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好きな人  作者: りら
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僕には忘れられない人がいる。小学生の頃までの幼馴染だ。幼馴染は一卵性の双子の女の子だった。そして、僕はその妹の方が好きだった。


姉の方は髪をいつもポニーテールにしていた。運動が好きで、男子と遊ぶことも多かった。よく、鬼ごっこやサッカー、ドッヂボールなどをして遊んでいた。

妹の方は髪をいつもおろしており、恥ずかしがりやで姉の後ろに隠れていることが多かった。本を読んだりお人形遊びをしたりする可愛らしい女の子で、小学生ながらに守ってあげたくなると思わせる女の子だった。

僕が小学5年生の時に、彼女たちは親の都合で他県に転校していった。告白なんてことはできていない。初恋の女の子として、思い出を胸に大事に大事にしまっていた。


高校へ入学しクラス名簿を確認した時、同じクラスに懐かしい名前を見つけた。姉の方の名前だった。妹の名前を探すも、見つけられなかった。教室へ向かうと、すぐに分かった。くっきり二重の大きな目、ポニーテールをした雰囲気からして元気な女子が座っていた。

久しぶり、僕のこと覚えてる?と話しかけてみると、もちろん、小学校以来だね、と返してくれた。妹のことを聞くと濁されてしまった。彼女は人気者でよく人が集まってきており、それ以降なかなか2人になることはできなくて、妹のことを聞けたのは5月に入ってから。球技大会の日だったが、彼女は体調が悪いからと、球技大会は参加せず見学していた。一人でいるときを見計らって姉の方に近づき、妹のことを再度訪ねた。すると妹は事故にあって…と話してくれたが、ショックで僕は早々と逃げてしまった。

事故にあって死んでしまっていたなんて…。その日の夜は布団にくるまり泣いた。涙が止まらなかった。なんで姉じゃなくて妹の方が…と、最低なことも考えてしまった。


その日以降、成長していたら彼女はあんな風に笑っていたんだろうとか、いや、口元に手を当ててふふと微笑んでいただろう、などと姉の姿を見て妹のことを想像し、思いふけるようになった。そんなある日、彼女が友達いと別れ一人になった瞬間、さっきまで笑っていた顔が急に真顔になり、ため息をついたところを見てしまった。それをみて、どこか違和感を覚えた。秋には文化祭があった。僕のクラスはメイドカフェで、彼女の長い髪は二つに結ばれ胸元近くまで垂れていた。その時、僕は大きな事に気付いたのだ。


死んだのは姉で、妹が姉のふりをしているんだ、と。

よく漫画や小説などで見る双子の交換だ。よくよく考えると確かに違和感があったのだ。入学初日の朝一人で座っていた。姉なら絶対そんなことしない。妹のことを聞いても初めは濁された。自分が妹だから。球技大会に出ていなかったのは本当は運動が得意ではないから。部活も入っておらず帰宅部だ。姉はスポーツが万能だ。授業間に文庫本を読んでいる時もある。読書が好きなのは妹だ。考えれば考えるほど納得がいった。


彼女のために、僕はこの秘密を守ってあげなければ。僕が気づいていることも知られたら、彼女は悲しむだろう。彼女は姉として人生をスタートさせているんだから。絶対に彼女の人生を壊しはしない。しかも、2年にあがってもクラスが同じだったのだ。これは運命でしかない。



そんな思いを込めて今日も声をかける、おはようと。



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