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標的00 謎の赤ん坊

STORY 1 PARRT 2

「オレはネロ。イタリアから来たヒットマンだ。」

黒猫が口を聞いた。考え理解出来るはずが無い。

「ね、猫が……?」

「ん? どーかしたか?」

ネロは幼稚な声で大人びた言葉を発している。矛盾し過ぎだ。

圭が驚いて腰を抜かしているのを見て、ネロは気がついた。

「あぁ、安心しろ。この姿はあくまでも“仮”の姿だからな。本当はちゃんとした人間だ。」

そう言うと、ネロは目を瞑った。圭は腰を下ろしながらその様子を見ていた。

すると、途端にネロの周りに霧の様なものが漂い、姿が見えなくなった。

「な、何だ……これ……?」

圭の前には保育園児並みの幼児が腰を下ろしていた。

「これも仮の姿だがな。」

圭は眼鏡のレンズを擦り、ネロがよく見える様にした。確かに声はそのまんまだ。

「さて、本題に入るぞ。お前マフィアって聞いた事あるか。」

ネロの出現に圭は少し動揺しながら答えた。

「あの……秘密組織とか、暗殺部隊とか?」

「まぁ、そんなとこだな。」

ネロはふっと鼻で笑い、後ろを向きそのまま歩き始めた。

「……自分に何の用なの?」

呆れながら圭は聞いてみた。なぜ子供がこの学院にいるんだろう。

「フン。」

ネロはその場で立ち止まるとニヤッと笑って振り返った。

「オレはあるイタリアの超一流で最強と唱われるマフィアのヒットマンでな。お前を教育しに来た。」

圭は微妙な呆れ笑いでネロを見た。ネロは真面目な顔をしている。

「……自分の?」

「あぁ。家庭教師ってヤツだ。」

圭は呆気にとられていた。こんな正体すら分からない幼児が自分の家庭教師?今の時代は赤ん坊でさえ勉強を教えられる様になったのか。

「……嘘?」

ネロは圭の様子を見て鼻で笑うと、圭の頭を何かで叩いた。

「痛っ! ……何するんだよっ。」

圭は意味が分からず、ネロに殴られた部分を手で摩った。そのネロの手には異様に大きく見える受話器が乗っていた。これで叩かれたのだろうか。

「電話してみろ。お前のママンに。」

圭は渋々受話器を受け取って、案外素直に母親に電話をかけた。

母さんが見ず知らずの幼児に家庭教師なんか任せる訳が無い。ましてや雇う程のお金が家にあるとは思えない、と想像しながら圭はネロが居る方向の逆を向いて受話器を右耳に近づけた。

「もしもしー『あっ! 圭ちゃん?』」

無駄に元気な女の声がした。母親だ。

「母さん……。矢鱈に今日は機嫌良いね。良い事でもあったの?」

圭は少し呆れながら聞いていた。どうせスーパーで大安売りかなんかでもあったんだろう。

『あのね、聞いて! 圭ちゃんに家庭教師さんが付く事になったのよぉ〜!』

「は?」

圭は首だけ動かしネロを見た。ネロはこっちを見ながら余裕と自信の笑みを見せている。

「で、でも母さん、家庭教師雇う程のお金って……?」

『それがね、家で暮らせて貰えるんなら無料で教えてくれるそうなの。良かったわね〜圭ちゃん! これで心置きなく圭ちゃんの勉強の事を考えなくて済むわぁ〜』

「 ……。」

あれほどお金に関する事柄には五月蝿い母親を手懐けるなんて。しかし、まだその家庭教師がネロと決まった訳ではない。再度挑戦するチャンスはある。

「……で、どんな人だったの? その人。」

圭は背後でコーヒーを飲みながらソファで寛いでいるネロじゃない事を祈りつつ、受話器越しの母親の声に耳を澄ました。

『そうねぇ〜……とっても可愛らしい人だったわ。』

母親は上機嫌に言う。ある意味凄い性質の持ち主だと圭は妙に呆れた。

「……身長はどれ位だった?」

まずはそこから挑戦してみた。圭は一応ネロの身長を確認した。ネロは圭の膝下位の身長だ。

『う〜ん……母さんの膝位だったかしらね。ずいぶんと可愛らしいサイズだったわ〜。』

母親で膝位なら、自分では膝下位……と考えた圭は、再びネロを見てみた。サイズは一応合ってる訳になる。

「なんか用か?」

ネロはエスプレッソを喉に流すと、圭を優雅に見上げた。

「何にも…。」

圭は眼鏡をくいっとすると、再び母親への質問攻めに戻った。

「……なんか特徴ってあった?」

サイズが合っていたとしても、違う確率もまだあるはず。

『特徴? ……どうだったかしらねぇ? まだ一回しか会った事無いからあまり覚えてないのよね〜。』

「だよね……。」

ひとまず安心した様子を浮かばせた。

『あっ、でも……』

「え、何?」

母親の声を聞きながら圭は、首だけ動かしネロを再び見てみた。

『……可愛いらしい黒い猫耳が付いている帽子をかぶってて、黒い付け尻尾まで付けてたのは覚えてるわぁ〜。』

「……。」

『それじゃ圭ちゃん。母さん仕事残ってるから電話切るわね〜、バァイバイ。 』

ガチャッ! ツーツーツー……

母親が元気に電話を切った。普通ためらう所を。

それにしても黒い猫耳に黒い尻尾というのは―

「それって、」

受話器を耳から離れさせると共に圭は不真面目に顔を俯かせながら呟いた。

ネロは得意げに鼻で笑った。確かに今も黒い猫耳付き帽子をかぶっているし、尻尾だって付いている。

「どーだ。お前の家庭教師がオレだと信じたか。」

「……。」

圭はその事には触れない様にして一番安全な方法を優先した。

「何の為に自分の家庭教師に?」

ネロは圭の質問を聞くと、何故だか今まで以上にニヤッと笑い、露骨に言った。

「お前をマフィアのボスに教育し直す為だ。決まってんだろ?」

圭はしばらく何が起こったのかさっぱり理解出来なかった。


何? マフィアだって?


「 えぇー!?」


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