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乙女ゲーの攻略キャラに転生したけど、気づいたらヒロイン無視して戦闘狂になってた話。  作者: 幸運寺大大吉丸@書籍発売中


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第1話 事の発端

-side アラン(主人公)-




「きゃあっ…」


 ヒロインに魔物が襲いかかってくる。


「危ない。」


 攻略キャラAが助ける。


「はあっ。」


 攻略キャラBが迎え撃つ。


「やあっ。」


 攻略キャラCが魔物を倒す。





  ♢ ♢ ♢ ♢ ♢





 ……。


 …………。


 え、俺は?





「フハハハハハハ!魔物がゴミのようだ!」


 みんなを無視して魔物が多いところで、魔物狩りをを楽しんでいた。

 そう、俺は戦闘狂である。




 

 俺は王道ファンタジー系乙女ゲームの攻略キャラに生まれた。

 乙女ゲームの攻略キャラというものは、キラキラしているイメージではあるが、実際はそれだけではない。

 攻略キャラは皆、謎の高確率で闇を抱えているのである。


 理由は様々で、父親が借金を抱えて死んでいたり、両親の重圧が凄かったり、仲間の裏切りにあって、人間不信だったりだ。

 とにかく闇を抱えていればなんでもオッケーらしい。



 そして、彼らこれまた謎の高確率でメンヘラを発症してグレることが多い。

 そうしてグレた攻略キャラ達がこれまた奇跡的な高確率で知り合い、つるんでいると、そこにヒロインが現れる。


 類は友を呼ぶというし、ヒロインもしかしたらお前も闇を抱えているのか?

 …と思いきや、ヒロインは大体幸せな家庭で育ち、清廉潔白。

 純粋な心で、攻略キャラの心を開いていくというある種の化物スーパーヒーローだったりする。


 攻略キャラもヒロインに出会うと、メンヘラどこいったというツッコミを入れたくなるような速さで立ち直り、勇敢に敵に立ち向かったりするものだ。

 大体どこの乙女ゲームの攻略キャラもこんな感じである。



 それは俺とて例外ではないはずだった。

 俺の場合、何者かによって両親が死に、兄弟はどこかに連れ去られ、跡取りとしてひとりぼっちになってしまった。


 当時6歳だった俺は、例外措置として公爵位を父親から引き継ぎ、国から派遣された役人が代わりに収めるということになったのだった。

 おそらく、この時に普通だったら、ショックで引きこもったり、ぐれたりするのだろう。そこをヒロインが助けるというのが実際のストーリーだったはずだ。



 ところが、実は俺、転生者だったのだ。

 地球に住んでいた頃の記憶は25歳の時でとまっているので、そこで死んだと思われる。

 そして、前世で既に母親の死を経験していた。


 だから、今の家族は家族ではあったし、死んだと知らされた時確かに辛かった。

 だが、まあ、人間誰しも死ぬ時は死ぬしそこまで思い入れもない人達だしなと、ヒロインが来る前に、割り切れてしまった。


 

 その後、俺は自力で切り替え、いつ俺のところに敵が来てもいいように備えることにした。


 幸いにも転生する際に、女神から異世界転生ボーナスとして、武芸の才と魔法の才をもらっていたので、難なく戦闘力アップを果たすことができた。

 試しにみんなに黙って、魔物と戦っていたらどんどん、戦闘技術を磨くことにはまってしまったというわけだ。




 話は変わるが、ヒロインとの出会いは俺が8歳の時だった。

 あいつはいきなり姿を現した。

 平民上がりというのに、圧倒的なオーラ。

 見た瞬間に、(あ、主人公だ)と直感的にわかった。



 ただ、そうは言っても俺には関係ないしなと思い、無視していたのだが、


「なんか、悩んでますよね?」とか、

「あたし、困っている人を見過ごせないんです!」とか聞いてもいないのにめちゃくちゃ話しかけてきた。あれは本当に困った。



 正直言ってその頃には悩み事など全くなかったのに、あまりにしつこく言ってきたので、警察に追放しようと思った。

 しかし、残念ながら、この世界に警察組織はなかったのであえなく断念。

 では、どうしたかというと誰にも付け入る隙を与えないように、さらに強くなろうと思い、ヒロインを無視して戦闘にはまっていったのだった。



 そんなことがあり、今に至る。3度の飯よりも戦うことが幸せな今日この頃である。





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