標的01 呪いの爆炎
STORY 2 PARRT 3
帰りのホームルームが終了すると、生徒達はそれぞれの行動を始めた。圭も例外なく、さっさと家に帰られる様に帰りの支度をしていた。
「今日はセブンス・スーパーの安売り日だったっけ……?」
そんな事を呟きながら圭は教科書を鞄に入れていった。
「おい。」
後ろから呼ぶ声がした。振り向くと、銀髪の少年が立っていた。
「来い。」
無愛想にそう言い、白夜は教室を出て行った。圭は首を傾げて仕方無く後を追った。
白夜の後を付いて行くと、人気の無い裏庭に着いた。圭はずれた眼鏡元の位置に戻して、白夜に聞いてみた。
「な…何の用…ですか?」
すると白夜は振り返り、圭を無愛想に睨んだ。怖い顔とはまさにこの事だろう。
「テメェ…グウィードファミリーの次期ボス候補なんだってな。」
圭は首を少し傾けて元に戻した。
「それは……って、なんで君が知ってるの…!?」
眼鏡の奥の瞳を大きく見開き、口を丸形に開けた。
「オレが教えたんだぞ。」
圭と白夜の側に立っている木から声がした。その声の正体はネロだった。木からするすると降りて来て、得意げに微笑んだ。
「ちゃお。」
白夜はネロをじーっと無愛想に眺めながら黙っている。圭は溜息を零した。
「…来ないでって言ったのに。」
「お前の次期ボスとしての自覚が無いから、オレは白夜をわざわざイタリアから呼んだんだぞ。」
圭は呆れ返りの複雑な表情を浮かばせた。それでこの少年は来たのか。すると、無愛想ながらも白夜は少し圭とは違う態度でネロに聞いた。
「お前があの噂のヒットマン、ネロか。……コイツを倒したら、本当に俺が次期ボスになれるんだな?」
圭は軽く首を傾げた。これは一体どういう意味なのだろう。
「あぁ、本当だぞ。」
ネロは表情、声にも一切の迷いも無しにきっぱり肯定した。
「え? ……でも自分をボスにするんじゃなかったの?」
ネロは圭の方を向くと、鼻で笑った。
「あぁ。当たり前だろ? その為にオレは日本に来たんだからな。」
「いや、別に来なくたって良かったんだけど……。」
どうやら圭の言葉はネロの耳まで届かなかったようだ。
するといきなり白夜が殴り掛かって来た。ギリギリ避けられたが、とても速い。
「こんな弱い、どこの馬の骨かも分からねぇ奴にマフィアのボスが継げるかよ。目障りだ……消えろ。」
この人、眼が本気だ…と感じた圭は、ネロを見た。
「知らねぇぞ? この白夜紺はイタリアでも優秀なヒットマンだからな。下手すりゃ死ぬぞ?」
「死ぬって……。」
確かに少し危ないかもしれないと思った圭は、慎重に2歩後退りした。
すると、白夜はポケットから古めかしい、洒落たライターを取り出した。髑髏が刻まれている。
白夜はそのライターの蓋を開けると、火を出した。しかもただの火では無さそうだった。
「アイツはただの火じゃねぇぞ……呪いの爆炎だ。」
ネロはただならぬ表情で白夜のライターの先にふわっと揺らいでいる火を見つめた。
「呪い? ……あれが?」
「あぁ。あの炎にチビっとでも触れたら最後、一瞬で爆炎が全身を浸食し、灰になるぞ。」
「……。」
「オレも今日、初めて見たんだ。」
圭は少し身じろぎした。なんだってこの様な危険人物が自分の前に居るのだろうか。
白夜はライターの火を、なんと自分の掌に乗せた。メラメラと段々火が大きくなっていっている。
「焦げろッ! The flame of the curse!(呪いの爆炎)」
炎を両掌に乗せると、圭に向かって勢い良く炎を投げた。
その炎は勢い良くメラメラと燃えながら、圭に飛びかかった。
「ーッ!?」
圭はなんとか避け、ネロが居る方へ走って行った。このままじゃ本当にー
「ネロ……何とかしてよ!」
「オレはこの戦いに手を出す事は禁じられてるんでな。手助けできねぇんだ。」
ネロは幼く言ったが、圭は走って追って来る白夜を見て冷や汗をかいた。少なくともあっちは本気だ。
「お願いだよ、ネロっ。」
頼み綱が断ち切れようとした時、ネロは頭に乗っている黒い子猫を黒いグローブに変えた。
「んじゃ、お前が自分の為に戦えっ。」
ニヤッとネロは笑うと、勢いを付けて圭の額にグローブをはめている左手を強押した。
圭はその反動で倒れてしまった。