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11、ある殺人犯の悔恨       ─ 早瀬 晶   高校二年生(17)   ─

少々残酷な描写があります。ご注意下さい。

 死に装束として学校の制服というのは何か意味深に取られないだろうかと思いながら、服装の乱れを直した。スカーフをしっかりと結び直して、手鏡で確認する。死に化粧というわけでもないけれど、普段は使ったことも無い口紅を、コンビニで買って適当に塗りつけた。

 わたしの罪を記した手帳は、おそらくきっと、誰にも見つからないだろう。

 いや見つからないで欲しいと思う。

 靴を脱いで、そろえて置いた。それから、遺書を靴の下に押し込む。

 なんで自殺をする人って、靴を脱いでそろえて置くのだろうと少し疑問に思ったけれど、これはある種の様式美というやつなのだろうかと深く考えないことにした。

 ビルの屋上は風が強く、遺書が飛ばされないかだけが少し気がかりだった。

 たいしたことは書いていないけれど、それでもわたしがこの世に残す最後の言葉なのだから誰にも見つからないなんてことはあってほしくなかった。そう思った時に、ふと、もしかして自殺する人が靴を脱いでそろえて置いておくのは、誰かが遺書を風とかで飛ばないように靴で押さえたのが最初なんじゃないかなと思った。



 眼下を見下ろすと、車のライトがいくつも列になっていた。

 じっと眺めていると、光の列はまるで何かの生き物のように思えてくる。

 ああ、これからわたしは死ぬんだと思った。死ななければいけないのだと強く自分に言い聞かせた。

 わたしは罪を犯した。その罪は決して世に明かせない以上、罪を罰することが出来るのは、ただわたしだけしかいない。だから、わたしはわたしを罰するのだと。

 風にスカートがめくりあがって、誰が見ているわけでもないのにあわてて押さえようとして、あ、と気がついた時には強い風に押されてわたしの体は虚空に押し出されていた。

 もうちょっと、心を固める時間が欲しかったかなと、耳元をごうごうと吹きすさぶ風の音を聞きながら思う。

 最後に兄のことを思いながらふと、思い出した。

 神様に、兄の娘として生まれ変わりたいと願ったけれど、もしかして今のままだとあの憎らしい売女の娘として生まれてくる可能性が高いんじゃ……?

 あーもう、くっそー。あの女殺してからにすればよかった。あの女の子供だなんてじょうだ


 最後の思考が終わる前に、わたしの脳髄ははじけて飛んだ。

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