマルセルの話を聞いていると部屋の扉がノックされた。
開けなくてもわかる。姉上だ。
物凄い冷気が扉の奥から漂ってくる。魔法も使ってないのに何たるオーラ……
「マルセル……」
「嫌だよ。怒った姉上は怖いんだ」
俺だってこえーよ。弟守れよマルセル。
「返事無いけど、居るんでしょ。入るわよ!」
そう言って静かに扉を開けて金髪の長い髪が扉からゆっくり見えてくる。
海外版さ○こだ。
「「ひぃっ!」」
俺とマルセルは悲鳴を上げ後退る。もう壁際だ。退路がない。
顔を伏せたまま近づいてくる姉上。
長い髪が顔を隠し、右手を俺に差し出してくる。
や、殺られる!
「さっきはなんでママとあたしを間違えたのかな?」
俺の肩を掴んで首を傾げる。可愛くない。怖い。
「あたしそんなに老けてるかな?」
「か、顔が隠れててわかりません」
俺は怯えながらも素直にそう言った。母さんが印象的過ぎて正直姉上と兄上は顔も見てなかった。ほとんど母さんの胸で防がれてたし。
「そう、これなら見えるよね」
左手で髪をかき分けて、笑みを見せる姉上。
「結婚してください」
「は?」
「えっ?」
直球ど真ん中ストレート。超絶美女がそこにいた。
俺は思わずそう呟いて、マルセルと姉上は目を丸くする。
「綺麗だ。とても美しい……」
「お、おまっ!?何言って……」
「もうっアルったら!お姉ちゃんをからかわないの!」
バシンッ
いって!なんでビンタした。
姉上は頬を両手で抑えて駆け足で部屋を出て行く。
部屋に取り残される俺とマルセル。
「あんな姉上初めて見た」
「俺はなんでビンタされたんだよ」
俺とマルセルはしばらく呆然と姉上が去っていった扉を見つめていた。