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どん色の女騎士と、輝色の女魔術師  作者: いのれん
第四部「過去編」
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第五十八話 交じり合い絡み合い、そして”真相”へと近づいていく

「ねえエミリア」

「うん?」

 あたし達はかつての宮廷魔術師長であり、賢者と名高いデウスマギア様の儀式を終え、城へ帰ろうとしている。

 しかし、エミリアはいつもの魔術師の姿だけれど、あたしは何故か悪魔のままで本来の自分の姿に戻る事が出来ないまま、城へと向かっていた。


「変身が解けないんだけれども、どういう事……?」

 さっきからずっと変身を解こうとしている。しかし、全く人間の時の姿に戻る気配が無い。

 もしかして、ずっとのこのままなの?

 ひええ、そんなの絶対に戻ったらやばいよ!

 騎士団クビどころか、間違いなく特定危険生物入りしちゃうううう。


「えっと、変身を解くのでは無くって、逆に人間の姿へ変身してみたらどうかな?」

 ああ、なるほど。その手があったね。

 エミリアの機転の利いた発想に感心しつつ、あたしは頭の中に自分の人間だった頃の姿をイメージする。


「うーん、えいっ!」

 頭の中の自分の姿がはっきりとした時、掛け声とともに片手を上げると、ほんの僅かな黒い光とともに体は変化し、いつもの人間の姿へと戻った。


「おお、戻った。いつもの体になった。……やっぱり貧乳だよね」

 たぶんほんの少ししか時間経っていないはずなのに、何だか久しぶりな気がするよ。

 うーん、やっぱり足先まで見える。

 お胸だけは悪魔の時のままにとけばよかったかな。


「その姿も十分かあいいよ。ふふ」

「い、いやん! 照れるじゃん!」

 な、なにいってるのもう!

 全然可愛くないし!

 本当に意地悪なんだから……。むう。


「じゃあエミリアも、天使の姿が本当の姿で、今の魔術師の姿はやっぱり変身しているのかな?」

「うん、そうだよ」

 やっぱりエミリアも天使の本来の力を取り戻したんだよね。

 あたしと違って軽々と手にいれちゃったっぽいし、流石だね。

 あれ、人間の姿に変身してるって事は、もしかして気を抜いたりすると変身解けちゃうのかな。

 寝ておきて気づかずに外に出たら大変な事に。

 う、うーん。気をつけないと。


「エミリアの本当の姿、すんごい綺麗だったなあ……」

 儀式の中で、何だかうろ覚えだけどもさらに神々しさと美人度合いが上がってたような。

 主の光がなんとかかんとか言ってたから、きっとすんごいんだろうなあ。


「シュウの悪魔姿だって、とっても素敵だよ? 私はあんなに()()大きくないからね」

 お胸!

 そうだよ、お胸だよ。

 何だかいつもの悪魔姿よりもさらに大きくなってたような気がしてたし。

 気のせいか重かったような感じがしなくもなかったし。

 巨乳になるほど、えっちくなればなるほど強くなってるとか……?

 我ながらなんて馬鹿馬鹿しい考えなんだ。


「た、たしかにお胸は大きくなってたかも」

「ふふ。今度はあの姿でイチャイチャしてみる?」

 エミリアの予想だにしない発言に、思わず前のめりになりながら咳き込んでしまう。


「な、ななななにいってるの! そんなふ、ふふ不謹慎なんだよ!」

 急に何言っちゃってるの!

 変身はそういうのに使うのじゃないんだから!

 え、エミリアどうしちゃったの。天使ってえっちなの?

 も、もう……。


「……でもちょっと興味があるかも」

「ふふ、素直な子は好きだよ」

 正直、興味はある。うん。

 はあああ、駄目だ。あたしは何を考えているんだ。

 でもでも、やっぱり気になるじゃん?

 ふう。


 あたしとエミリアは、とてもくだらない会話で和みつつ、風精の国の城へと戻る。

 そんな会話も、あたしの気を紛らわしてくれているエミリアの気遣いなのかなと思い、ちょっと嬉しくなってしまう。


 そしてお城へと戻り、どこにも寄らずにラプラタ様が待っている執務室へ向かい、部屋に入ったあたし達はデウスマギア様に書簡を渡した事と、儀式を受けた事を簡素に口頭で報告した。


「お疲れ様。二人とも任務を受ける前よりも、いい意味で顔つきが変わったと思う。見違えるってこういう事を言うのかもしれないわね」

 確かに見違えるというか、何だが別人になってしまったような気もするけども。

 しかも別人というか、人間じゃないや。

 だって人間に変身してるって事は、以前以上に天使や悪魔になってしまったって事だよね?


「じゃあ順を追って話していくわ。私が知っている事をね」

 今まで労いをこめた笑顔のまま、ゆっくりと立ち上がり窓の外の景色を見ながら話し始める。

 ついにこの時が来たんだ、すべてがわかる時が。


「まずは私とエミリアの出会いからかしら。エミリアは退屈かもしれないけど、我慢しててね」

「大丈夫ですよ。シュウにも是非知って貰いたいですし」

 そういえばずっと気にもしなかった。いやまあ本当なら気にするべきなんだろうけど。

 エミリアとラプラタ様ってどうやって知りあったのかな?


「そう、あれは私がまだ地上へきて間もない頃だった……」

 今までの笑顔は消え、ラプラタ様は真剣な面持ちになるとゆっくりと語り始める。

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