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プロローグ

休み明けの平日にもかかわらず、部屋で一人、異世界ロリっ子モノのエロゲーをしながら慈悲に浸っていた俺に親からのメールの着信音が鳴る。


メールの内容はいつも決まっているので見るまでもない。大抵が『仕事に就け』か『結婚して真面目に生きろ』かだ。今は親の金でアパートを借りているが、食費とゲーム代などはバイトしてなんとかしている。だから全く働いていないってわけではないんだが、口うるさい親父はバイトは仕事と認めていないようだし。母親の方はたまにゲームなどを買う金をくれたり、食物なんか送ってきてくれるから助かるが、会うたびに何か言ってくるからめんどくさい。俺は今の生活をやめる気はない。


結婚なども36にもなって一回も女の子と付き合ったことのない俺に出来るはずがない。


いや、正確には一回だけなら付き合ったことがあるか。まあ、あれを付き合ったと言っていいのか分からないけどな。あれは最悪な女だった。


告白したのは俺。高校の入学式の日に一目惚れした女の子にだ。返事はまさかのOKだった。俺は歓喜したな、めっちゃ喜んで毎日メールして浮かれてた。で、初めてのデートで遊園地に行くことになって、行ってみればそこにいたのは彼女と、学校一の不良グループのトップのやつがベンチにもたれ掛かって魔王みたいに踏ん反り返っていた。その周りに5、6人そいつの仲間、もとい部下がいた。バカな俺は一瞬、自分が魔王に立ち向かう勇者かなにかだと勘違いしてカッコつけて恥ずかしい言葉を吐きながら魔王に殴りかかろうと、彼女を助けようとした。


だが、よく考えれば分かることだ。魔王の横にいた。仲良くベンチに座って。あの女は魔王の彼女だったんだと、その時ようやく気付いた。案の定俺はそいつらにフルボッコにされ、その上金まで巻き上げられて、定期的に金を持ってくるよう要求された。俺は騙されていたことをようやく理解して、それからと言うもの学校も、女も、人間さえ信じられなくなり、不登校になった。部屋に引きこもっていた。


そんな俺をみて両親も始めは心配していたが、少したってから俺が部屋から出て来ないことより弟に悪影響になることを心配し、俺を家から追い出したのだ。まあ、それは俺にとっては好都合だった。毎日口うるさく言われることもないし一人の方が気楽だったのだ。そしてその生活は20年近く....弟は有名な大学を出て大企業に就職。父親は今58でもうすぐ定年退職になる。なので、最近はいつもより俺に『働け!』と言ってくる。まあ、よく20年ちょっとも養ってくれたよ。そのせいで現在に至るわけだが。


ピロロロ....


その時、電話がかかってきた。また口うるさい親からの電話だろうが、無視って仕送り減らされるのも嫌なのでしぶしぶ出ると、


「も、もしもしっ!?」


母親の声、なにやら焦っているようだ。なにかあったのだろうか?まあ、なにもなくてこの焦りようはないだろう。


「なんだよ母さん」

「隼人!大変なの...海斗がっ....!!」


海斗とは弟のことだ。焦り過ぎて聞き取りにくかったが一応は理解できた。どうやら弟は自分の勤めている会社の社長室に行く用事があり、部屋の前で扉をノックしようとすると刃物を持った男と鉢合わせになり、腹を刺されてしまったらしい。刺した男は一ヶ月前にリストラされた50代くらいの中年の男で、社長を殺害後、部屋の外にいた海斗にばれたので殺そうとしたと言っているそうだ。社長室に刃物を持った元社員が、ってどんなセキュリティだよ!まあ、その男は警備員に捕まえられ警察で取り調べ中なんだとか。


で、弟の方は現在とても危ない状況らしい。内蔵がだいぶ傷ついていてもうダメかもしれないと医者も弱音を吐いている状態なんだとか。医者がそんなこと患者の親の前で言っていいのかよ!まあ、そんな状態だと母さんが言っていたが...


正直、どうでもいい。弟とはそこまで仲も良くなかったし、むしろよく比べられたりしてウザかったから嫌いだった。それでも親が一度帰ってきて見舞いに行けと言うので行かなければならない。


行ったら顔だけ出してすぐ帰って来る!そう決めて10分で支度した。どうせ引きこもるからと駅から少し遠いアパートにしたのが間違いだった。歩くのがしんどい。近くにバス停があったので待つことにした。


5分くらい待つと何人か人が並び始めた。女子高生と小学生、あと二十歳くらいのギターを背寄った男に40代くらいの男だ。あと2分くらいでバスが来るはずなんだが......くる気配がない。仕方なくカバンに入れていたハーレムモノのラノベを読もうとしたところで、異変に気が付いた。さっきからこっちに向かって来ているトラックの走りが変だ。スピードが異常に早く、ハンドルが揺れているのかぐねぐねに進んでいる。あのままではこっちに突っ込んでくる!が、体が動かない。長年運動っぽいことをしていないせいか、体がびくともしない。すぐ隣の女子高生が気付いたみたいだが、少し遅かった。トラックが突っ込んで来る。全員、女子高生も小学生もバンドマンっぽいやつもおっさんも、俺も引かれた。スピードが早すぎたのか、俺は頭を強打した。あ、俺死んだわ。それは理解できた。ってか、走馬灯とか見えないんだな。まあ、見えたところで俺の過去にいい思い出なんかなかったがな。なんだか、意識が体の後ろに感じる。今は地面にへばりついているから上か。そんな時、俺のケータイが鳴った。死んでいるはずだが、それが分かった。母親からだ。


なんのイタズラだろうか。

3:07 - 弟と俺は、全く同じ時間に死んでいた。

誤字脱字があれば教えて下さい。

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