不気味な存在
読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。
「どういうこと?スカーレットは私達が殺したはず...。」
「そんなことは関係ない。目標変更、<スカーレット・ギャザリング>のボス、ブラッドを殺す。」
レークスは一瞬でスカーレットの背後に回り、剣を振る。だが、その瞬間にスカーレットはレークスの真上に現れた。
「なっ...!?」
「レークス、伏せろ。」
フラクセンがスカーレットとレークスの間に入り、杖でスカーレットの鎌を受け止める。
「感謝する、フラクセン。」
「無理はないですよ。彼女、以前会った時より強くなっている。様子も変だ。」
スカーレットが顔を上げると、その目は白く輝いていた。本来、スカーレットの目は赤く光っている。それに、フィシルはその目を知っている。
「あれは、リリーと同じ...!」
その瞬間、スカーレットに翼が生え、スカーレットは片翼の天使となった。
「フラクセン、あれは危険だ。一旦退くぞ。」
「ええ、その方がいいですね。」
逃げようとするレークスとフラクセンをスカーレットが追う。その内に、フィシルはマトリサイドを抱えて、走り出す。
「マトリサイド君!お願い、無事でいてよ...!」
フィシルは下水道まで逃げ込み、リリーのいる部屋まで来て倒れる。その音を聞き、リリーが顔を出した。
「リ、リー...。」
「...もう大丈夫ですよ。私が、治してあげます。」
リリーが二人に触れ、光で包む。そして、フィシルの傷とマトリサイドの傷が綺麗に治っていく。
「ありがとう、リリー。」
「マトリサイドは疲れてるみたい。まだ寝かせとこうか。」
「う、うん。そうだね。」
リリーは淡々とマトリサイドを運び、布団に寝かす。いつものリリーとは違い、非常に落ち着いている。
「あの、リリー...。」
フィシルがリリーの顔を覗き込むと、フィシルは息を飲んだ。リリーは何かに失望したような、静かに怒っているような顔をしていた。とても不気味だ。
「フィシルさん、行きましょう。スカーレットを、殺しにいかなきゃ。」
「...待って、リリー。」
フィシルはリリーの発言に違和感を覚えた。スカーレットを殺す前に、確かめなければいけない。
「なんで、スカーレットが生きていることを知ってるの?」
「...。」
「リリーはずっとここに居たんだよね?じゃあ、知ってるわけない。それなのに、なんで知ってるの?まさか、リリーが何か...!」
「フィシルさん。」
リリーはフィシルに軽蔑の目を向け、口を開く。
「私はただ、気配から感じ取っただけですよ。」
フィシルとリリーは、ゆっくりと、1歩ずつスカーレットの場所へと向かう。
「リリーなら、スカーレットに勝てるの?」
「はい、勝てます。あれは不完全な天使ですから。」
「...天使って、何なの?」
フィシルの質問に答えず、リリーは無言で歩く。今のリリーは変だ。怒っているのか、悲しんでいるのか分からないが、いつもの明るい感じではない。
「リリー!手出して!」
「え?なんでですか?」
「いいから!」
フィシルはリリーの手を強引に引っ張り、その手に飴を乗せた。
「とりあえず、これ食べて!言っとくけど、貴重な物だからね!」
「えっ、何の意味が...。」
「さっさと食べろおぉぉぉ!!」
フィシルはリリーの口に飴を無理やり入れる。その飴は、ただ甘いだけだった。
「...美味しい。」
「でしょ?ほら、行くよ。」
フィシルはリリーの手を引いて歩き出す。フィシルの行動にリリーは戸惑っていた。
「えっと、さっきのは?」
「ん?ただ、美味しい物を食べさせただけだけど?」
「何の意味が?」
「ほら、リリーって最近は人肉とかしか食べてないでしょ?私にはお見通しだからね〜。」
リリーはマトリサイドとフィシルに隠れて死体を漁って食べていた。でも、決して美味しいわけではない。ただ、空腹を満たすためだけの行動。
「マトリサイドはリリーのことを大切に思ってる。ほんと、嫉妬しちゃう。でも、だからこそリリーには笑顔でいて欲しい。」
「...そんなの、ただの自己満足じゃ...。」
「何言ってんの?人間ってそういうものなんだよ?人間は、私利私欲のために動く。マトリサイドがリリーを守っているのも自分のためなの。」
リリーは、人間のことを全く理解していない。理解しようともしなかった。だって、リリーの目にはマトリサイドしか映っていなかったから。でも、今は違う。今、リリーの目にはフィシルが映っている。
「リリーが何を考えてるか分からないけれど、自分の幸せのために生きなよ?」
「うん。」
「まっ、私はお酒を飲む為に生きてるようなもんだけど!」
スカーレットの元へ向かうリリーとフィシルの前に、二つの集団のボスが立つ。
「...っ!リリー、気を付けて。」
フィシルはいきなり現れたフラクセンとレークスを警戒する。リリーが強いことは知っているが、この二人を同時に相手出来るかどうかは分からない。
「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。まあ、私達とあなた方の立場上、警戒するのは当たり前ですが。」
フラクセンに敵意はない。だが、レークスからは明らかに敵意を感じる。警戒を解くわけにはいかない。
「あの少年が見当たりませんが、いいでしょう...提案があります。私達に、協力していただけませんか?」
今回のお話、楽しんでいただけたでしょうか?ぜひ、応援よろしくお願いいたします!




