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第八話 博打の後の奴隷市

エンジニア王国と森を挟んで隣接する大国ハンニ帝国。

軍事力は周辺国の約2倍。武力に物を言わせて自国の言い分を他国にごり押しする傾向がある。そんな国の、とある場所にむさくるしい男集団がやってきた。そんな男達を1人の商人が出迎える。


「いらっしゃいませ。本日はどのような御用で?」


「ああ、今日はこいつを売りに来たんだ。なかなかの上物だぜえ?」



***




「おお、金が増えたぞ!!どういうことだ?」


数日かけて、ハンニ帝国へとやってきた魔王御一行。入国手続きの際に貨幣をハンニ帝国の物に両替したことで増えたこれらに、黒髪黒服の彼女が驚嘆の声を上げる。それに対し、気味の悪い金属的な脚を蠢かしながら頭蓋骨が口を開く。


「このハンニ帝国の貨幣はエンジニア王国の貨幣とは違いますからね。エンジニア王国の貨幣はハルビン。ハンニ帝国の貨幣はブロンという単位なのですよ。1ハルビンにつき30ブロンですから量は増えますけど、この国で払う額も増えますからね?」


「…………そうなのか…………」


ガイコツの言葉を聞いてしょぼーんと元気をなくす彼女。

そんな彼女にどこから来たのかニヤニヤした1人の男が声をかける。


「お嬢さん、うちの店によって行きませんか?」


彼女が答えるのを待たずに男はニヤニヤと笑いながら彼女を店のある方へとどんどん引っ張って行く。


「お、おい!!ちょ……どこに行くつもりだ…………」


しばらく引っ張ってこられて着いた場所は装飾が、きらびやかというよりゴテゴテしている店。彼女は男の手を振り払うと男に尋ねる。


「なんだこの店は……」


「ここはですねぇ、遊んで金が楽に手に入る店ですよ。まだこの国に来たばかりでしょう?ここで稼いでいったらどうです?」


男はそう言うと店の中に彼女を押し込めた。

後をつけていたクロは中に入れずに、扉の前で待つことになり、グルグルとその場を回ってそのままその場で座る。


「まったく……こんな店に入るとは、無一文になるのはごめんだぞ……」


クロは店の中へと入って行った彼女に文句を言った。




一方店に入った彼女は不愉快そうにあたりを見渡す。

様々な賭け事をしながら、下品に笑ったり怒鳴ったりしている者達がいる。

彼らは新しい客である彼女を見ると、小馬鹿にしたように鼻で笑ってきた。


「おいおい、お嬢ちゃんにはまだ早いぜえ?」


「なかなかいい女じゃねえか。どうだい?俺が遊んでやるぜ?」


男達の声を軽く無視して彼女は自分を連れてきた男を見やる。

相変わらず、ニヤニヤして何を考えているかわからない男だ。


「で、このまま帰す気はないのだろう?私は何をすればいいんだ?」


彼女がそう口を開くと、彼女を連れてきた男はニヤニヤしたまま答える。


「では、トランプゲームでもしてもらいましょうか」


男がそう言うと周りで見ていた男達の中の数人が自分も参加すると1つのテーブルに座る。


「…………ガイコツ…………」


「んん?何か言ったかい、嬢ちゃん?」


「いや、なんでもない。」


彼女が小さな声で何かを呟いたのを聞いて1人の男が不思議そうな顔をするが彼女はかぶりを振って自分を連れてきたニヤニヤと笑う男にさっさとカードを配るように促す。

それを見て相変わらずニヤニヤとしている男がカードを配り始めた。

恐ろしい博打の遊びの始まりである。




***





クロはしばらく彼女の入って行った店を見上げていたが、何やら道行く人がざわめきだしたのを見て、その原因になっていると思われる人だかりへと歩を進める。


「本日はお集まりいただきありがとうございます。今回は商品にお好きな値段をつけていただきまして、言い値が一番高かった方へ商品をお売りいたしましょう!!」


ガヤガヤとした人の声の中、よく通るの声で商人が叫ぶとより一層、ざわめく人々。

そんな中、はじめの商品が運ばれてきた。その商品を見てクロは面白い物を見つけた時のような顔をする。


「奴隷市か、面白いもんだな」


異種族や貧困層の人間を奴隷という商品として、売買することがこの奴隷市であり一部の貴族や金持ちには重宝される。エンジニア王国では原則、奴隷市を禁止しているが、ハンニ帝国では特にそういった規制はかかっていないらしい。

