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どん色の女騎士と、輝色の女魔術師  作者: いのれん
第五部「神葬編」
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第六十六話 咲き誇れ、白きユリの花

「あなた達、本当に仲がいいのね」

 火竜の国へと向かう船の客室内、あたしは体を横にしており、頭の下はエミリアの程よく柔らかい太ももがある。


「これくらいは普通ですよ? ふふ」

 あたしが船酔いでげっそりとしていた時、エミリアが膝枕になってくれたのだけども、ラプラタ様もいるしエミリアも乗り物は得意じゃなさそうだから最初は遠慮していたが、ついに自身の吐き気に耐えれず甘い誘いを受ける事にした。

 ちょっと恥ずかしかった、でも慣れてしまえばいつも通りなんだよね。

 ああ、エミリアって何だかいい匂いがするし、癒される気がするよ。

 適宜、あたしの頭を優しく撫でてくれる手も暖かくて心地よい。


「少しは楽になったかな?」

「うんー、ありがとね」

 そんなエミリアの介抱の甲斐あってか、あたしの胸の中にあった不快なものはおさまり、何とか起き上がれるようになったけれども。


「でも離れないもん! もうちょっとこうしておくー♪」

「いやん、シュウは甘えたさんだね」

 出来ればずっとこうしていたい。このまま優しい温もりを感じていたい。

 あたしはエミリアの暖かさを独り占めしようと、腰に抱きつき顔をうずめる。

 我ながらヘンタイだと思うのだけども、ちょっと前にエミリアが言ってた、本来の姿へ戻れば戻るほどムラムラが抑えられないというか、本能に忠実というかなんというか。

 そういう感情が以前よりも強くなった気がする。


「見ているだけなんて我慢出来ない! お姉さんも混ぜなさい!」

「えっ、ちょ、ちょっと! うわあああっ」

 あたしとエミリアのイチャイチャっぷりに感化されたらしく、今まで笑顔でこちらを静観していたラプラタ様も、割り込むようにエミリアの胸へと飛び込んでくる。



「はぁっ、はぁっ。ラプラタ様は、激しすぎます……」

「こ、こんなの初めて……。ぎゅう」

 飛び込んだ後、客室が個室だったのをいい事にラプラタ様は己が欲望の限りを尽くした。

 今までに無かった、あたしとエミリアだけの時にもした事無かったような、あんな事(・・・・)こんな事(・・・・)をされてしまい、お互いに呼吸が荒く、任務遂行前だと言うのに疲労困憊になってしまった。


「ふふ、二人ともウブなんだから」

 一方加害者であるラプラタ様は、自身の欲望を全て吐き出して、妙な落ち着きと満足感、達成感に満ちた笑顔のまま、こちらを見ている。

 は、激しすぎる……。壊れそうだったよ!

 これが大人の階段を上るって事なのかもしれないと思いつつも混濁する意識の中、気だるくも心地よい余韻に浸っていた。



「相変わらずあっついなあ」

 疲労回復に努め、歩けるようになると同時に帰港した船から出る。

 以前来た時と同様、ここは蒸し暑い。ふー。

 相変わらず現地民の人らは薄着だし、やっぱり体つきがいい気がするよ。


「今日は宿に泊まって、明日鉱山へと向かいましょう。入るための許可はもう貰ってあるからね」

「はい」

「はーい」

 あたし達は、港町にある適当な宿を見つけてそこで一泊してから鉱山へと向かう事になった。

 あんな事があった後だし、疲れているからね。ウン。



 宿に到着し、各々が荷物をまとめ明日の支度を終えてのんびりしている時、今まで窓から遠くの景色を眺めていたエミリアは、急に真剣な表情をしながらラプラタ様に話しかける。


「ラプラタ様、一つ聞きたい事があります」

「怖い顔をして、何かしら?」

「柱と環は、強力なエレメンタル保持者以外にも意味があるはずです。それを教えていただけませんか?」

 この任務を受ける前に、あたしへと投げかけた疑問を今ここで聞いてみるようだ。

 でも本当に別の意味なんてあるのかな?


