アリストテレスの猫学
アリストテレスとソクラテス
こんな会話をしていたに違いない。
うん、多分。
「おいアリストテレス、王がお呼びだぞ」
陽がちょうど真上に来る頃、ソクラテスがドアを開けてやってきた。
「おいアリストテレス聞いているのか?王がお呼びだ」
「あー今行く」
アリストテレスは窓を見つめながら気の抜けた返事をした。
「ったく呑気な奴だ、なにを見ているのだ?」
「猫だ」
「猫?」
ソクラテスは呆れた様子で言った
「猫なんか見てなにを思う?それより王がお呼びだ」
ソクラテスの言葉を聞きアリストテレスは振り返りながら言った
「そう、それだよ」
「それってどれだよ」
また変な持論をぶつけてくるのだろう、ソクラテスはそう思った。
「なぜ私は呼ばれたからと言って行かねばならぬ?」
面倒臭いやつだとソクラテスは思った。
「王に呼ばれたら行くもんだろう?」
「何故?」
「何故ってこの国を統治する王だぞ?」
「国を治める王なら、いつでも私を呼びつけて良いのか?」
「用があるから呼ぶんだろ?」
「この忙しい私に面倒ごとを押し付けようと?」
「忙しいってお前、猫なんぞ見てなにもしてないじゃないか」
「いや私の頭の中は常に忙しい、見えやしないがな」
いつもそうだ、考え込んでしまうと気が済むまで話を聞かないと動かない。
ソクラテスは深いため息をついた。
「で、猫なんぞ見て何を思った?」
「なんぞ?ソクラテスよもっと猫に敬意を持て」
「猫は猫だろう?」
「なにを言うか、猫たちは人間に生き方を示しているだぞ」
「例えば?」
「呼んでも来ない」
「それが猫の生き方だろう?」
「いや、人間も見習った方が良いと思うぞ、行かないにしても理由を考えなければならないではないか、しかもだ上手く理由付けをしたとしてもだ、疑い、勝手に怒ることだってある、実に人間とは厄介だ」
「まぁ、一理あるな、他にもあるのか?」
「居心地の良いところを見つけるのが非常に上手いのだ」
「それも猫だからだろう?」
「ソクラテスよなんでも猫だからと決めつけるのも考え物だぞ」
「アリストテレスよ我々は人間だ猫ではない」
「だから学ぶのだよソクラテス、猫はそんじょそこらの場所でも心地いい場所を見つけるのだぞ、人間は雨風しのげる家が無いと生きてはいけない、しかもだ!日当たりだ角部屋だ西日は嫌だ、ユニットバスは無いわ~等とのたまわるではないか」
「時代背景を間違えていないかアリストテレス」
「いいのだ、こんなショートショートなど誰も読んではいない」
「作者が泣くぞアリストテレス」
「案ずるなソクラテス、もう泣いておる、話がそれてしまったな、つまり猫はどんな状況に置かれても自分の居場所を見つけ常に猫であるのだよ、分かるか?人間はあまりにも求めすぎなのだ、無い無いと嘆きすぎなのだ」
「言いたいことは分かったアリストテレス、そろそろ王の元へ行かぬか、いくら猫が優れていようとも我々は人間だ、求め過ぎているのはアリストテレスお前も同じだろう?」
アリストテレスは深いため息をついた。
「そうだな、考えても猫にはなれぬ、王のもとに行くとしよう」
※諸説あり




