表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/56

迷宮最下層

 






 親方!空からリザードマンが!



 突然降ってきたリザードマンから服を巻き上げた俺は、せっせと身につけていく。

 白いワイシャツに、柔らかいブラウンのスラックス、どっちもさすがにダボダボだが、十分清潔だし裸よりマシだ。シャツの袖とズボンの裾をくるくると折り曲げる。


 ウエストをどうしようか迷っていると、リザードマンが紐を貸してくれた。

 気が利く。多分良い人だな。

 青い鱗のゴツい身体に、イカつい恐竜顔だけど、金色の瞳はどことなく優しそうだ。

 服装も清潔感あるし、紳士って感じだな!


「ええ...と、服、ありがとうございました、えと...」

「ビリウスです」

「ありがとうございます、ビリウスさん...あ俺、マサキって言います」

「どういたしまして、マサキさん」


 ビリウスと名乗るリザードマンが手を差し出す。

 おお、シェイクハンドか。

 この世界に来て、こんな社交的な人は初めてだ。


「あっ呼び捨てで大丈夫です」

「ではマサキと。...早速で悪いのですが分かる範囲で現況を教えて頂けますか?」

「あっ、はい」


 各々、岩に腰掛け、話を始める。

 今までの経緯全てを話すのはちょっと面倒なので、ここで修行をしていて師匠とはぐれた事にした。


「それで、迷っていた所にビリウスさんが落ちてきて...咄嗟に受け止めたんです」


 まあ、詳しくは中層から声が聞こえて駆けつけた訳だが、何となくぼかして置く。


「では、マサキは命の恩人だったのですね。助けて頂き、感謝します」

「いやぁ、そんな大層なものでは...」


 何かお礼とか言われたの久々すぎて、どうして良いかわかんない。こっちに来てから、ワガママなおっさん共に振り回されっぱなしだったからな...。


「そういえば、ここがどこか分かりますか?」


 え?...ああ!肝心の現在地を言ってませんでした。


「ここはメロフィエーモ大迷宮の最下層です」


 いやはや!俺って意外とうっかりさん!

 位置情報を伝えそびれるなんて!


 ...アレ?何かめっちゃポカンとしてる...。

 俺、変なこと言ったか?


「さ、最下層...?」

「はい。ここ、最下層。」


 一拍置いて、


「ええええええええええええええええ!!」


 ビリウスは雄叫びをあげた。





 ひとしきり驚いて、少し冷静になったビリウスは、今度は状況を整理するかのごとく黙り込んでしまった。


 ......もしかして、最下層って常識的にヤバい場所なのか?

 確かに、俺以外の人間を見たこと無いけど...


 え、じゃあ平然とここにいる俺って、相当怪しい奴なんじゃ...。


 いつの間にか訝しげにこちらを見ていたビリウスにハッとして、質問責めを食らう前にと立ち上がる。


「それじゃ、そろそろ行きましょうか」

「え...?」


 驚いて岩からずり落ちていたビリウスを起こし、さかさか歩き出す。


「あ、あの!...どこへ行かれるんですか?」

「地上です」

「え!道がわかるんですか!?」

「はあ、ある程度は」


 ビリウスが落ちて来た穴からジャンプで登るのが早いのだが、何かまた色々面倒な事になりそうだし、大人しく一般的なルートを登ることにする。


「こっちです」

「そっ、そんな不用意に進んで大丈夫なんですか?」

「え?ああ、俺が...」


 俺が威圧してれば大抵の魔物は襲って来ないので!...って言うと多分またアレなので。


「アサヒ」


 さっきから何故か完全に気配を消している、真っ白な狼を呼ぶ。

 どうしたんだ?何か拗ねてる?


 するりと俺の影から現れたデカい狼は、嬉しそうに俺に擦り寄ってくる。愛いヤツめ...。


 ちなみにどれくらいデカいかと言うと、普通に立ってて二メートル近くあるってな具合。

 出会った時は柴犬くらいの大きさだったのに、大きくなったなあ。


 柔らかな毛並みにそって、頬を撫でる。


「この子が警戒しててくれれば、ほとんどの魔物は襲って来ないので」

「なるほど...確かに、その狼にはそうそう手が出せないでしょうね」

「ええ。強い子ですからね」


 というわけでよろしくな!と、アサヒの透き通る青い瞳を見つめる。アサヒは尻尾をブンブン振って頷いた。


「アサヒくんは、なんて種族なんですか?」

「それが...俺も知らなくて」


 アホ師匠にも聞いてみたが、知らんと言っていた。

 でもまあ、あのドラゴン...適当だからな。


「私も初めて見る種族です...牙狼族にしては大きいですし...不思議な子ですね」


 動物じゃないんだろうけど、魔物ともちょっと違うし...実は性別すらよく分からない。

 まあ、考えてもどうせ分からないので気にしない事にしている。

 可愛いからおっけー!


「不思議と言えば...マサキは人間なのに、とても龍語がお上手ですね」

「えっ!あ、ああ...師匠が、その、龍語をよく喋ってまして...小さい頃から、一緒だったので...!」


 ちょっとシドモドしながらも、なんとか答える。


「そうだったんですね。ではお師匠はもしかしてリザードマンですか?」

「あっ、はい!そんな感じです!」


 ドラゴンです!とは言えんしな。

 よし!この話題はこれ以上聞かれるとまずい!墓穴掘りそう!

 という訳で別の話題にゴー!


「...そういえば!ビリウスさんは冒険者なんですか?」

「はい、そうですよ。...というかここには冒険者以外ほとんど来ませんね」


 ビリウスが苦笑した。

 ...あのおっさん、常識とか全然教えてくれなかったもんな。


「あはは、小さい頃から修行に明け暮れていたせいか...どうも常識がなくて...」

「いえ、失礼しました。何か、目指すものがあるのですか...?」


 目指すもの...。

 その言葉に、俺はグッと拳を握りしめる。


「はい...どうしても超えたい奴がいて...」



 ......そう。俺は誓ったのだ。


 必ずアイツを超えて...大切なものを取り戻す。


 そのためなら、どんなに辛い試練だって乗り越えてみせる...。





 あれはまだ、アサヒに出会う前だったな......






 あの日俺は、嫌な予感がして、地底湖を覗いたのだ。






誤字脱字、教えていただければありがたいです。

素人文ですので、意味違いや不適切な表現等あるかもしれません。

その際もこっそり教えていただければ^^

できる限り対応致します!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://twitter.com/tamaki_Showsets
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