綺麗なまま
読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。
「怖い、怖いよぉ...。助けて、お兄ちゃん。」
都市の地下に一人の少女が隠れる。彼女はまともに刃物を握ったことも、銃を握ったこともない。非力で、汚れていない綺麗な存在。
「アルバお兄ちゃん...!」
一人震えるリリアーナに、一人の堕天使が近付く。リリアーナはその存在に気付き、走り出す。
「いやっ!いやだぁ!!」
リリアーナの目の前の壁が崩れ、黒い翼を生やした少女が現れる。堕天使であるリリーは、リリアーナを睨みつけながら近付く。
「マトリサイド...なんで、こんな事...!」
「リリアーナ、一つ教えてあげる。私の本当の名前はリリー、君のお兄ちゃんが付けてくれた名前なんだよ?」
リリーの言葉にリリアーナは固まり、目に涙を浮かべて口を開く。
「お兄ちゃんと会ったの?」
「うん、あの人は私を助けてくれたの。本当に優しくて、あの人だけいればいいって思っちゃうぐらい!」
「お兄ちゃんのお友達なら、なんでこんな事するの...?」
リリアーナの汚れていない眼差しに、リリーは苛立ちを覚えた。きっとアルバがリリアーナを見れば、リリーなんかよりもリリアーナの方が綺麗だと言うに決まっている。だからこそ、リリアーナはリリーにとって邪魔な物だ。
「本当に苛つく。もういいよ、お前は。」
リリーはリリアーナに向かって翼を振り下ろす。その翼は、リリアーナに当たる前に何かに弾かれた。
「っ!お前!!」
「まったく、このまま隠れていようとしたらこのザマですか。私もお人好しなものですね。」
そこに立っていたのは、<フラクセン・ギャザリング>のボスであるフラクセン。レークスが負けた今、この場にいる者で戦えるのは彼のみ。
「お嬢さん、お逃げください。そして彼に伝えるのです、あなたの天使は裏切ったと。」
「...っ!はい!」
リリアーナは走り出し、都市の外を目指す。走っている途中で後ろから激しい戦闘音が聞こえたが、彼女はそれでも走り続けた。現在、アルバ達もこの都市へ向かってきている。この都市さえ抜ければ、合流は可能だ。だが、それは決して許されない。
「うぐっ...!」
リリアーナの足に激痛が走り、リリアーナは倒れ込む。背後に、誰かの気配がする。
「あはっ、あはははははっ!残念でした!あんな奴が私の足止めになる訳ないじゃない!!」
リリーはリリアーナの前に座り込み、不気味な笑みを浮かべる。とても嬉しそうで、楽しそうな笑みだ。
「あなたはお兄ちゃんに会えないまま死ぬ。あなたの人生はここで終わりを迎える。でもいいじゃない?だって、綺麗なまま死ねるんだから!」
「い...やっ...!ごめんなさい!ごめんなさいごめんなさい!許して、お願いだか...!」
その瞬間、リリアーナの心臓に一本の剣が刺さり、血が溢れ出す。リリアーナは消えゆく意識の中、兄の姿を見た。それは幻ではなく、本物。その時、すでに堕天使は消えていた。
「お兄...ちゃん、やっと...。」
純潔の少女は、温度を失った。
今回のお話、楽しんでいただけたでしょうか?ぜひ、応援よろしくお願いいたします!




