静かな夜
読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。
「...まだ着かないのか?」
「マトリサイド君さ、さっきから言ってるよね?あと半日はかかるって。」
マトリサイド達は犯罪都市<イビル>に向かっている。だが、現在地から<イビル>には約半日はかかり、今は深夜。そろそろ休んだ方がいい。
「ん?あれは...。」
「おっ、小さな町だね。あそこで休んだ方がいいんじゃない?」
フィシルやリリーはもう暗いし休んだ方がいいと思っているが、マトリサイドは一刻も早く自分の妹を見つけ出したい。だが、都市に着いた時にいきなり戦闘が始まるかもしれないし、マトリサイドにも休んだ方がいいという考えが浮かんだ。
「分かった、あそこで休もう。」
町は賑わっているわけでもなく、暗いわけでもない。皆、普通に過ごしている。小さな町とはいえ、ここは都市に近い場所。ある程度の設備は整っている。
「リリーは...もう寝たか。」
「うん、結構歩いて来たから疲れちゃったんだろうね。」
「それにしても広いな、この部屋。」
「そりゃあ私がいい所選んだもん。」
すでに辺りは暗くなっており、町も静まり返っている。
「じゃあ、僕はもう寝るから。」
「うん、じゃあ私も寝ようかな。」
フィシルはマトリサイドの後ろをついていく。マトリサイドが向かっているのは、二つある寝室の内の一つだ。
「おい、何でついて来るんだ?」
「だってシングルの方はリリーが使っちゃってるでしょ?でも、こっちはダブルだし!」
「...まさか、お前はこれが目的で?」
マトリサイドはフィシルの横を通り、ソファへ向かう。
「えっ!?ちょっと!この状況なら一緒に寝るでしょ!?」
「ありえない。何で僕がお前なんかと一緒に寝なきゃならないんだ?」
「それは...だって...。」
もじもじするフィシルを横目に、マトリサイドはソファに寝転ぶ。そして、そのまま目をゆっくり閉じ始める。
「好きだから。」
「...!冗談だろ?」
「ふふっ、この状況で私が嘘をつくと思ってるの?私は本気だよ、マトリサイド君。」
フィシルは真っ直ぐマトリサイドを見つめる。そんなフィシルから目を逸らし、マトリサイドは目を閉じる。
「言ったはずだ、僕にとってお前はただの処理困難...。」
マトリサイドは水が床に落ちるような微かな音を聞き取り、とっさにフィシルの方を向いた。マトリサイドの目に映る彼女は、目から涙を零していた。
「そう...だよね。うん、ごめんね。マトリサイド君は、妹さんの事で精一杯で、私の事も好きなわけないのに...。」
「...おい。」
「じゃあ、ゆっくり休んでね。この事は綺麗さっぱり忘れて、また明日から...。」
「ちっ、仕方ねぇな。」
自分の手で涙を拭うフィシルの腕を掴み、マトリサイドは寝室へと歩き出す。そしてフィシルをベッドに寝かせ、マトリサイドはフィシルの隣に寝転ぶ。
「マトリサイド君?なんで...。」
「黙れ、何も喋るな。」
マトリサイドは黙って目を閉じる。月明かりが差す薄暗い部屋の中で、フィシルはマトリサイドの横顔を眺めた。
「ねぇ、マトリサイド君。」
「...おい、喋るなって言っただろ。」
「本当の名前、教えてくれない?」
マトリサイドは少し間を置いた後、ゆっくり口を開いた。
「アルバだ。僕は、夜明けに生まれたんだ。」
「アルバ...うん、いい名前。」
フィシルはアルバの背中に抱き着く。アルバは抵抗をする様子もなく、逆にフィシルの方へ向いた。
「...?マトリサイド君?」
アルバは静かにフィシルの口を自分の唇で塞ぐ。そして、フィシルの身体を強く抱き締め、しばらくして唇を離した。
「アルバだ。」
「えっ、えっと...。」
「ははっ、らしくないな。...なあ、フィシル。」
アルバはフィシルの身体に跨り、顔を近付ける。
「えっ、アルバ君本気?いいの?私なんかと。」
「ふっ、ゴミ同士だから問題ないだろ?」
「...!ふふっ、そうだね。」
薄暗い部屋の中、アルバとフィシルは他の事なんて全て忘れて、互いの身体を重ねた。
今回のお話、楽しんでいただけたでしょうか?ぜひ、応援よろしくお願いいたします!




