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エールと恋バナ

本日は、二話更新予定です。

昼12時頃にもう一話投稿致しますので、お見逃しなく!







 ヴエルニットは、今日も活気に溢れている。

 労働を楽しむ人々の声と、潮風が香る爽やかな港町だ。

 だと言うのに。


「騒がしい場所だな」


 こちらの根暗な男姫と来たら...。

 こんな良いところを、その一言で終わらせるのはさすがすぎる。

 むっつりとしているグレンに、アサヒと呆れの溜め息を漏らす。


「さっさと行きますよ」


 とにかく仕事だと切り替えて、さっさとギルドへ歩く。迷子になりたくないグレンは、黙ってついてきた。

 港の方へ向かって進んでいると、ギルドマークを掲げた比較的大きい建物が見えてくる。

 ポート・ラビリンスだ。


「コンニチワー」


 スイングドアを開けて、カウンターに声をかけた。


「いらっしゃいませ」


 奥から、料理の皿を持ったエールが、いい笑顔で挨拶してくれた。


「おや、お前さんはあの時の」


 カウンターで、冒険者への対応を終えたラージも、こちらに目を向けた。

 ぺこりと会釈する。


「今日は、魔法薬の配達ニ来マシタ」

「ホッホ、そうかそうか。それじゃ、倉庫まで頼むかの。エール、案内してあげなさい」

「はい。マスター」

「こらっ!じいじじゃろっ」


 このやり取りも変わらないようだ。

 料理のサーブを終えたエールが、こちらへやってくる。


「いいですか?ここでじっとしててください。じっとですよ」

「ああ」

「ホント、次迷子になっても、絶対探しませんからね」

「しつこいな!わかっている」

「アサヒ、見張っててね」


 とにかく動くなと言いおいて、エールについて行く。それでもあまり信用出来ないので、アサヒに見張っててもらうことにした。


「冒険者登録は、もう済んだのですか?」

「ハイ。無事登録できマシタ」

「ふふ、それは良かったです」


 ああ〜、久しぶりのエールちゃん。可憐だな〜。ふふ、だって!妖精の微笑みかな?

 俺の周りには普通の可愛い女の子は、意外と少ない。いや、可愛いはクリアしてるんだけど、ちょっと普通じゃない。

 美人なのに、不思議とホッとするような彼女には、正直癒される。

 すると、エールが急に、モジモジしだした。


「あの...」


 少し顔を赤らめて、上目遣いで見つめてくる。

 な、なに?どうしよう!ドキドキする!!


「お連れの男性は、もしかして...恋人ですか?」

「......は?」

「なんだか、とっても親しそうだったので」


 なんだか、期待に満ちたような、キラキラの瞳で見つめられる。...え?


「...イエ、チガイマス」

「ええー!そうなんですか?」


 何故かエールは、ちょっとガッカリしたような顔をした。


「お二人とも、美男美女ですっごくお似合いだと思ったのに...」

「......イエ、森で行き倒れていたところを助けただけデス」

「そ、それで、一目惚れしちゃったとか...!」

「イヤ、ナイデス」


 なぜ、そうも俺とグレンをくっつけたがる。俺はもし女だったとしても、あんな地獄みたいな男姫は絶対に選ばないね!いや、今女だけど。


「アレはエールさんが夢見るようか奴じゃアリマセンヨ?ただのデカい荷物デス」

「えぇ〜!そんなぁ...」

「ソレにサッキあの顔が」

「顔...?」


 先程道中で見た、グレンの顔面崩壊を思い出す。


「フッ!アハハハハ!」


 我慢出来ずに吹き出してしまった。しばらくまたツボに入って爆笑する。


「ど、どうしたんですか?」

「いや、さっきのアイツの顔...思いダシテ...ハハハハ!」

「!!」


 訳が分からないだろうエールには悪いとおもいながら、しばらく笑いが止められずにいると、エールがワナワナと震えた。


「エールさん...?」

「やっぱり...そうなんですね」

「え?」


 ...どうしよう、機嫌そこねちゃったかな?


