標的00 黒猫の鳴き声
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イタリア―シチリア島
その美しい島の裏に、大きな城が建っていた。ただの城じゃ無さそうだ。
城の周りには気配を消して何かを守護している人達が何かを待っているようだった。
ある、城の一室で誰かが何か話していた。
「……じゃあ、俺は日本へ行けば良いんだな?」
「あぁ、そうしてくれ。……くれぐれもあの件は内密に頼む。」
「任せておけ。これでも口は堅い方なんでな。」
「頼むぞ……ネロ……!」
* * * * *
図書館の扉を少し開けてみた。
「 ……。」
その瞬間に誰にも気付かれない様に扉を閉めて、蝶の羽ばたきの様な溜息を零した。
5つもの図書館があるのに、なぜ全て騒がしいんだろう。
眼鏡の奥で落胆の表情を浮かべると、1階に降りる階段の方を向いた。
「静かな場所ってないのかなぁ……。」
諦めながら長い廊下をとぼとぼと歩いていると、何かの鳴き声が微かに聞こえた。
「ニャゥ……」
あまりにも場違いな声に少し驚き、その場に立ち止まった。
「ニャゥウ……」
再び同じ鳴き声が聞こえた。3階へ行く階段の方から聞こえる。なぜだか勝手に身体が階段の方に向かった。段々と鳴き声が近くなって来ている。階段を上ると、人気の無い3階校舎に辿り着いた。異様な静けさが辺りを漂っている。
「ミャゥ……」
角を曲がった所にある教室の中からさっきの鳴き声が聞こえた。
「使ってない応接室……?」
応接室のドアノブを握り、思い切って静かに開けた。
すると、綺麗な広い空間の中央に黒猫の後ろ姿が見えた。あれだろうか?
「ね、猫?」
ゆっくり一歩一歩猫に近づくと黒猫が振り返り、上目目線でこっちを見上げた。
すると、猫の口が開いた。
「お前か、黒椿学院唯一の特待生、朽木圭って言うのは。」
「は……はぃ?」
正直言って、幻覚に陥っているのかと思った。黒猫が口を聞いたのだ。
「オレはネロ。イタリアから来たヒットマンだ。」
「は……はぁぁ?!」
ーこの時、既に運命の歯車が動いてしまっていたかもしれない