いつもとちがう帰り道
第13話です
図工室で黙々と作業を続けること約1時間ちょっと。
看板はほとんど出来上がり、ぼくが担当していた飾りもだいたいはできていた。
「うわ、もう暗くなってるじゃん」
窓の外をみると辺りは暗くなり、街灯や家の明かりがついてる。
チラリっと桜木を見ると、まだ看板に色を塗っていた。
あまり帰りが遅いと桜木の親も心配するだろうと
「なぁ、そろそろ終わりった方が…」
と声をかけるが反応しない。
なので、今度はさっきより大きな声で
「おーい、桜木?」
と声をかけるとやっと桜木は気付いてくれた。
「あっ…ごめんなさい」
「いいよ謝らなくて、そろそろ暗くなってきたから帰ろうか?」
「うん、にしても暗いね…やっぱり11月にもなると日が落ちるのが本当に早い」
「そうだなぁ。さっきまで明るかったのに」
桜木は作業に集中すると、必要最低限のこと以外話さないので、これが約1時間ぶりのまともな会話だ。
(さて、片付けるか…)
ぼくは座りっぱなしで少し痛い背中を押さえながらゆっくりと立ち上がった。
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片付けも終わり後は変えるだけの時、ちょっと意外なのだがぼくと桜木の家は同じ方向にあるらしい。
そこで、せっかくなので途中まで一緒に帰ることにした。
歩き始めて5分。
「・・・」
「・・・」
(まっったく会話がない…!!)
自慢ではないが、ぼくは基本女子とあまり話さないので、こういう時何を話せばいいのか全くわからない。
(なんだろ…今日の授業についてとか?いや、それじゃああまり盛り上がらなそうだし。
昨日やっていた番組の話題だろうか…って昨日ぼく何を見たっけ?)
「…ねぇ、小林の両親ってどんな人?」
「えっ…!?」
何について話すか考えていると不意に声をかけられて少し声が裏返る。
とりあえず、一度落ち着いて、
「そうだなぁ。別にどこにでもいそうなお人好しな親かな」
と答えると
「そっか…」
と小さく頷いた。
「「・・・」」
再び沈黙が訪れる。
ぼくがまた考えようとすると--
「ぉ---」
「・・・!!?」
聞き覚えのある声が後ろからした。
(まさか…)
脳内に毎朝、毎晩顔を合わせるある人物が思い浮かぶ。
おそるおそる後ろを振り向くとそこにはぼくの予想通りの人物がこちらに近づいていた。
(やばいぞ…ぼく一人ならまだしも、今は横に桜木がいる…。
あいつに見つかったら絶対にめんどくさい!)
ぼくは桜木にそっと耳打ちをした。
「ごめん、少しペースをあげよう。そしてお願いだから絶対に後ろを向かないで」
「…?わかった」
桜木は少し不思議そうな顔をしているが、納得はしてくれたようだ。
ぼくらがペースをあげようとしたその時
「お…ちゃ…」
先ほどよりもハッキリと声が聞こえる。ぼくが足を止めてもう一度後ろを向くと何かが顔に向かって振り下ろされた。
「いっつ!!」
ーーどうやら、顔面をテニスラケットで打ちつけられらしい。鼻がものすごく痛い。
ジンジンと痛む鼻を押さえながらゆっくりと顔をあげるとそこには
「なにするんだよ!秋奈!!」
「なによ、私のことさっきから無視して!何度もお兄ちゃんって読んだじゃない」
---ぼくの妹、小林 秋奈がいた。
「…小林の妹?」
桜木の驚いたつぶやきが僕の耳に届いた。