「マサキさんは素直になれないだけで、本当はあの方が大好きなのですね...!」

「......は」


 エールがイキイキして語りだす。


「森で助けた彼を放っておけないマサキさん、命の恩人あるマサキさんに彼も愛を徐々に抱くようになって...!ああ、すっごくロマンチックです...!」


 いや、すごい妄想力だな。

 実際には、一度助けたにも関わらず、再び森で遭難し、図々しくも、楽しみにしていたシマのパンまで食べ、アサヒに無礼態度をとって、女子(おれ)に姫抱きにされたあげく、唯一の取り柄である容姿でさえ、風圧でビロンビロンになってしまったのだ。

 ここまでで、彼に少しでも惚れる要素があっただろうか。いや、ない。


「いや、アノ、ホントにそういうのデハ...」

「私、こうして誰かと恋バナするのが大好きなんです...」

「え」

「おじいちゃんは、私の事を大切にしてくれるけど、何故か恋愛についてはすっごく過保護で......女友達にも私には、その手の話をするなって言いつけているみたいで...なかなかできなくて」

「そ、そーなんデスカ」


 じいさん...エールちゃんが可愛いのはわかるが......どんだけ嫁にやりたくないんだ。

 エールは少ししんみりと俯いた。

 うー、そんな事言われたら、本当の事なんかハッキリ言えないじゃないか。こんないたいけな少女の夢を壊すなんて......でも、グレンと好き合ってると思われるのはマジで嫌だ!


「.........ゴメンナサイ...本当にグレンとはなんでもないんです...」

「そう、ですか...」


 真剣に告げると、エールはしょんぼりと納得した。

 俺は、ハァー、と息を吐く。


「まだ内緒なのデスが...実は、もう俺には...こ、婚約者がいるんデス」

「えっ!」


 途端にエールが、パッと顔をあげる。

 正直これも苦肉の策だが、ゼノンとグレンなら、まだゼノンのほんの僅かにマシだ。

 いたいけな少女の夢を壊さないためとはいえ、自分で男と付き合っていると吹聴するのはかなりメンタルを削られる。


「その話、ぜひ詳しく聞かせてください!」


 いいんだ、俺のメンタルなんか...。

 可愛い女の子の、夢と笑顔を守れるなら、それで...。




 結局、婚約者について、根掘り葉掘り聞かれ、なんとか、架空の馴れ初めやら、二人の思い出やらをひねり出して答えた。

 おかげでもうゲッソリだ。


「遅い」


 しかし、戻ってみればどうだ?

 ふてぶてしく仁王立ちするグレンは、若い女の子達にキャッキャと囲まれている。


「ねえ、お兄さん。ひとりなの?」

「すっごく素敵ね」

「これ、お食べよ」

「いい店知ってるんだ。今夜そこで食事しようよ」

「なんなら、アタシん家に来なよ」


 色々と貢がれてくる食べ物を、ちゃっかり食べている。

 こ、こいつ...!俺が必死で作り話に脳をブン回してたってのに...!なんだそのハーレム!

 正直めちゃくちゃ羨ましくて、目が血走る。


「やかましい女共だ。おい、終わったならさっさと行くぞ」


 グレンはそういうと女達をかき分けて、さっさと出ていこうとするので、慌てて止めた。


「おい、前歩くなよ。あんた道わかんねーだろ?」

「......ならばさっさと歩け」


 ッカーッ!この人なんでこんな偉そうなんだろうね??面倒見てやってんのはこっちだぞ?

 腹いせに首根っこを掴んで、引きずってやる。


「ソレジャ、失礼しマス」

「おぉ、ご苦労さん」

「また、来てください!」

「ハイ」


 ラージとエールと、にこやかに別れの挨拶を交わして、ギルドを出る。


「おっ、おい!貴様、はなさんか!」

「アサヒー、お刺身でも食べてこっか」


 俺とアサヒは、久しぶりに新鮮な刺身を堪能すべく、ビリウスに教えてもらった港の魚屋に向けて、意気揚々と歩き出した。


「おい!はなせ!このゴリラ女!!」


 へー、ゴリラってこっちでもそういう風に使われるんだ。






誤字脱字、教えていただければありがたいです。

素人文ですので、意味違いや不適切な表現等あるかもしれません。

その際もこっそり教えていただければ^^

できる限り対応致します!

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