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8月31日の憂鬱  作者: あまやま 想
小学生時代
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妹が生まれるまで(1)

 あれは小学一年生の夏休みだったと思う。小学校に入ってから、初めての夏休みですごくうかれていた。幼稚園の時と違って、宿題があったはずなのに、宿題のことをすっかり忘れていた。


 七月二一日からの四一日間、毎日遊びほうけていた。朝のラジオ体操に行った後、朝ご飯を食べてから、一日中カブト虫やクワガタを取りに行ったり、プールで遊んだりした。八月三〇日までは実に楽しかった。


 だからこそ、八月三一日は本当に地獄だった。毎日、少しずつ宿題をやっていればよかったのに…。本当に全くやっていなかったのだから…。父も母もすごくあきれていた。


「広道なら、コツコツとやっていると思ったのだが…」


と父がため息をつきながら言う。


「やっぱり、しっかりしているようで、ぬけているのよね。それにまだ小学一年生だし、やっぱり毎日見ないとダメだったのね」


と母が肩をすくめる。


 今だから言えることだが、僕は当時の両親にあきれる。小学一年生が一人できちんと宿題なんかするはずないのだ。まだ、親がしっかり見ないと何もできやしない歳である。


 まあ、今さら両親を責めるのも酷な話である。当時、二人は念願の法律事務所を開いたばかりで、僕のことをかまう暇なんて全くなかったのだ。


 それでも、僕の誕生日だけは家族で祝うため、これまでと同じように二人とも平日なのに仕事を休んだ。僕を遊園地に連れて行こうとしていたらしい。それが全く宿題をやっていなかったせいで、全てが台無しになった。


 朝から二人が付きっきりで宿題を見てくれた。そのおかげで、夜には何とか宿題を全て終えることができた。二人は宿題の分からない所を上手に教えてくれたが、けして代わりに宿題をやろうとはしなかった。


 まあ、当たり前の話であるが…。僕は時に泣きながら、時にわめきながら、夏休みの宿題と言う強敵と戦った。宿題を全て終えた時には、目は赤く腫れていたし、喉は嗄れていたし、右手も痛かったし、無性に眠かった。もう、誕生日なんてどうでもよかった。


 それでも、母がいつの間にか用意したケンチキセットとケーキを見て、少しだけうれしくなった。ケンチキもケーキもとてもおいしかった。


 でも、明日から二学期が始まると思うと嫌な気持ちになる。僕は学校が大嫌いだった。正確に言うと、勉強が大嫌いだった。もし、学校に休み時間と給食の時間しかなかったら、どんなに楽しいだろうか。子どもながらにそう思った。こうして、僕は七歳になった。


 二学期が始まると、前の日に必死でやった宿題を出した。それにしても、どうして、夏休みは八月三一日で終わるのか?


 そして、二学期は九月一日から始まると決まっているのか? 子どもながらに不思議に思った。もし、夏休み最後の日が八月三一日でなければ、どんなによかったことか…。前の日のことを思い出しながら、子どもながらにそんなことを考えた。


 はっきりと言ってしまえば、誕生日の翌日から二学期が始まるのが気に入らない。どうして、夏休み最後の日が誕生日なんだろうか…。

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