祭りの始まり
読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。
「よし、入るぞ。」
「うん。」
マトリサイド達が会場へ入ると、そこは多くの人で埋め尽くされていた。見渡せば、統一された服を着ている人のグループが三つほど存在するのが分かる。
「ここからは別行動だ。他の都市の集団も来てる、気を付けろよ。」
「うん、分かった。」
マトリサイドと離れ、フィシルは一人になる。今回は情報収集のために来たわけであって遊びに来たわけではない。
「お嬢さん。今、おひとりですか?」
「えっ、はい、そうですけど。」
黒いタキシードの男がフィシルに話かけてきた。男の首には黄色の宝石がはめ込まれたネックレスがかけられており、フィシルはこの男が何者か気付く。
「失礼、自己紹介がまだでしたね。私はフラクセン。どうですか?テラスで話をしませんか?」
「...喜んで。」
フラクセンに連れられ、フィシルはテラスに出た。この都市の主であり、<フラクセン・ギャザリング>のボスであるフラクセンとの接触によって重要な情報が手に入る可能性が高い。フィシルは、警戒しながらも笑顔でフラクセンと接した。
「旅のお方ですか?」
「えっ?」
「この都市で見かけない顔でしたから、間違いでしたら申し訳ございません。」
「いえ、大丈夫です。」
「ところで...彼は、何者なのでしょうか?」
フラクセンは、フィシルに警戒の眼差しを向けた。彼、つまりマトリサイドのこと。フラクセンは何かに勘づいていた。
「...と言うと?」
「誤魔化さなくて結構ですよ。彼はあなたと別れた後、すぐに会場の裏へ入っていきました。あなたも何かを探るような様子でしたし、ここへは何か目的があって来たのでしょう?」
フラクセンの鋭い目を向けられて、フィシルは自分の何もかもが見透かされているような感覚を覚えた。直感で理解した、この男は危険だと。
「彼の方へは部下を向かわせています。このままでは、彼が危ないかもしれませんよ?」
「私に、どうしろと?」
「ただ身分を明かしてくれればいいだけですよ。私はあなた方があのスクルータの二人ではないかと疑っているのです。」
スクルータの二人、つまり死神と悪魔のことだ。フラクセンはマトリサイドとフィシルの正体に勘づいており、下手に動けば厄介なことになる。
「...はぁ、やっぱりこうなるか。」
フィシルは空高く飛び上がり、空中からワイヤーを飛ばす。フラクセンはそれを避け、会場内へと逃げ込む。
「ふふっ、皆さん!見てください、あそこに悪魔が...!」
会場にいた全員がテラスの方を向いた。そして、息を飲んだ。空から地へと降り立つ悪魔の姿は、月の光に照らされ、こちらを赤い目で見つめる。世界トップクラスの実力を持っているわけではない。見た目も怖いわけではない。ただ、その内に秘めた不気味な殺意が恐ろしかった。
「まっ、逃げさせてもらうけど。」
フィシルがテラスから飛び立とうとした瞬間、フィシルの足を何者かが掴んだ。フィシルの近くには誰もいなかった。だが、フィシルが会場から目を離した瞬間に、距離を詰めてきたのだ。
「悪は、逃がさない。」
「...っ!」
その男はフィシルを会場の方へ投げ飛ばし、壁に叩きつける。
「かはっ...!?」
「悪魔、スクルータの殺人鬼か。僕はレークス、<アルバス・ギャザリング>の団長だ。死ぬ前に、名前だけ覚えておけ。」
レークスは剣を抜き、フィシルに振り下ろす。その瞬間、轟音と共に、レークスの前を小石が通り過ぎた。
「なんだ!?」
会場にいた全員が轟音のした方を向く。そこには、血を流し、倒れているマトリサイドと、<スカーレット・ギャザリング>のボスであるスカーレットがいた。
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