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都を護る光







 さて始まりました、グレンアンド人魚軍、バーサス、エンペラースクイット。

 人魚軍が接近戦で遊撃と足止めをして、長距離からグレンが弓で攻撃するシンプルな作戦のようです。

 解説のアサヒさん、この布陣についてどう思われますか?


 クゥン...。


 なるほど、突然のトラブルへの対応として、シンプルな作戦は悪くないが、敵との戦力差に不安があると。


 フス、フスン。


 やはりここは、私たちが出て、加勢するべきだと、そういう事ですね。


「やかましい」


 納得が行かない俺は、実況の真似事をしながら、チクチクと抗議を続けていた。

 相手は伝説級に化け物だぞ?グレンだけじゃ心許ないって!

 何より、またいいとこ全部持ってかれては、面白くない。

 ギリギリ目視できるくらいの場所で、既に戦いが始まっている。

 エンペラースクイットは、キングスクイットが子供に見えるくらいデカい。

 おそらく、体長が二百メートル近くある。身体の大きさだけなら、師匠よりもデカい。

 長く、力強い脚が、ムチのようにしなり、人魚達に襲いかかる。

 脚が当たった岩はいとも容易く粉砕されている。

 さらに、脚が少しかすっただけで、ビクビクと痙攣して動けなくなってしまっている人魚がいた。

 即効性の猛毒でも持っているのか。


 ーまずいなー


 先生がそう呟いた時、グレンが放った矢がイカの眉間に当たった。

 しかし、かなり皮膚が硬いらしく、傷は浅い。

 それでも驚いたイカが、脚をバタつかせ、もがくように暴れだした。

 瞬間、イカの近くにいた人魚達が痙攣して、気を失ってしまった。

 もちろん、荒れ狂うイカの脚に当たったわけではない。


 ーやつの魔力は、雷の属性だー


 コレはかなり厄介だな。今のところ意識的に魔術を使っている様子はないが、水の中で電気なんて最悪だ。


「くっ...!いったいどうしたというのだ!?」


 見張りに残されていた男が、焦った声を出した。加勢に行けないのが歯がゆいのだろう。

 先程の放電で、半数程の人魚がやられた。

 グレンも、何度か矢をイカに打ち込んでいるが、致命傷には至らない。

 数を失った人魚達は、イカを足止めしておくことができなくなり、必死の抗戦も虚しく、都のすぐ近くまで追いやられた。


「クソッ...!このままでは都が...!」


 しかし、長に忠実な戦士の男は、任された危険人物の監視を放り出すことができずにいた。


「そんなに行きたいなら、俺の事なんてほっといて、あっちに加勢すればいいじゃん」

「黙れ人間!」


 長といい、なんでそんなに頑固なんかね...。


「よし、じゃあこうしよう」


 言うや否や、俺は檻の格子を両手に一本ずつ握って、バキリと折った。

 本当は荒っぽい真似はしたくなかったが、仕方ない。


「なっ...!」

「逃げ出した囚人を追うのも、見張りの仕事だろう?」


 するりと見張りの横を通り抜け、外に出る。

 そのまま、まずは祭壇へと向かって泳いだ。


「待て!人間!」


 あっけに取られていた人魚が、すぐさま追いかけてくる。

 人魚の泳ぎは速い。戦士と言うだけあって、ユラよりもかなり速く、ぐんぐん差が縮まっていく。

 くっそ!めちゃくちゃ速え!

 すぐさま脚を掴まれる。


「人魚に泳ぎで勝てると思うな」

「そっちこそ、力で俺に勝てると思うな」


 ブン!と思いっきり脚を振って、人魚を投げ飛ばした。


「ごめんね!」


 泳ぎで勝てない以上、ちょっと抵抗する必要が出てくる。それが嫌だったんだけど、今は一刻を争う。

 まあ、水中だし、大怪我はしないでしょ。

 見張りがふっ飛んでいる間に、祭壇に着く。

 亜空間から、さっきの龍霊石を出した。


 ーここに置けばいいんだな?ー

 ーああ、頼むー


 石を近づけると、祭壇に刻まれた文字が青く光った。


「待て!貴様何をするつもり...」

「黙って見てろ!」


 再び追ってきた見張りの男が、腕を掴んで邪魔してくる。

 それを一喝して、強引に窪みに石を置く。

 刹那、祭壇が眩い光を放った。

 縦横無尽に放たれた光線は、しばらくまっすぐ進むと、透明の膜へと変化する。

 点々とした光の線が広がってくっつき、半球のような形になって、都全体を覆った。


「これは...」


 見張りの男が結界を見上げて、ポカンとしていると、本来の大きさに戻ったアサヒが、負傷した人魚達を咥えて祭壇までやって来た。

 そっと、人魚達を地面に寝かせる。


「さすがアサヒ。もう他に動けない人魚はいない?」


 こく、と頷くアサヒの額をひと撫でする。

 先程、俺が牢を飛び出した時、アサヒは俺にはついて来ず、イカの電撃で動けなくなっていた人魚達を救助しに行ってくれたのだ。

 自分で考えて一番やって欲しいことをしてくれるなんて!なんて賢い!偉い!

 我慢できずに結局わしゃわしゃやっていると、都に向かって、イカの巨大な脚が振り下ろされた。

 バシイィィッ!と結界が光ってそれを弾く。

 おお、マジで強力だな。


「コレなら、ここは安全だな」


 まあ、このままあのイカは放置すると言う手もあるが...。

 驚愕に固まってしまっている見張りをおいて、結界の外へと泳ぐ。

 やっぱりここは、倒しておいた方が、スッキリするだろう。正直ちょっと個人的に鬱憤も溜まっている。

 まだ、都の外で応戦していた人魚達を引っ張って、結界の中に入れた。


「何を...!」

「なぜ貴様がここにいる!」


 結界の中に押し込もうとすると、かなり抵抗された。

 めんどくさいので、ぽぽいっと投げ込む。


「電撃耐性もないやつは邪魔だ」


 これ以上怪我人を増やしてもいいことは無い。

 イカは、常に微弱な電気を垂れ流しているようで、近くにいると、肌がピリピリした。

 コレはちょっとパンピーには辛いっしょ。

 俺はエンペラースクイットへと向き直り、手のひらに拳を叩きつける。


「さて、いっちょぶっ倒しますか」


 そして今度こそ、俺が美女にチヤホヤされてやる!

 固い決意を胸に、巨大オバケイカ、バーサス、美少女という、B級映画のような戦いが幕を開けた。






誤字脱字、教えていただければありがたいです。

素人文ですので、意味違いや不適切な表現等あるかもしれません。

その際もこっそり教えていただければ^^

できる限り対応致します!

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