装備屋
宿屋から出た俺は、ビリウス達に連れられて、防具や武器等を売っている装備屋に向かった。術式を付与した服なども売っているらしく、そういった品の方が丈夫で長持ちするため、冒険者には人気なんだとか。
俺もデザインより機能重視なので、その方が助かる。
たまに師匠がフリフリのワンピースを買って来て、俺に無理矢理着せてきたが、俺は正直それを着るくらいなら全裸の方がマシだったので、わざとデーモンアントの酸を浴びに行ったものだ。
あのおっさん、ちょっと気持ち悪いとこあるんだよな。
...できるだけシンプルな物がいいな。
ビリウス達のオススメだという装備屋は、表通りから少し外れたところにあって、思ったよりこじんまりとしていた。
小さい窓のはまった木製のドアの横に、剣のマークの看板がかけられていなければ、民家だという思うかもしれない。
「アサヒは、ここでちょっと待っててね」
くぅんと寂しそうな声を出すアサヒを、ぎゅっと抱きしめて行ってきますをする。
可愛いすぎてそろそろ赤ちゃん言葉使いそう。
ドアを開けると、カランコロンとベルが鳴った。
あ...これ、懐かしの喫茶店の音だ...。
「いらっしゃい」
白髪をお団子に纏めた優しそうなおばあちゃんが、奥のカウンターから声をかけてくれる。
アア!駄菓子屋に居そうなおばあちゃん!!
オレンジ色のランプの光に照らされた店内には、服や防具が雑多に置かれている。
どこに何があるか一目で分かりにくいが、それが逆にわくわくする。
「何かあったら、よんでくださいね」
ああー!理想的ー!
俺みたいなタイプはススメられると断れないので、こんな風に放置してくれる店はありがたい。
入って数分で俺はすっかりこの店が気に入ってしまった。
「しばらく、自由に見てまわりましょうか」
「は、はい」
という訳で自由を手に入れた俺は、店内を歩き回る。
下はパンツで、全体的に露出が少ないものを選びたい。
店内には色とりどりの服や装備品が所狭しとかけられていて、とても楽しい。
どれも珍しいデザインで、なんかコスプレグッズみたいだ。
しかし、
「うーん、どんなのがいいんだ?」
「おねえさんが選んであげよっか?」
急に声をかけられてびっくりする。酒臭い人が近くにいるなあ、とは思っていたが、まさか絡まれるとは。しかもこの人龍語話者か。
「んふふー!お嬢さん、べっぴんだねー」
「へ?」
急に後ろから抱きつかれる。
アッ、せっ背中に柔らかい感触がッ...!
これは、もしや、おっおぱ、おぱおぱっ。
「ふぎゃっ」
「あっはー!変な声ー!」
抱きつかれたまま、無遠慮に身体をまさぐられ、びっくりして声が出てしまった。
ゲラゲラと笑いながら、胸を揉んだり、尻を揉んだり...。
なにこの人!すっごいセクハラ!!背中に胸が当たってなかったら、すぐさまはっ倒していただろう。
まあ、今回はこの幸せな感触に免じて許すけどね!でもそろそろ離れようね!
サッと腕から抜け出す。酒臭い女は、掴まるものがなくなって、その場で少しバランスをくずす。
「おおー!やるねぇ、君」
振り返ると、そにいたのはは、紫色のボサボサの髪を適当にひとつに纏め、ピッタリとした黒のパンツに、大きく胸元をはだけさせた白いブラウスを着た女だった。
しかしその額からは、二本の黒い角が生えている。
オーガか、鬼人か。いや、そんな事より。
で、デカい!!
何がとは言わないが、とにかくデカい!!
