意味のある殺意
読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。
「知らないってどういう事?リリーを攫ったんじゃないの?」
ネイビーからの意外な回答にフィシルは戸惑う。ネイビーはその様子を見て、説明を始める。
「そもそも、この集団はもう人攫いなんてしてねぇんだよ。あいつがボスになってから、方針が変わったんだ。」
「そういえば、新しいボスになった人って誰なの?ネイビー以外に適任がいるとは思えないけど。」
「あいつの名前は「レイジー」。確か、「放浪者」の異名を持ってたな。」
放浪者という異名にアルバは聞き覚えがあった。無法都市にいた頃、人が話していたのを聞いた時に、放浪者という名前が挙がった事がある。
「...はぁ、僕はもう行く。リリーがいないのなら、この都市に用は無い。」
「あっ、待ってアルバ君。私も...。」
フィシルはアルバに向けて歩き出そうとした足を止めた。
「フィシル、別に着いて来なくてもいいぞ。僕は、一人の方が楽だ。」
「私は...。」
「この際はっきり言おう。お前は、邪魔だ。」
アルバは再び歩き出す。アルバが拒絶した事により、フィシルはその場に崩れ落ち、唖然としていた。フィシルを拒絶したアルバの前に、一人の男が立った。
「おっと、そこの兄ちゃんや。ちょっと待ちぃ。気持ちは分かるが、あまりにも不器用すぎやないか?」
「...誰だ、お前。」
謎の男は高身長で細身の弱そうな見た目をしている。男はサングラスをしているが、アルバははっきりと男の視線を感じる。アルバが見つめるその男には隙が無かった。
「俺はレイジー。初めましてやな、リーパー君?」
<アズール・ギャザリング>のボスであるレイジーに案内され、アルバはレイジーの部屋に来た。お世辞にも綺麗とは言えない部屋で、他の集団のボスとは明らかに違う雰囲気を漂わせている。
「おい、僕に何の用だ。僕には時間が無い。」
「まあ座りぃや。俺は別にあんたに危害を加える気も無いんやし。」
アルバとレイジーは向かい合って座り、アルバはレイジーを警戒し、レイジーはアルバを見つめる。
「あんた、女の子守りたいのは分かるけど、あんな言い方は無いんやないか?」
「は?」
「いや、は?やなくて。あの子あんたに気があるみたいやし、あの言い方は傷つくやろ。やから...。」
「待て、いつ僕がフィシルを守りたいだなんて言った?」
全て分かったように話すレイジーを止め、アルバは反論する。アルバが守るのは綺麗な物であって、汚い物では無い。
「あれ?違ったか?おっかしいなぁ、あんたからあの子の匂いがものすご〜くするんやけどな〜!」
「...!お前、あまり調子に乗ってると...!!」
アルバがナイフを取り出そうとした手を、レイジーが止める。凄まじい反射神経と速度。今までこんな事は一度も無かった。
「調子に乗るなね...それは、こっちのセリフやな。」
「...!」
その瞬間、壁を突き破ってアルバが大広間へ飛ばされる。あの細い身体からは想像も出来ない程の力。<アズール・ギャザリング>のボスは伊達では無かった。
「あんた、天使と行動しとったみたいやな。この際やから、一人のゴミとして言わせてもらうで。」
「ちっ、てめぇ!!」
「自分まで綺麗になったと思い込んでんじゃねぇぞ?自分がゴミって事をちゃんと自覚しろ。俺は、人を見下しとる奴が一番嫌いなんや。」
レイジーの静かな怒りは、アルバに恐怖を感じさせた。そして、この男の言っている事は正しかった。アルバは、リリーの近くにいる事で、自分まで綺麗になったと勘違いしていた。
「なぁ、リーパー君よ。同じゴミ同士、仲良くようや。」
サングラスから覗く赤い眼光を、アルバは見た事があった。あの都市から始めた旅の中、いつも自分を見つめていた目だ。
「お前、まさかフィシルの...。」
「さっ、あの子のとこ行こうか。言っとくけど、またあの子を拒絶したら殺すで?」
男の言葉と立ち姿には、明確な殺意が込められていた。だが、その殺意の中には優しさも込められていた。
今回のお話、楽しんでいただけたでしょうか?ぜひ、応援よろしくお願いいたします!




