問題発生・・・
第14話です
「・・・」
変にそわそわして居心地が悪い。
(どうしよう・・・)
ぼくは今、緊急事態に直面しているーと思う。
「へぇー、愛美さんは歌手志望なんですか?」
「うん、秋奈ちゃんは?」
「私?私は、保育士です!」
楽しそうな少女たちの会話_時折聞こえる笑い声。
別にこれに問題があるというわけでない。ただ、ただ・・・
(何でぼくの家に桜木が来ることになったんだよ・・・!!)
問題とはこれである。
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時は約20分前、ぼくと桜木が秋奈に出会った所にさかのぼる。
「何するんだよ!秋奈!!」
「なによ、私のことさっきから無視して!何度もお兄ちゃんって呼んだじゃない!!」
急に背後からテニスラケットで殴った秋奈と言い合いをしていた時、
「・・・小林の妹?」
という桜木のつぶやきが聞こえ我にかえる。
(そうだ、こんなところで言い合いしている場合じゃない・・・!)
とりあえず、一度深呼吸をする。
「えっと、こいつはぼくの妹の秋奈。」
「こいつってなによ!・・・まぁいいか、 小林 秋奈です。
いつも、バカで失礼などうしようもない兄がお世話になっています。」
ぼくが紹介すると、秋奈は普段しないような笑顔であいさつする。
どうかふだんもこれくらい素直でいてくれ。
そして後半は桜木の前なので無視しておこう。
「私は小林のクラスメイトの桜木 愛美です。
いつもあなたのお兄さんにお世話になってます。」
桜木も秋奈に続いてあいさつをする。桜木も軽くだけれど笑顔を浮かべる。
それにしても、少し驚いた。
お世辞でも『いつもお世話になっている』と言ってくれるとは思わなかったから。
トクッ__
(・・・?)
変に心臓が脈打つのを感じた。どうも最近この感覚が多い。
「なんでだ・・・?」
ふっと、一つの考えが頭に浮かんだが急いで頭から消す。
(好き・・・とかは無いな、うん。)
ぼくがボーっと考え事をしていたら、秋奈がぼくと桜木を数回みて
「そうだ!」
と手を叩く。
「なんだ?」
と聞き返せば、秋奈はいたずらっぽい笑みを浮かべとんでもない事をいいだした。
「私たちの家でご飯を食べていきませんか?」
「「えっ・・・!?」」
珍しく、桜木と声が重なる。
「何言ってんだよ・・・な、なぁ?」
「・・・」
ちょっと早口になったが桜木に同意を求めるがが、桜木はうつむいたまま何も言わない
「だいたいそんなこと言ったら桜木に迷惑が・・・」
「・・・いいよ」
ぼくが秋奈をたしなめようとした時、桜木と言葉が重なった。
「えぇっ!!」
「やった!」
秋奈は跳ねるように喜んだが、ぼくはあまりの驚きに思ったより大きな声が出た。
「ありがとう!私いい加減お兄ちゃんの顔見て食べるの飽きたんです
と、秋奈が桜木のてを引いて走り出す。
「わっ!」
桜木も何とかついていく。
「・・・。」
ぼくはしばらくその場に立ちすくんでいた。
桜木がまさか許可を出すとは思わなかった。
「・・・はぁ」
(もうどうにでもなれ・・・。)
ぼくも急いで秋奈達を追いかけた。
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(さて、なにを作るか・・・。)
ぼくは冷蔵庫を開けて中を確かめる。
中には野菜やミンチなど、とりあえず人数分の材料がある。
「おーい、お兄ちゃん早く作ってね」
リビングから秋奈が声をかけてくる。
(あまり時間のかからなそうで、おいしいもの・・・)
何を作るか考えている時、ふっと、いつか桜木とした会話を思い出す。
『好きな食べ物何?』
確かこれは桜木の歌を聴いた次の日に屋上からの帰り道、ぼくが何気ない質問をした時。
ぼくの記憶が正しければ彼女の好きな食べ物は・・・・
「よし!」
ぼくは卵を割り始めた。
桜木の好きな食べ物、何となく予想つきますか?(^ ^)