ハーレムなんてつくると後が怖い―ハーレムをつくった転生者のその後―【息抜き短編】
荒野に強い風が吹き荒れている。巻き上げられた茶色い砂が目に入り、痛い。何故こんなところに来たのだろうと、不思議になる。確か何の用もなかったはずなのだが……。
「きゃー!」
突然、蒼穹に女性の悲鳴が響いた。透き通った綺麗な声は、悲鳴でも僕の鼓動を加速させる。その声で僕は、さきほど不思議に思ったことの答えを思い出した。
そうだ。僕は彼女を助けるために――ハーレムをつくるためにここに来たんだ!
思い出すと、鼓動と同じく、血液の流れも加速していく。血が騒ぐ。熱い。熱いぜ。
僕はにやりと笑いながら適当な呪文を唱え、右手の中に短剣を生み出した。
――創造。
これはこの世界に転生する前に神様からもらった、無敵の最強的能力(ただし神様には勝てないらしい)だ。これによって、僕は呪文を唱えることで物体をつくり出すことができる。勿論、錬金術というモノとは違い、等価交換やら何やらの法則は一切ない。世界の法則などお構いなしに、物体をつくり出せる。
ちなみに今つくった短剣は普通の短剣ではなく、とんでも能力を加えた、最強の短剣だ。この世界に存在しているものを全て破壊できる程の力を持っている。
僕は短剣を体の正直線上に構え、悲鳴の主である女性の方を向いた。
女性はドラゴン●エストにでてくるスラ●ムのような魔物に襲われている。早く助けないと、食べられてしまいそうだ。おのれ、僕のお嫁さんその5になんてことを……!
僕は大きく息を吸い、短剣を適当に振るった。
短剣の刃先から伸びでた一筋の光が、女性を襲っている魔物を貫く。空に向かって荒野の砂を勢い良く巻き上げながら、空の色を赤く染めながら、遠く離れたンンカモの村に台風をお越しながら――
その後。
ハーレムをつくるために闘いまくっていた日々も、もう昔のことになる。今となっては懐かしい。修正したい。何で僕はハーレムなんかつくろうとしていたんだ。何で僕は後のことを考えなかったんだ。馬鹿だ。馬鹿すぎる。何で、こんな……。
「おーい」「おーい」「おーい」「おーい」「おーい」
二階から掠れた女性の声が重なって聞こえた。声の主であるおばあさんたちは、昔助け、ハーレムに加えた女性たちだ。