市に集まった人達が皆、値段を商人に叫ぶ。しばらくして、一番高い値段を付けた者が奴隷を落札した。

そしてまた新しい商品が運ばれてくる。また騒がしく値段を客が言い合い、一番高い値段の者が落札する。この繰り返しをクロはしばらく静かに見ていた。





***





「ふざけんじゃねえ!!こんなのはイカサマだ!!」


テーブルを囲っていた男の1人が声を荒げる。

彼女を連れてきたニヤニヤとしていた男も今では顔を真っ青とさせている。


「ほう、では証拠はあるのか?」


怒鳴る男を全く気にする様子もなく、彼女は男を鼻で笑う。

そんな彼女に男はさらに怒り彼女に殴りかかろうとするが、それより素早く彼女が繰り出した蹴りが男の股間に襲いかかった。


「…………!!!…………」


声も上げられずに悶え狂う男を彼女は冷笑し、イスから立ち上がる。


「ふん、ではこの賭け金はもらっていくぞ」


皆が呆然とする中彼女は悠々と店を後にする。

店を出た直後彼女の背後にへばりついていたガイコツが笑い声を上げた。


「いやあ、ぼろ儲けでしたねぇ……それにしてもワタシの存在に気付かないとはあの男達も間抜けですよね。」


「ふふん、如何様など明らかにならないなら存在しないのだ」


それもそうですねぇ、とガイコツがカタカタと音をたてて笑っていると、なにやら人が集まっている一角がある。それに少し興味を持った彼女はその場所へと向かっていく。


「これは、奴隷市の様ですね……」


ガイコツのつぶやきに彼女は首をかしげる。


「奴隷というのは金を出して買うものなのか?自分で捕まえるのかと思っていたのだが…………」


彼女が市に視線を向けると商人と思しき男が口を開いた。


「では、本日最後の商品です。今回は耳長族の子供です。労働には適しませんが、なかなかに美形な商品です。では50銀ブロンから始めさせていただきたいと思います。」


商人の言葉で周りの客は値段を付けていく。

彼女はごそごそと自分の持っていた袋をあさって中身を見やる。


「銀ブロンとはこれか?」


「いえいえ、それは金ブロンです。銀ブロンよりも価値がありますよ。」


彼女は袋から一枚取り出すとそれを眺めている。

その間にも、奴隷に付けられていく値段は高くなっていく。

彼女は手に取っていた金貨を戻すと、市の奴隷に目を向ける。

と、しばらくして彼女はその奴隷の顔に見覚えがあることに気付き、そしてその奴隷が誰か気付いた彼女は驚きのあまり動作が止まる。




***





「なんであいつがここにいるんだ?」


クロは最後の商品の奴隷が連れてこられた時にそう呟いた。

それは以前森の中でちらりと見たエルフ族の子供に大変よく似ていた。というかたぶん本人であろう。


「奴隷狩りにでもあったのか? 間抜けな奴め」


クロは手錠をかけられ立たされているエルフを見ながら大きく溜息を吐いた。


「200!!」

「250!!」


50銀ブロンから始まったそれはすでに200銀ブロンを超えていた。

クロはそろそろ彼女達が店から出てくるだろうと踵を返す。


「250以上のお客様は居らっしゃいませんか?」


商人の確認の声が聞こえる。

そんな時クロの耳に一つの声が聞こえた。


「…………1…………」


「はい?」


最初商人は訳が分からないといったような戸惑いの声を出すが、そのあとの言葉でそれの意味を理解し驚愕する。




「1金ブロンだ。」




この世界の貨幣の価値は、

銅貨<銀貨<金貨

で一応万国共通ということになってます。

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