夜の悪魔
読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。
マトリサイドは今日は少し離れたところまで来ている。マトリサイドが住んでいるところはもうほとんど誰も近寄らなくなった。なぜなら、そこに死神がいるからだ。
「や、やめてくれ!頼む!命だけは...!」
「ひとついい事を教えてあげるよ。」
死神が1匹の兎を追い詰める。死神は兎へ最期にほんの少しの情けをかける。それは、なぜ兎は狩られるか。なぜ、死神は生物を殺すか。それを教えてあげること。
「僕はお前達をゴミとしか思っていない。つまり、お前達は僕にとって消すべき存在なんだ。僕の為にも、この世界の為にも、そして...天使の為にも。」
「あっ、おかえりなさいマトリサイド!」
「ただいま、リリー。」
マトリサイドが家へ帰ると、リリーが出迎えてくれる。マトリサイドはまたリリーに林檎をあげ、更には焼いた鶏肉をあげた。
「お肉?」
「ああ、そうだよ。ずっと果物だけだったら流石に飽きるだろうしね。」
「うん、ありがとう!」
「ふふっ、どういたしまして。」
マトリサイドはリリーといる時、常に周りを見ている。これはマトリサイドがこの綺麗な天使を奪われたくないという思いからの行動。外出中では何重にも鍵をかけ、誰も入れない、リリーを出させないような状況を作る。これはリリーへの依存だと言える。マトリサイドは汚れた物以外見えていなかったが、そこに汚れていないリリーが現れた。何年も汚い物しか見ていなかったマトリサイドがリリーに依存するのはもはや運命と言えるのだ。
「じゃあ、おやすみリリー。」
「うん、おやすみなさい。マトリサイド。」
リリーが眠りにつき、マトリサイドは夜の街に出かける。リリーがいる以上、ゴミはなるべく早く処理しなければいけない。それに、夜の方がゴミは処理しやすい。
「おやおや〜?君が、噂のリーパー君かな?」
「ん?ゴミが話しかけないでくれるか?」
マトリサイドの前に身長150センチ程の女が現れる。黒いフードから覗かせるその赤い眼光はその者が弱者ではないことを証明している。
「酷いな〜!私はただ、君に警告を伝えに来ただけだというのに。」
「警告?僕にか?」
「そうだよ。まあ、別に私が何かするわけでも無いんだけどね。」
マトリサイドはリリー以外の存在をゴミとしか思っていないが、なぜかこの女には手を出せなかった。そこら辺のゴミとは比べ物にならないゴミ。上質なゴミだ。
「この街に<スカーレット・ギャザリング>が近づいてる。殺されたくないなら、君も逃げた方がいいよ。」
「<スカーレット・ギャザリング>か、確か殺人集団の...。」
この世界には5つの集団が存在する。その集団は正義を掲げているものもあれば、ただただ殺人を犯すことを目的とするものもある。その中の1つである<スカーレット・ギャザリング>は、ボスである「スカーレット」を筆頭に集まった殺人集団。その勢力は今も拡大中である。
「ただのゴミの集まりだろ。全て処理すればいい話だ。」
「ほう、言うね〜!君みたいなのは嫌いじゃないよ!」
「そろそろ、黙ってもらおうか。」
マトリサイドがナイフを取り出すと、女は慌てた様子で両手を上げた。
「おっと!私は君と争う気は無いんだ!すぐに立ち去るから許しておくれよ〜!」
「なら、早くしろ。」
「うむ、ではさらばだリーパー君。いや、マトリサイド君!」
「...っ!お前!!」
女が去った後、マトリサイドは頭を抱えた。この名前はリリーにしか教えていない。つまり、あの女はリリーと接触したか、会話を盗み聞きしていたということ。もし、リリーがあの女に襲われたら?そんな考えがマトリサイドの頭によぎる。
「ゴミ風情が...!」
夜の街の最も空に近い所、電波塔の頂上から1人の女が街を見下ろす。フードを外し、露になった胸の辺りまで伸びた紫の髪と整った顔。そして、赤い眼光。彼女は人々から「デビル」と呼ばれる存在...
「さてと、あのリーパー君はどう動くかな〜?」
夜の悪魔である。
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