天空のコーキ
201☓年
増え続ける国家債務を削減するため、国家にとって不必要な人間である
童貞と処女を宇宙に棄てる法律が成立した
自ら出頭しなかった18歳以上の童貞、処女は
特殊部隊によって捕獲され護送された
駆け込み脱童貞、脱処女を防ぐために風俗店前には特別警戒網が敷かれた
問題は童貞、処女のくせに偽申告して逃れようとする連中である
「このゲートを通れ!!」
精一杯非童貞、非処女のフリをしてみても、最新センサーはごまかせない
まれに誤作動によって反応しなくても、
センサーを出たところに控えている探知犬が吠えついて
童貞、処女がバレてしまうのだ
童貞臭、処女臭は隠し切れない
「さっさと入らんか!!」
童貞達は童貞服、処女達は処女服を着せられると
それぞれ童貞収容所、処女収容所へ押し込められていった
コーキは童貞収容所にいた
収容所の司令官が野太い声で命令する
「はよせんか!ちゃっちゃと着替えろ童貞ども!!
ママに手伝ってもらわないと無理かぁ!?」
コーキは毒づいた
「ちっ、あんなブスでも非処女ってのかよ!?」
シンジも同意した
「あいつ若いころのアダ名はぜってえ『ガマ』だぜ」
やめろよ!聞こえるぞ!
むせ返る童貞臭の中で童貞のひとりが注意した
役に立たない人間を作ってしまった親たちも軟禁状態に置かれているという
逃げ出すと親たちにも危害が加えられると思うと、
童貞達はただ俯くしかなかった
ガマ司令官の怒鳴り声がコーキをとらえた
「おい、お前!何歳だ!?えっと、シガラキコーキ、46歳!?
立派なおっさんじゃないか!!」周囲の視線が注がれる
コーキが開き直る「なんだよ、童貞の何がいけねえんだよ!?」
「ふん、そんなこともわからないから童貞なんだよ!
お前、どうせ処女が好きなんだろう!」
「いけないかっ!」
「成熟した女性と付き合う自信がないんだろう!!」
コーキは言い返した
「非処女どもはそうやって、童貞のところにやってきては
『自信がないだろう』という、お前ら・・童貞に好かれたいのか?
非処女なのに童貞に好かれたいのか?」
「なにを!口答えするか!」ガマ司令官のムチが飛ぶ
コーキは更に言う「へっ、処女とか童貞を蔑む奴って、
そいつが頑張って処女や童貞を棄てたところで
そんときはそんときで、なんか別の理由つけて蔑むだけなのさ!
だいたいよお、処女がキモチワルイというなら、
処女を好きな男がいないってんなら、
処女は誰相手に初体験して非処女になりゃあいいんだよ?」
警備兵達が駆けつけてきて、コーキを殴りつけた
コーキは血反吐を吐きながら更に続ける
「ロングヘアーの女の子が好きってやつもいれば、
ショートカットが好きってやつもいる
いつも元気なチャキチャキ娘が好きってやつもいれば、
おとなしくて優しい、お嬢様タイプが好きってやつもいる!
委員長タイプが好きってやつもいれば、
図書委員タイプのメガネっ子が好きってやつもいる、
処女が好きってのはそういう趣味の一つにすぎない!
処女の女の子が好きだ!
そういう清純タイプの古風で身持ちの堅い女の子が好きだって、
それだけのことだ!!
結婚前提で真面目に付き合って、相手を思いやって・・!!