「何を言っているの? それ以外の意味はないわ」

「嘘をつかないで下さい」

 表情を変えず、エミリアの言葉に答えたラプラタ様に対し、エミリアはすぐに反論をする。いつもよりも真剣な面持ちかつ、声のトーンが普段より低いのははぐらかされない様にする為なのかも。


「本当に勘がいいわね」

 そんな表情を見たラプラタ様は、軽くため息つき僅かな時間目を閉じた後、今まで美麗な顔に宿した笑みを消して語り始める。


「途方も無い程の時間を費やし、私達悪魔は大いなる厄災に対抗する為にはどうすればいいかを考え、そして多くの実験の末、ついにそれを見つける事が出来たの」

 ラプラタ様が話し始めると同時に、部屋の中が妙な緊張感に包まれていく。

 エミリアも真剣な面持ちで会話を聞いている。


「エミリア、あなたなら”メギドの滅光ハイブレイク”と言えば、ピンと来るのでは無いのかしら?」

 その言葉を聞いたエミリアは、胸に手を当てて一つ頷く。

 エミリアに心当たりがあるって事は、天使なら知ってる事なのかもしれない。


「天使最強だったミカエルのみが扱える、光の力と闇の力を同時に繰り出し、反作用により万物を滅ぼす禁断の天空術ですね」

 何だか凄い術という事はあたしにもなんとなく理解は出来た。

 でも光の力を操る天使が闇の力も使えるとか、しかもそれを同時に放つとか、ミカエルって天使は凄いんだね!


「そう、大いなる厄災の力を抑えるには強い光と強い闇の力、その両方を同時にぶつける以外手段は無いの。ミカエルのその力、二人なら擬似的に実現出来ると思ってね」

 なるほど、だから光のエレメントと闇のエレメントを持った人が必要だったわけなんだね。

 二人で力をあわせてその禁断の天空術を大いなる厄災にぶつければ勝てるって事だったのかあ。なるほどねえ。


「勿論、ただの二人では駄目ね。本来は一人でしていた事を全く異なる他人でやるって事は、お互いは一心同体と言っても過言では無い程の強い絆と信じる思いが必要なの。あなた達は力もそうだけど、その心も兼ねる事が出来た」

 ラプラタ様はその言葉と同時にあたしとエミリアを見ながら笑顔になる。

 確かに悪魔になってすんごい力を手に入れたーとか、エミリアが実は天使でしたとか、まだまだ整理しきれないし納得できないとこもあるけれど、エミリアと仲良しなのは間違いないね!

 あたしの事、ずっと見ていてくれる。そばにいてくれるって約束してくれたもの。

 そんな気持ちが凄い嬉しくって、何だかエミリアがとっても愛おしくて……。

 あれ、じゃあこのドキドキする気持ちって、悪魔化が原因じゃないのかな?


「大いなる厄災に対抗する為に立ち上げられた計画、プロジェクトリングピラー、つまり環と柱ね。名前の由来に深い理由は無いわ。お父様が半ば気分で決めたモノなの」

 エミリアが今まで気になっていた言葉の意味を知り、今まで強張っていた表情が緩みいつもの笑顔に戻る。


「エミリアとシュウちゃんの絆が本物になる前に言っちゃうと、お互い意識しちゃうかもって思い黙っていたの。許してね」

「話してくれて、ありがとうございます」

 ラプラタ様の話が一通り終わると、エミリアは一つ頭を下げた。

 険悪な雰囲気だったけども、仲直り出来て良かったー。

 謎だった事も解消できたからね。


「さてと、明日の予定なんだけども……」

 ラプラタ様の話題が変わるのを見て、あたしは気持ちを切り替えて明日の任務についての話を聞く。

 任務の話や打ち合わせは僅かな時間で終わり、エミリアもあたしも何故か疲れていた為、少し早かったけれども夕食をとり、水浴びをしてすぐベッドの上へ体を横にする。


 船上での出来事(・・・)のせいもあってか、あっという間に睡魔に負けて深い眠りへと沈んでいった。

 その時も、ラプラタ様はなにやら難しい本を読み耽っていた。



「……様、環と柱を……ちらへ……つもりです」

 はっきりしない遠い意識の中、声が聞こえる。

 あれ、さっきまで本読んでたラプラタ様の声……だよね。誰と話しているのかな?


「ええ、大丈……す。……の件は気取られ……ません」

 ちょっと気になるけれども、まるで金縛りにあっているようにあたしの体は、指一本動かすことも出来ずにいる。

 意識も何だかふわふわしてて、会話が途切れてしか聞こえないや。


「……おります。”柱は災を……、環は……強固に……”……よね?」

 耳を立てようとするがそれも敵わず、元々無い集中力は強烈な眠気で霧散し、再び意識は遠くなっていく。

 もう駄目……、ぐう。

 Zzz……。

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