第五話 蘇った魔王
1人の男性を中心に多くの男たちが、長テーブルに座っている。
この中心に座る、物静かな男性はエンジニア王国、第12代目の現国王である。
先代の国王が亡くなり、一人息子である彼が現在の地位を手に入れることになった。
まだ若いが、そのぶん柔軟な頭を持ち、臣下達の協力を得ながらより良い国を目指している。
そんな矢先にとある問題が発生した。
これはその問題について話し合うための御前会議なのだ。
「国王陛下、城下の兵士の話では魔王と名乗るものが現れたとか……またその物は、サンマリアの宿場にて4人の兵士を殺害した模様。またその犯人と同一と思われる者をアサンテルミンで見たと役人からの報告で分かっております。」
先代の国王の時からの臣下の1人である初老の男が鋭い瞳で国王の反応をうかがう。
国王はその報告を受け、大きく息を吐くと、澄んだ声でその臣下に問う。
「魔王がこの世界に現れた時……お前はその言い伝えを覚えているか?……」
一瞬その老人は質問の意図が分からず、眉をひそめる。
魔王伝説などこの国中、いや世界の国中で知られている伝説だ。
大人から子供まで、誰でも知っていることだ。
「はい…………確か世は戦で乱れ、民は死に、辺りに魔物があふれかえると聞きます」
この後、立ち上がった勇者が魔王を討伐すると続くのだが、初老の男はそこまでは語らなかった。
「我々は持てる力を全て使いそれを防がねばならない。その魔王とやらを探し出すのだ。近隣の国々にも協力の要請を出せ!!」
王のその言葉を持って御前会議は終了した。
***
1人の男が、王宮の廊下を歩く。
それは先ほどの御前会議での初老の男性。
その男性は宮中の地下に向かう。
この地下は国王さえも知らない、秘密が隠されている。
「おお、神官長様。お久しぶりでございます」
初老の男性を見て宗教色の強そうな服を着ている若者が頭を下げる。
「ふむ……この間の救世主召喚はどうなった?」
初老の男性は、この若者を一瞥してしばらく前からずっと気になっていたことを問う。
救世主召喚とは太古の昔に行われていた、力のある神官や巫女によって世界の動乱を抑えるものを天より恵んでいただく儀式である。
魔物の侵攻、魔王の襲撃、国家間の戦争などの世の乱れを修正するためにこの儀式を行うと天より救世主と呼ばれるものが与えられる。
ある時は、無敵の強さを誇る剣が贈られ、世を跋扈していた魔物どもを払い、ある時は魔法を自在に操る杖が送られ、魔王を倒し、またある時は強大な自然災害で国家間の争いを終結させた。
しかし、とある事件によってその儀式は廃止になってしまう。
とある国の王が私欲を満たそうと神官を使いこの儀式を行ったところ、儀式によって漆黒を纏う娘が現れ、国も王も神官も全てをその少女に滅ぼされてしまったのだ。
この出来事があったことで世界の有力な神官達はこのことを天の怒りと捉え、二度とその儀式を行うことを禁止してしまったのである。
「それが…………漆黒をまとった娘が現れた様で……そこにいた神官達は突然の魔物の襲撃に会い、皆殺しに…………」
若者の答えに初老の男性は顔をしかめる。
彼は、この儀式をもう一度復活させようと考えていた。もちろん、救世主を呼び自己の欲望をかなえてもらうために。
彼は、この事故を間抜けな国王の引き起こした喜劇であると考えている。
その国王は、儀式で現れた漆黒の女を救世主と勘違いし、両手を上げて喜んでいたところを殺され、挙句の果てに自らの国まで滅ぼされたと・・・とんだ笑い話だ。
もっと呼び寄せたその少女に注意を置いておけばこんな結果にはならなかったのかもしれない。もちろん彼にはそうならない自信があった。
実際に、当時儀式の禁止には反対する神官も少なくなかったのだ。
彼は、これらの神官の子孫に話を持ちかけ【清教徒団】と呼ばれる組織を設立した。
そして彼は自分に従わない世界中の神官を長い年月をかけて駆逐し、とうとう自分と同じように儀式を復活させるべきだと考える神官や巫女だけを世界に残すことに成功した。
彼はこの清教徒団の力を陰で使い、表では自分の高い交渉術などを駆使して、11代国王の側近にまで出世し、そして表では国王に従うふりをしながら着々と儀式の準備をしてきた。
それは気付かれること無く、今では良い臣下という評判が広がり11代目国王の息子つまり現国王のご意見番のような存在にもなった。
「ふふふ……現在ちまたでは魔王騒ぎがあるらしい。その魔王とやらをこの儀式で呼んでしまった漆黒の女にしてしまうのはどうだ?あの坊ちゃん国王も魔王とやらを捕まえる気満々の様だしな」
初老の男の言葉ににやりと若者は笑うとその場から消える。
初老の男は微笑んだ。明日にはきっと国中にこんな手配書が出るだろう。
《魔王は漆黒の髪を持つ、黒い眼の黒服の女性!!見つけたものには王国より謝礼が払われる!!ぜひ諸君の協力を求む!!》
***
城下町ロンダリスを抜け出して東に進み、エンジニア王国領ラファランドルにやってきた魔王御一行。
「うう……腹減った……」
「そうだな……クロ。私も何か食べたい」
急いで逃げてきたため、空きっ腹なのである。
「いやはや、めんどくさいですねえ・・・ワタシなんか食事をとらなくても全然困らないのに・・・おや?」
金属的な脚の生えた頭蓋骨が2人を小馬鹿にしたように笑うが、町のある一角に人だかりができていることに疑問を抱く。
「あそこ何かあるんでしょうかね?」
ガイコツは人だかりに興味を示したが、対して彼女とクロはそんな些細な出来事より自分の食欲を満たすことを最優先するためにきょろきょろとあたりを見回している。
「もしかしたら、とんでもなく人気のお店があるのかもしれませんよ?久しぶりの食事はおいしいほうがよいでしょう?」
ガイコツは巧みに2人の興味を人だかりへと向けさせようとする。
「ふむ…………確かにそうだな……行ってみよう」
「俺は早く食えるところが良いんだけどなあ……」
反応はまちまちだが、人だかりの方へ行くことにした彼女達。
ガイコツは内心ほくそ笑む。
人だかりへと向かうと、何やら大勢でざわめいている。
人が多すぎて前の様子が見えないため彼女は近くの男性に事情を聞く。
しかし男性も興奮しているのか、何やら的を得ない答えだ。
「人探しの知らせらしいんだ、なんだか見つけたものには大金が出るらしいけど……」
男性は先ほどからその人探しの看板を見ていたようだが、ふと彼女に視線を向けた。
すると顔を青ざめ口をパクパクとさせ、声にならない悲鳴を上げる。
「おい…………どうした?」
彼女はそんな男性の様子を怪訝そうに眺めてから、たくさんの人の隙間から看板を眺める。
直後彼女は、それを見て思わず目を見開いてしまった。
そこに書かれていたものは…………
「いたぞおおおおおお!!!」
青ざめた彼女の耳に先ほどの男性の声が響いた。
作者は文を時間をかけないで書くのでどうしても雑になってしまいます。
時間をかけて書こうにも書いてる途中で何が書きたかったのか忘れる始末。
まあ……どっちにしろダメなんですよ……