番外編 あくまで人気なのは悪魔
あたしは修練場で剣の素振りを終えて、水浴びをしようとブロンズ専用の水浴び場へ向かう途中。銀騎士の集団がなにやら見ているのに気がつく。
一体何を見ているんだろう?
いいものかな、あたしも見せて貰えるかな?
「ねね、何を見ているの? あたしにも見せてよ」
「はぁ? どん色騎士には関係ねえよ。向こう行け」
あたしが声をかけた瞬間、その集団が見ていたであろう何かを隠されてしまう。
やっぱりそうなるよね。いつもの事だからいいんだけどね……。はぁ。
諦めて再び水浴び場へ向かう時、別の集団が同じ様に何かを見ている事に気がつく。
今度は銅騎士の集団だから見せて貰えるかな?
わくわく。
「ねえねえ、何を見てるのかな?」
「ん? ああ、お前には関係ないから」
先ほどと同じく、冷たくあしらわれてしまう。
一瞬見えたのは、何か紙を見てたような?
でも何が書かれていたかは解らなかったし、何でそんな隠すの。
さては、いやらしい絵だね!
もー、男の子ってほんとえっちなんだから。
うーん、でも気になる。
隠されると余計に気になって、むうう。
はぁ、気にしても無駄なんだけどね。どうせ見せて貰えないし。
さっさと水浴びして寝よ。
あたしが諦め、再び水浴び場へ向かう時、一人の金騎士が同じ様に何か紙を見ていた。
さすがにシルバーやブロンズで断られたのに、ゴールドなんて無理だよね。
でも気になるなあ。何が書いてあるんかなあ。
うーんうーん。
「これか? お前も見てみるか? 女の子が見て楽しいかどうかは解らんが」
あたしの視線に気がついたのか、その金騎士は今まで見ていた紙をあたしに渡してくれた。
やった。ついに見れる!
何が書いてあるんだろう。わくわく。
あたしが胸躍らせながら紙を見てみると……。
「こ、これって」
真っ赤な瞳、頭には二本の角、背中にはコウモリの翼、そしてちょっとえちい格好。
間違いない。ここに描かれているのは、あたしが悪魔に変身した時の姿の絵だ。
「記念祭で出てたさすらいの旅芸人さんの絵だぜ。凄い綺麗な人だよな」
「へ? あ、ああ。うん、そうだね」
こ、こんなものがあったなんて。
全然知らなかった……。
「仮装コンテストで出てた人達とリーネちゃん、エミリアさんの絵が販売されたんだ。有名な画家らしくて発売当日に全員完売したが、リーネちゃんとエミリアさん、そしてこのさすらいの旅芸人さんがいち早く売れたんだぜ」
「そうなんだー。ほおほお」
二人はともあれ、あたしって意外と人気あるんだね。
何だかちょっと嬉しいかも!
ふふん。
……でも、悪魔に変身したあたしが人気あるんだよね。ちょっと寂しいような、悲しいような、ううっ。
「しかも、売値八百ゴールドが今じゃ価値が上がって五千ゴールドで買い手が居るらしいからなー。まあ俺は手放さないけど」
あたしの事もそうだけど、エミリアの絵が欲しかったなあ。
きっと天使の姿で描かれているんだよね。
きゃー、部屋に飾っちゃうっ!
気になっていた事が解消されたあたしは、金騎士に自分の変身した姿が書かれた紙を渡すと、金騎士はその場から去っていった。去り際、妙ににやにやしてたのは気のせいかな。




