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10 初顔合わせ

明日の朝食後に話をしようと公爵は決めた。



朝食がすむと、レベッカを呼びにやった。


いつもの通り、ゆっくりとレベッカがやって来た。


「相変わらずだな、チトラから聞いているぞ」と公爵が言うと


「そうですか?」とレベッカが答えた。じっと立ったまま夫妻を見下ろしている。


「座りなさい」と夫人がテーブルの一角を示した。


レベッカが腰を下ろすと


「おまえに縁談があった」と公爵がすぐに話し始めた。


レベッカは黙って下を向いたままだ。


公爵は声を大きくして

「おまえに縁談があって、相手は第三王子殿下だ」と言った。


レベッカは下を向いたまま動かなかった。


「来週、両家で顔合わせをする。そのつもりでいるように」と公爵が言うと


「かしこまりました」と小さく返事をしてレベッカは立ち上がって部屋を出て行った。

なぜか、公爵夫妻はなにも言えなかった。


その日の夕食時に、レベッカの縁談の話と顔合わせの話をするとステラが


「どうして、あれなんですか?魔力だけはあっても無能なのに」と言った。


公爵は苦笑いを浮かべて


「魔力があるとはなんだ!あれは魔力なしだぞ。知っておるであろう?あれでいいと王家が言うのだから、なにも言えない」とステラに答えた。


夫人は


「顔合わせはわたくしたち、全員で行くのよ。あなたをみたら殿下も」とステラに微笑みかけた。


ステラは下を向いてちょっと青い顔をしていたが、顔をあげて


「あれの魔力ですが」と言いかけたが


「いえ、なんでもないです」と言うと立ち上がって出て行った。


やがて、顔合わせの日がやって来た。


第三王子ヘンリーは不機嫌さを隠さずに、席に座っていた。


長テーブルの片側に国王夫妻。王太子をはじめとして王子が三人。王女が一人。


公爵夫妻。長男のリチャード。レベッカ。ステラが座った。


お茶を一杯飲み終わると王妃が言った。


「ヘンリー。レベッカさんに庭を案内してあげなさい」


「はい。行きましょう」とヘンリーは立ち上がった。


レベッカもゆっくりと立ち上がるとヘンリーの後ろからついて行った。



手入れの行き届いた庭を歩いていたヘンリーは立ち止まると振り返った。


そしてこう言った。

「おまえが無能で有名なレベッカだな。どんな手を使ったか知らんが石版を光らせて、まんまとこのおれの婚約者になったな。おれは無能は嫌いだ」


レベッカは冷笑を浮かべながらこう答えた。

「わたしも無能なばっかりに、一番はずれの三番目と婚約させられて迷惑ですわ。まぁわたしは石版の光り方から言うと魔力は豊富ですけど、無能は無能ですね。よく知っています。そしてこの縁談は嫌です。この婚約に政略的なものはないですしね。出来るだけ破棄にむけてお互い努力しましょう。と言いたい所ですが、あなたのようなはずれと手を組んだら共倒れになりそうですもの、まっぴらごめんです。わたしは独自に婚約破棄に向けて行動します。まぁつまりわたしもはずれは嫌いです」


「なんだとおまえは生意気な・・・無能なんだから捨てないでって縋るならまだ可愛げがあるというのに」


「はずれさんは可愛げが必要なんですか?せいぜい探せばいいですよ」


「おまえは・・・」


「さっ戻ったほうがいいですよ。どうします?喧嘩しながら戻りますか?」


「黙ってついて来い」と言うとヘンリーは足早に歩き出した。


レベッカはそれを見送ると、後ろ膝を軽く押した。


するとヘンリーの歩調が乱れた。なにかなと自分の膝のあたりを見たり、立ち止まって膝を調べている。


そのうちレベッカが追いついた。


「可愛げのある男は歩調を合わせますよ」とレベッカが言うとヘンリーはむっとしたようだが

「仕方ない」とレベッカの歩調に合わせた。


二人が並んで、なにやら話しながら戻って来るのを公爵夫妻と国王夫妻、第一王子のチャールズは安堵の表情で迎えた。


レベッカがもう一度、席につくと王妃が言い出した。


「レベッカ、学院に入学してちょうだい。そろそろ休みだから、来学期から一年生に編入して・・・その特例だけどクラスまではね。我慢して通ってちょうだい。一年遅れだけど・・うちのルイーゼもステラも同級生だから心強いと思うの」


すぐにレベッカは答えた。


「嬉しいですわ。学院に行きたいと思っておりました。図書館に行きたいですわ。一年遅れですが、飛び級は出来るのですか?」


「飛び級なんて、出来るわけないでしょ」とステラが言うと


「それは制度がないと言う意味ですか?わたしの能力では出来ないと言う意味ですか?ステラ様」とレベッカが冷笑を浮かべて言った。


「制度はあるよ。レベッカ嬢」と王太子が答えた。


「ありがとうございます」とレベッカは王太子に言った。


「良かったわ。喜んで貰えて」と王妃は微笑んだ。今の会話を見事に無視していた。


公爵夫妻はなにか言いたげだったが、押さえたようだった。




誤字、脱字を教えていただきありがとうございます。

とても助かっております。


いつも読んでいただきありがとうございます!

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。



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