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8月31日の憂鬱  作者: あまやま 想
小学生時代
2/19

妹が生まれるまで(2)

 二年生の夏休みは一年生の時のことを思い出して、さすがに夏休みの間、ずっと宿題に手をつけないと言う事はしなかった。


 しかし、まだ七歳の子どもゆえに、夏休みの誘惑に完全に打ち勝つことはできなかった。やっぱり、まだ一人で困難に立ち向かえる年齢ではない。


 父も母も一年前のことがあるから、僕に対して


「宿題はきちんとやるのよ」


「早く終わらせてから、残りをうーんと楽しめばいいんだぞ」


などと言うようになった。だが、夏休みだからと言って、法律事務所が暇になるわけでもないので、じっくりと子どもの宿題を見るような余裕はない。そこで二人は夏休みの間、僕に家庭教師をつけることにした。


 七月二一日に夏休みが始まってからの一一日間、僕は申し訳程度の宿題しかしていなかった。


 八月一日に家庭教師の岩山先生が来てから、月・水・金の午前中は地獄であった。なんで、夏休みなのに先生と一緒に勉強をしないといけないのか。しかも、お家で…。それは宿題を全て終えた八月一一日まで続いた。


 でも、そのおかげで残りの一九日間は夏休みの宿題から完全に解放される。僕は生まれて初めて、夏休みの宿題から解放された夏休みを過ごした。宿題をきちんと終わらせるだけで夏休みがこんなにも楽しくなるなんて、知らなかった…。


 ただ、夏休みは無情にも駆け足で過ぎ去る。同じ四二日間でも、学校がある四二日間とはえらい違いであった。


 そして、また八月三一日がやって来た。僕は八歳になった。前の年と違って、遊園地へ連れて行ってもらうことができた。


 別に八月三一日が休日でもないのに、二人はしっかりと休みを取っていた。僕のために…。観覧車に乗ったり、ゴーカードに乗ったり、ジェットコースターでフラフラになったり、本当に楽しかった。


 でも夜になると、次の日から始まる二学期が憂鬱で仕方なかった。昼間が楽しかっただけに、一層深く憂鬱の沼に突き落とされた。なんで、誕生日の翌日から二学期が始まるのだろうか…。少しずつだが、僕は自分の誕生日を嫌いになっていく。


 なんで僕は八月三一日に生まれたのだろうか? これが他の日だったら、こんな事を考えなくて済んだのに…。誕生日が夏休み最後の日で、翌日から二学期は始まるなんて…。子どもにとっては最悪の誕生日設定である。

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