標的00 正反対の自分
STORY 1 PARRT 4
「圭……お前の力を見せてみろっ!」
ネロはありったけの力で、黒子猫の黒いグローブをはめた左手を圭の額に押し当てた。
「ーッ?!」
準備も何もしなかった圭はその侭、ネロの左手を避ける事が出来ずにその衝撃により倒れてしまった。
ネロは真顔で倒れた圭を見下ろし、黒い子猫を撫でた。
「お前が本当にボスに必要な力があるのか……見せてもらうぞ。」
すると、何事も無かったかの様にムクッと圭が起き上がり、その侭無言で顔を俯かせたまま圭は応接室を出て行った。
3階の廊下にはやはり警官が至る所に配属されていて、逃げ出す所も無かった。二人の警官が圭が出てきた事に気付き、圭に寄って来た。
「すいません、少しお時間を頂いても―「どけ。」」
圭はかなり冷徹な声で警官を退かした。しかし、その様子を見ていた警官二人が更に圭の肩を掴んだ。
「君、ちょっと話があるんだが―「どけ。」」
圭は警官の手を振り解き、階段の方へ歩き出した。さっきとはまるで別人である。警官は圭を追い、直ぐに5人位で圭を取り囲んでしまった。
「君! 大人しくしないかっ。少し一緒に来てもらうぞ。」
一番勇気がありそうな警官が言った。すると、圭は顔を俯かせたまま言った。
「警官…」
声は正しく圭のものだったが、雰囲気はまるで正反対の様だ。
さっきの勇気のある警官は動揺せずにきっぱりとした態度で言った。
「なんだ? 一緒に来てもらうぞ。」
圭の後ろにいた警官が圭の腕を掴もうとした、その時。
「邪魔……。」
そう言うと圭は、その警官を逆に掴もうとした手で思いっきり瞬発的に殴った。
「何をするんだっ! やめないか!」
もう一人、あと一人と圭を取り押さえようとする警官達を軽々と倒して行く。残った警官らが応援を頼むと、その3階の廊下に警官が沢山集まってしまった。
圭は疲れを見せてなく、逆に力がだんだんと増しているようだっった。
「この少年を取り押さえよっ!」
警官達の中心核がそう言うと、一斉に圭の方へ走って来た。しかし圭は逃げずにその場でまだ顔を俯かせていた。
* * * * *
最後の一人を軽々と倒すと、圭はフワッと倒れてしまった。その寝顔には、さっきまでの冷徹さが跡形も無く消えていた。
「フン……やるじゃねぇか。」
ネロは圭の隣に立つと、満足そうに鼻で笑った。
「いやぁ、まさかネロさんが我らを倒したなんて……。言ってくれれば良かったのに。」
警備員の一番偉そうな男がネロに深々と会釈した。ネロはその男の方を向いた。
「こっちこそ、無断でやって申し訳ないな。」
「いえいえ、ネロさんだったら大歓迎ですよ。処理は私共にお任せ下さい。」
「…そうか。」
男が去ると、ネロは圭を応接室のソファに運んだ。
「……少し無理があった様だな。無茶し過ぎたか。」
圭の割れている眼鏡を取ると、ネロは圭を見て目を見開いた。スヤスヤ気持ち良さそうに寝ている圭の向かい側に立ち、ニヤッと笑った。
「成程な。…コイツは使えそうだ。」
圭はそんなネロの考えを知らないまま、健やかに寝ていた。
STORY 1 ~END~