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16、とある少女の日常       ─ 日高 真昼  高校二年生(16)   ─

 目を覚ましたら、いつものあたしの部屋だった。

 一瞬、あれーっと思う。あたし、幽霊やってた気がするんだけど?

 頭がはっきりしない。

 枕元の目覚まし時計を確認すると、変な時間で止まっていた。起き上がって壁掛け時計を見るものの、そちらも同様に止まっているようだった。

 えーっと、今日は四月十七日の金曜日だったはず? 学校ある日だよね?

 正確な時間は分からないものの、体内時計の感じでは七時前くらいな感じ。

 金曜日は朝練ないし、少しは余裕あるかも。

 顔を両手でパンと叩いて気合を入れる。

 まったく、妙な夢を見たものだ。

 あたしが殺されて、幽霊になって、犯人に復讐だなんて、マンガか何かの読みすぎなのかな。

 大きく伸びをして馬鹿みたいに大きく口を開けてあくびをする。

 なんだか、ものすごく長いこと眠っていた気がする。まずは顔洗おう。

 階段を下りて洗面所に入ると、浴室の方に肌色の影が見えた。

 弟のヤツ、男のくせに朝シャンかい。

 じゃばじゃばと顔を洗いながらふと気がついた。なんか微妙に違和感が?

 シャワーを浴びたいところだったけれど、弟が出てくるまで待っていられるほど時間に余裕はないだろう。タオルで顔をごしごしと拭きながら着ていたTシャツとジャージを脱いで洗濯機に放り込む。ついでにブラとパンツも脱ぎ捨ててから、あたしこんな下着持ってたっけ?と疑問に思ったが、気にしないことにして浴室のドアを開ける。

「っな、誰?」

 抗議の声が上がるが気にせずあたしは弟からシャワーを奪った。

「弟よ、男の癖に朝シャンなどと軟派なことをするでない。姉に譲ってとっとと出て行け」

「???」

 目を白黒させている弟にシャワーをかけてやって、泡が落ちたことを確認してから浴室から追い出した。

「!!!???」

 なんか文句を言っているようだがシャワーの音で何も聞こえない。ということにする。

 あたしは内側から鍵をかけてのんびりと身体を洗い始めた。

 あれ、あたし、髪の毛こんなに短かったっけ?



 すっかりいい気分で出てくると、用意した覚えもないのに脱衣所に替えの下着が置いてあった。

 弟よ。なかなか気が利いておるではないか。

 ぱんつを履きながら、そういえば誰かにぱんつをあげる約束をしたような気がすると思い出した。誰にだったかなーと思いながら、ぱんつ一枚にタオルを首にかけただけで部屋に戻ろうとしたところで弟と鉢合わせした。

 ガラにもなく、真っ赤な顔で、なにやら口をぱくぱくとさせている。

「金魚のまね?」

 聞いてみたが弟は首をふるふると横に振った。

「あ、そうそう、着替えの用意ありがとね」

 言いながら弟の横を通り過ぎると、なにやらじっとあたしを見つめている様子だったので、「姉に欲情するなよ~?」って言ったら何かわめきながら居間の方に行ってしまった。

 部屋に戻って、制服に着替えると、何か足りない気がした。

 早苗にコートを借りたような覚えがあるんだけど、どこにやったかな?

 クローゼットの中をのぞきこみながら、なんだか妙に暑いし、返すのはまた今度でいいかなと思い直して扉を閉める。


 階段を下りてキッチンに入ると、新聞を広げたお父さんが、なぜか広げた新聞ではなく妙に優しげな顔であたしの方を見つめていた。

「おとうさん、おはよ。あたしの顔になんかついてる?」

 ぺたぺたと自分の顔に触れてみるが特に変なものがくっついている様子は無い。

「いや、ちょっとね。なんだかとても懐かしくて」

「へんなの?」

 変なお父さん。

「あ」

 キッチンの壁掛け時計を見上げて、思っていたよりも時間がやばいことになっているのに気がついた。

「ゆっくり食べてる暇ないや。このパンもらうね」

 お父さんの前に置かれたトーストをえい、とかっさらって口にくわえる。

「行儀が悪いな」

 お父さんは口ではそう言いながら、笑っていた。

 どたどたと、足音を立てて玄関に向かうと、既にカバンが置かれてあった。

 ナイスだ弟よ。なにか忘れてるとおもったら、カバンの用意だったか。

 ほとんどの教科書は学校に置いているので実は空っぽに近かったりするのだが、やっぱり手ぶらで学校にいくのはあんまりだしね。

 玄関のドアを開けて、珍しく見送ってくれた父親に、ふざけて敬礼をしながら言った。

「じゃ、いってきま~す」

 今日もいつもと変わらない一日が始まる。

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