メロンが二個ついとる。
あまりの大きさに釘付けになってしまう。
「お嬢さーん!これなんかどう?」
そう言って酔っ払いの女が持ってきたのは、とにかく面積の少ない、布きれみたいな服だった。
いや待って、それホントに服?ほぼ紐じゃん。
「や、ソレはカンベンして欲しいです...」
「なーんだー、そんな格好してるから、こういうのが好きなのかと思った」
「コレはッ、事故っていうか…」
確かに、今の自分も結構な格好だが。
「ははは!ジョーダン、ジョーダン!可愛いなあー」
この人、マイペースすぎる。
「んで、何か要望とかないの?」
「え...?えーと、炎に耐性あると、嬉しいです」
って、何この人に、素直に答えちゃってんだ。こんな酔っ払いに言っても仕方ないのに。
「うーん。ならこのシリーズがいいんじゃない?」
そう言ってガサゴソと持って来たのは、真っ白なローブ。所々細い金のラインが入って、上品な印象だ。裏地はグリーン系の淡いグレーで、襟や袖など、折り返すと見えるようになっている。
他にも同じ色あいのシャツやパンツ等があるらしい。
うーん、とても綺麗ではあるんだが...
「あの...白って、汚れ目立ちませんか?」
「この服はねぇ、綿蜘蛛の糸と、フレイモスの繭で織った布で作られてて、汚れやシワがつきにくいし、炎への耐性もあるんだよ」
え、そんな優れものなのかこれ。
「ついでに、裏地にリカバリーの術式が付与されてるから、ちょっとした破損も自己修復できるイイコなんだー」
「買います!」
即決だった。
もしかしたら、このお姉さんは嘘をついているかもしれないが、どっちにしろ俺に装備の善し悪しは分からない。
この人が俺に嘘つくメリットも特にないだろうし、騙されたからって死にはしない。
このシリーズは露出もほとんどない。性能も良いって言ってくれてるし、もうこれに決めてしまおう。
俺はお姉さんに言われるがまま、同じシリーズの服一式を購入した。
会計で金貨二十枚があっという間飛んでしまったのは、さすがにびっくりしたが、そう苦労せずに得たお金だったので、あまり気にしない事にする。
まあ、これから長く使うものだからね。必要経費というやつだ。
そのまま着ていくことができると言うので、フィッティングルームを貸してもらって着替えた。
シャツもパンツも伸縮性のある素材で、身体にぴったりフィットする。付属のベルトは何の意味があるのか分からないが、とりあえず見本通りに付けておく。
ローブを羽織れば、身体のラインの隠せて完全防備だ。
最後に髪紐で、おろしっぱなしだった髪を、ひとつに纏める。首もとをスッキリさせたかったのでポニーテールだ。
切ってもいいのだが、メンテナンスが面倒だからな。
鏡を見て確認する。
うん!結構良い感じじゃないか?
フィッティングルームから出て、あのお姉さんを探したが、もう店内にはいなかった。
お礼、言いたかったんだけどな...。
「マサキ?」
声をかけられて振り向くと、ビリウスとライがいた。
「マサキ!すっごく良いじゃないか!可憐な感じが君にピッタリだ!」
「ええ、良く似合ってますね」
二人から褒められて、アワアワする。
可憐はちょっと微妙だが、こんな素直に褒められたの久しぶりで混乱する。
俺は若干逃げ気味に店を出た。
店の外で待っていた、アサヒと合流する。
「あ。白、アサヒとおそろいだね」
アサヒは嬉しそうに尻尾をブンブン振った。
愛い愛い。
カランコロンとビリウス達も出てきて、表通りへとまた歩き出す。
「晩ご飯でも食べに行きましょうか」
「せっかくだし、屋台で食べ歩きでもしようか」
「さ、賛成デス!」
屋台と食べ歩きというワードにワクワクが止まらない。なんかお祭りみたいじゃないか!
何食べようかな!
腹が減ることはないが、食べる喜びを知っていれば食欲は湧いてくる。
俺達は、はやく食べ物にありつきたくて、足を急がせた。
誤字脱字、教えていただければありがたいです。
素人文ですので、意味違いや不適切な表現等あるかもしれません。
その際もこっそり教えていただければ^^
できる限り対応致します!