半魔の子
読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。
「天使様、なぜあの男にそこまで執着をなさるのでしょう?」
彼は堕天使に聞いた。なぜ、リリーがアルバに執着するのか。リリーにとって、人類は蟻のように簡単に潰せるとても弱い生物。それなのに、リリーはその蟻に異常なまでに執着している。それは、歪んだ感情にまで達している。
「何?不快?」
「いえ、ただ少し気になりまして。余計な事を聞きました。」
「いや、いいよ。君は信頼しているから、特別に話してあげるよ。」
そしてリリーは、この世の者とは思えない程に不気味な笑みを浮かべて口を開いた。
「彼は、<死神>だから。彼は、私より強いから。」
「ぐっ...!くそっ、隙がない!」
「休んでいる暇はありませんよ!」
フィシルと黒い男が激しい戦いを繰り広げる。絶え間なく続く攻撃で、フィシルの体力はみるみる削られる。
「はっ、はっ、はっ...!」
フィシルは物陰に隠れ、一時的に攻撃を凌ぐ。このまま消耗戦に持ち込まれたら、フィシルは負けてしまう。
「よっ、フィシル。」
「なっ!?お父さん!?」
「しー、あんま大きい声出したらあいつにバレるやろ。」
フィシルの前に現れたレイジーは、三つの黒い翼を生やして、すでに戦闘態勢に入っていた。
「でも、まだ怪我が...。」
「おう、だから俺は戦わんで?」
「へ?」
レイジーの怪我はまだ少ししか癒えておらず、とても戦える状態ではない。だが、レイジーはとある目的のためにフィシルの前へ現れた。
「堕天使の力を持った俺と、あの馬鹿力の子供のお前にはその力は大き過ぎたんよなぁ。ほんま怖いわ。」
「えっ、何言ってるの?どういう事?」
「でも、きっと今のお前なら大丈夫や。耐えられる。」
レイジーはフィシルの頭に手をかざして、魔法陣のようなものを展開させる。
「ねぇ!なんなの一体!?お父さん!」
「なぁ、スカーレット。俺らの子は、立派に育ったで。」
「えっ...?」
その瞬間、魔法陣が割れ、フィシルにかけてあった封印が解除される。堕天使の力を持つ者と、人類最高級の力を持つ者の子。それが彼女、最年少にして異名を与えられた少女。
「っ!この気配は、どこかで...!」
「さあ、行って来いフィシル。俺にかっこいいとこ見せてくれや!」
「うん、行ってきます!」
「...そして、俺らの仇も打ってくれよな。」
建物が崩れ、あの男の真上に一人の少女が舞う。彼が見たフィシルは、明らかにおかしな点があった。
「はあああっ!」
フィシルは急降下し、地面を割る。彼は目撃した、黒い片翼を持つ、悪魔の姿を。
「そうですか!あなたが、10年前に我々が見失った悪魔の子!まさか、こんな偶然があるとは!!」
「へ〜、私を探してたんだ?」
その時、あの男の視点が急に変わった。さっきまでいたはずの場所が遠い所にある。そして、彼は全身に激痛を感じた。
「...は?」
「お〜、ずいぶんと飛んだね。」
彼の身体は一瞬でボロボロにされ、血だらけになっていた。それの元凶と思われる人物は、彼の頭上にいた。
「っ!くそっ!!」
彼は空高く飛び、逃走を開始する。片翼しかないフィシルはまともに飛べる訳もなく、飛ばれたら為す術がない。それは、間違った認識だ。
「がっ...!」
彼の背中に大きな針が刺さった。それと同時に、彼は引っ張られる。
「これは、ワイヤー!?まずい、このままでは...!」
「お・か・え・り。」
彼の胸部にフィシルの拳が触れる。彼は短い時間の中、フィシルの顔を見つめた。レイジーやスカーレットと似た赤い眼光。そして、彼女に生えている堕天使と似て似つかない黒い片翼。笑みを浮かべ、殺しを遊びのように楽しむ彼女の姿は、まさに。
「悪魔め...。」
彼の身体全体に衝撃が伝わり、破裂する。血を浴びる少女はかつてのスカーレットのように笑い、いつかのレイジーのように冷静だった。
「さて、アルバ君の所に行かないと。」
たった今、史上最年少にして最強の半堕天使が完成する。
今回のお話、楽しんでいただけたでしょうか?ぜひ、応援よろしくお願いいたします!