そういう昭和ロマンを・・」
警備兵が電撃警棒を何度も叩きつけ、コーキは遂に倒れた
コーキの薄れゆく意識にガマ司令官の声が響く
「危険分子だ、独房で隔離しろっ!!」
童貞達はある日、テラスへ集められた、
ガマ司令官が今生の思い出に処女達を見せてやろうと言うのだ
強化ガラス張りのテラスから見下ろすグラウンド、
そこには処女達が処女服を着せられ集められていた
期せずして童貞たちから声があがった
「あっ、まゆるがいる!!」
そこには超人気アイドルグループAKCの象徴と言われる
渡部まゆるの姿があった「ぱるっちもいるぞ!!」
次世代エース候補筆頭・島谷遥香の姿もあった
結構みんないるぞ!!童貞たちから歓喜の声があがる
「ああーっ!!みろよ、みるりーもいる!!」
童貞の1人が指差した先には、
かつて読者モデルとの密会を週刊誌に報じられた
みるりーこと渡辺みるきもいた
「そうだったのか、俺、2ちゃんでめちゃくちゃ叩いちまったよ」
「単なる友達で、一緒にゲームしただけというのは本当に本当だったのか・・」
「スプリングセンテンツめーっ!!」
どよめきから歓声に、そしてこれが狂喜へと変わる瞬間が訪れた
「さっしーだーっ!!さっしーもいるぞーーぅ!!」
かつて総選挙4位に躍進し、次期センターを目前にしながら、
スプリングセンテンツにスキャンダルを暴かれ、
AKCから地方グループHKBに左遷された指原リーナの姿もあった
シンジは万感の思いを込めてつぶやいた
「コーキ・・よかったなぁ、お前が大好きな、神推ししているさっしー、
お前の言うとおり、本当は処女だったんだ
濡れ衣を着せられ、あんなに叩かれても、グループを盛り上げるために、
プロとして黙ってヒールを演じてたんだな」
AKCメンバーは声が聞こえなくても空気で気づいたのか、
童貞達が収容されているテラスに気づいた
そして全力で手を振り、指差しレスで応えた
「天空席のみんなー、見えてるよー!!」
「私達が頑張れたのは、みなさんのおかげだよー!」
「生まれ変わっても、ずっーと家族だよーっ!!」
シンジは泣いた
「コーキ・・、この素敵な景色、見せてやりたかったよ」
コーキは独房からの脱走を試み、重起動兵との格闘の末に捕獲され、
指を切断されて童貞の命であるオナニーができない身体にされ、
更には逃げられないように足を切断され、五体不満足になって、
今は司令官室でガマのサンドバックになっているという
いよいよ童貞と処女を宇宙へ投棄する日がやってきた
「てごりんはやっぱりいなかったな・・」
「ああ、それだけが心残りだ」
童貞、処女達は重機動兵に追い立てられるままに
投棄ロケットに収容されていった
ロケットの周囲には非童貞、非処女達が詰めかけ、
シュプレヒコールを浴びせていた
「出て行けエエ!!気持ち悪い役立たずどもは地球から出て行けエエ!!」
「悔しいか!悔しいかー!!この負け組ども~っ!!」
ロケットが轟音とともに舞い上がり、宇宙へと飛び立った
ロケットの窓から宇宙空間を眺めると、青い地球が見えた
母なる星、青い地球よ・・
うわあああっ、なんだぁっ!!
不意に宇宙全体が揺れると地球が炎に包まれた!!
そしてみるみるうちに黒く、死の星へと化していく
こ・・これは・・
その時、ロケット内に噴射された霧が立ち込め、
童貞達は長い眠りについた
呼ぶ声が聞こえる
シンジ・・、シンジ・・・
シンジは目を覚ました
ああっ、コーキ!!これは一体・・
「それは司令官から説明してもらったほうがいい」
コーキの傍らにガマ司令官がいた
「お久しぶりね」
「ガ・・・、司令官殿っ!!」
シンジが収容所時代のように直立不動の姿勢をとった
ガマ司令官は微笑むと
「いいのよ、もう、ここは自由の星、あなた達は選ばれたの、
本当の自由と平等、共生社会を実現するために選ばれた存在」
コーキが言う「重起動兵を蹴散らして、
俺を助けてくれたのは司令官だったってわけ、
俺は司令官に全てを聞いた、この極秘プロジェクトのことを」
シンジは驚きを隠せない
「で・・では、司令官・・、いやマーサさん、あなたは・・・」
ガマ司令官、いやマーサ・ジャクラディ女史は言った
「ふふふ・・私が非処女に見える?」
そして太陽のように笑った
「シンジ!処女ロケットの救出に行くぞ!!
さっしーとの握手会、鍵開けはオレの担当だ!」
「お・・おう!」
二人は駈け出した
「早くこの星を立派にして、総選挙を再開しようぜ!」
「お・・おう!」
「ところでコーキ、この星の名前、何にする?」
「決まってる!フォーチュンクッキーさ!!」
「おおう!」
「よっしゃ行くぞーっ!タイガー、ファイヤー」
「サイバー、ファイバー」
「ダイバー、バイバー」
「ジャージャーっ!!」
二人の目はキラキラと新しい太陽を反射していた
私(メイプル対応)もさっしーが大好きです