メイドは美女だった
はじめましてはじめです。
再びの方はこんばんは。
この物語以外にも劔の記憶も書いています。良かったらそちらも見てくれると嬉しいです。
階段を駆け上がり、息を切らしながら屋上の扉を開ける。
息をはあはあ切らしながら辺りを見渡すと腰ほどの高さしかないフェンスの先に一人の女子が未だにそこに立っていた。
俺は刺激しないように女子に近づく。
パキッ!
なぜここに木の枝が!!
木の枝の折れる音に気づいた女子が振り向く。視線が合い見つめ合う俺と飛び降りそうな女子。
「今日はいい天気だもんな。そこからの眺めは良さそうだな」
「黒藤くん?」
どうでも良いことしか出てこなかった。それに珍しく苗字を呼ばれ動揺する。
「あはは、よく名前知ってたね」
「クラスメイトだもん。けど、あなたはあたしの名前なんて知らないよね」
そう言われればその顔には見覚えがある。確か……
「じゃあね」
まるでこれからうちに帰る様に言って女子は飛び降りる。
「待てって!」
俺は駆け出した。息切れなんて無視だ。フェンスを乗り越え掴みながら手を差し出すが届かない。
ガシャ
えっ?
フェンスが歪み、俺も落ちる。落ちる前に何とか安西歩に追いつき抱きしめる。
後にも先にも女子を抱きしめるのはこれが最後だな。
悠長にそんなことを考えながら俺の意識はそこでなくなった……
俺死んだのか……安西を守れたのかな。
安西を守るように抱きしめて落ちたのだからせめて安西は助かってほしい。
朦朧とする意識の中俺はそんなことを考えていた。
ごめん。とーちゃん、かーちゃん。普通の俺は人を助けることなんてできなくて普通に死んじゃったよ。
心の中でそう謝る。心の中?
死んだ割に案外普通に思考できるんだなと感心しながら俺は普通に落ち着いていた。
『普通死んだらもっとパニックになるわよ』
おお、あなたが女神様ですか。
俺はきれいな声に心の中でそう答えた。
『馬鹿じゃないの』
失礼な。褒め言葉を理解できないとは相当屈折した人生を送ってるに違いない。
『失礼なのはあなたよ!せっかく生き返らせてあげようと思ったのに』
えっまじで!俺はそんなラッキーなことがあるのかと喜んだ。
『もちろん同じ世界は無理よ』
なんだよ、期待させておいてこのアバズレが。
『誰がアバズレよ!あなたなんてさっさと転生しちゃいなさい!』
人の心を読んでおいてよく言う。俺はそんなことを思いながら、意識が覚醒していく感覚に襲われる。
あっ、ちょっと待って。
『忙しないわね。何?』
彼氏とかいる?声がすごく綺麗だからってあぁー!
俺は無理やり意識を覚醒させられた。それにしてもハイテンションだったな俺。
「って、ここどこ?」
知らないてんじょ……ごほんっ!
そこは知らない場所だった。辺りを見渡すと、日本とは明らかに文明レベルが違う。照明なんてないけど天井にはシャンデリア、今寝ているベットも物凄くでかい。
壁にはでかい絵が飾られていてなんというか……スケールのでかい家だな!
そんな感想を持った。
「おぼっちゃま!」
メイド服を着た美女が目を覚ました俺に駆け寄ってくる。かなり可愛い。胸も大きいし、そのポニーテールもすごく似合ってる。
「苦しいところなどはないですか?……おぼっちゃま?」
おっと、余りに可愛いメイドの登場に我を忘れていた。
「ごめん。頭を強く打ったみたいで記憶が……名前なんて言ったっけ?」
「それはいけません!アルフォンソおぼっちゃまはシュルツ家の御曹司。何かあってからでは今すぐお医者様をお呼びしますね!」
メイドの名前を聞いたつもりが記憶喪失になってしまった。まあ、自分の名前もしれたし良いか。間違ってるわけでもないし。
どうやら俺はアルフォンソ・シュルツと言うらしい。それに御曹司だ。しかしあの駄女神、転生と言っておいて、これは転生なのか?
明らかに生きていた人に俺の意識が入り込んでいるように見えるんだけど。
俺は自分の姿を確認すべく身体を見る手は明らかに、以前より小さいし、あそこも……そこそこ大きいな。うん。
顔はどうなのだろう。見渡す限り鏡はなかったのでベットから起きて窓ガラスに薄っすら写る自分を確認する。見た感じ十歳前後か。それにはっきりと見えないがかなりの男前だ。
窓ガラスをニヤニヤしながら見ていると、メイドが戻ってきた。
「おぼっちゃま!立ってはいけません。いま先生が来ますから」
俺に慌てて近づきメイドは俺を寝かしつける。メイドからはいい匂いがした。
「何をニヤニヤしてらっしゃるんですか?」
おっと失礼。俺は変態的な顔をやめ、真顔になる。どうも転生してから無駄にハイテンションになってるな。
「メイドさん。名前は?」
俺は何としてもメイドの名前が知リたくて、名前を尋ねた。正直医者など、どうでも良い。
「ソフィアですが……」
「いい名前だね」
「おぼっちゃま……お願いですから大人しくしてくださいまし、私が怒られてしまいます」
それは大変だ。
「じゃあ手を握っててよ」
まあ、握るわけないよねー。えっ?
ソフィアは普通に俺の手を握った。おおい、美女から手を握られるなんて俺はなんて幸せ者なんだ。
「これでいいですか?」
「はい……」
自分で言っておいて照れる。言うのは自由だが実際にされると照れるな……
自分から言った手前離してくれと言えず、医者が来るまで俺はソフィアと手を繋いで待つことになる。
まっ、美人と手を繋ぐ機会なんて早々ないしいいか。
俺は楽観してベットに横になり医者を待つことにした。