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外の世界へ

 



 



 ビリウスと地上目指し始めて、はや数時間。

 最初は若干の警戒をビリウスから感じ、ちょっと気まずい思いをしていたのだが、通り道に散らばる珍しい素材の山に、素材採取を生業としているビリウスはどんどん緩んでいった。表情も、緊張も。

 今も淡い緑色に光るビー玉台の丸い石を掲げて早口で話しかけてくる。


「みてください!これは蛍鹿(ほたるじか)のフンです!いつもは白い石のようですが暗闇で光るんです!この淡い光がなんとも神秘的で、ああ!蛍鹿というのは暗い洞窟などに生息すると言われる珍獣で、目や角が蛍のように発光する事からそう呼ばれてるんですよ!魔素を多く含む砂や地下水を好んで食べるので、なかなか条件に合う住処がなく、とても数が少ないんです!こんなにたくさんフンが落ちていると言うことはかなりの...」


 こ、これがオタク特有の早口というやつか!

 勢いが凄すぎてほとんど何言ってるか入ってる来ないんだけど、要するに、それう○こってことだよね?しこたま鞄に詰め込んでるけど、それってう○こなんだよね?


「魔素を含んでいて、マジックアイテムに使われたり、装飾品としても価値が高いですね。この品質なら、一粒金貨三枚くらいにはなるでしょうね」


 よっしゃあ!採取じゃあああ!!

 そこら辺に山のように散らばっている鹿のフンを、鷲掴んで亜空間にどんどん放り込んでいく。


「!マサキは空間術が使えるのですか?」

「はい。あ、そうだ、ビリウスさんと一緒に落ちて来た蛇も回収してありますよ」


 空間術は師匠に教わった便利魔法のひとつだ。今はちょっと訳あって使える魔力に制限があるが、それでも学校の体育館くらいの体積なら収納できる。


「え、エピメタロスィバジリスク入ったんですか...!?」


 ビリウスが大げさに驚く。

 そうそう、そのやたら長い名前の蛇。


「え、はい」

「すごい!空間術は採取家の憧れですから」

「確かに、食料とかの鮮度も保てるし便利ですよね」

「えっ」

「え?」


 ポカンと見つめられる。

 え、なんか変なこと言った?やばいぞ、俺マジで常識ないからな...。


「時間まで...そのレベルの空間術を使う方に初めて会いました。その技術があれば宮廷魔術師にだってなれますよ...」


 一気に汗が吹き出る。コレそんなやばいヤツだったのか。師匠が当たり前に使うし、教えてくるから普通なのかと...。

 いや、そもそもあの師匠は普通じゃないんだから、魔術を使う時はもっと気をつけた方がいいかもな。

 うん、一旦空間術以外の魔術は封印しよう。


「ははっ、得意なんです」


 虚ろな目で何とか答えて、採取を再開した。

 その後も途中で、ビリウスの目に止まった素材を採取しつつ地上を目指す。

 今までずっとこの迷宮にいたが、修行してばかりで鉱石や植物なんてそこまで意識したことがなかった。

 案外良いもんだな、素材採取ってのも。地球には無い不思議で珍しい物ばかりだ。

 綺麗な上に、お金にもなる。

 それに、ちょっとコレクター精神をくすぐられる。

 ビリウスは素材に対して造詣が深いようだし、また色々教わるのも面白そうだ。


「あ、ここから先は、素早く通らないと危ないので、アサヒの背中に乗ってください」

「えっアサヒくんの...?」


 若干引きつった顔でビリウスが聞き返してくる。アサヒの事をかなり警戒しているみたいだ。

 アサヒは俺の影に潜んで知らん顔をしている。あまり乗り気じゃないんだな...。


「アサヒちゃん!お願いね!」


 わしゃわしゃと撫でてお願いすると、尻尾をブンブン振りながら地面に伏せてくれる。


「大丈夫!アサヒも乗って良いって言ってます」

「そうですか...?じゃあ、お邪魔します...」


 やや不安そうにビリウスが跨るとアサヒは立ち上がった。

 ここからはデーモンアントの巣を突っ切る。デーモンアントはここ一帯に大きな巣を張っていて、中層入口付近までショートカット出来る道があるのだ。

 しかし、アイツらは侵入者を見境無く襲うため、攻撃を受ける前に通り過ぎるのが得策だ。

 中層を出てしまえば奴らは追いかけてこない。とにかく縄張り意識が強いのだ。


「じゃあ、飛ばすのでしっかり掴まって。舌を噛まないように」

「は、はい。あの...マサキは乗らないのですか?」

「その方が早いので」

「え?」


 マサキは走り出した。ビリウスが飛ばされないギリギリの速度で、蟻の巣を駆け抜けて行く。後ろからはアサヒが離れずに付いてくる。


「ハッ...ハヤスギッ」


 ビリウスはアサヒに必死にしがみついて、目も開けられずにいた。

 何年も迷宮にこもっていたため、迷宮中が庭みたいなものだ。入り組んだデーモンアントの巣でも迷う事はない。


 中層まであと一息のところで俺とアサヒは、急に立ち止まった。


「わぶっ!こ、今度は何ですか!?」

「人間だ」

「え」


 その時、ちょうどその人間が飛び降り、次の瞬間、空中でデーモンアントに酸の集中砲火を受けていた。

 俺は思わず、地面を蹴りあげていた。地面でビリウスが何か叫んでいる。もしかして仲間?

 空中で、ビリウスの仲間らしき人物の肩を掴み、後ろに向かって投げ飛ばす。

 自分に酸は効かないのでそのまま浴びようとしていたが、また全裸になってしまう事を思い出し、慌てて手で払った。

 ああ、この服借り物なのにボロボロだ。俺のうっかりさんめ。


 デーモンアント達は今にも次の攻撃を始めようとした。

 俺はビリウスのお仲間さんの安否を確認して担ぎあげ、早々に蟻の巣から脱出したのだった。








 俺達は、自己紹介や今までの出来事などを話ながら歩いた。


「私はライ、重剣士だ。先程は危ない所をありがとう。呼び捨てで構わない」


 ライと名乗った重剣士は、デカい剣を背負った身長二メートル超の獣人だった。耳や尻尾から推測するに、虎系だと思われる。燃えるような赤髪に、ネコ科特有の瞳孔を持つ金色の瞳がどこか野性的だ。

 にしてもデカいな...身長だけならビリウスよりも高い。

 俺も百七十はあるし、アサヒはとにかくデカいし、四人(?)でいると、なんというか...こう......嵩張る。


「マサキは人語より龍語の方が得意なのか?」

「えッ」

「人語の方がちょっとぎこちない気がして」「えっと、人語習ったノ、割と最近で...」

「そっか」


 師匠には色んな言葉を習ったが、人語は一番最後だった。人間なのになぜ一番人語が不自由なんだよ、バカ師匠。

 これからもっと練習しないとな...、


「あ、よかった。ありました」


 しばらく歩いたところで、ビリウス達が蛇を追う時に置いてきてしまったという、素材の入った袋を回収する。


「いやぁ、今回は大漁でした」


 下でも散々採取してたもんな。ビリウスはホクホクしていた。






「ここで一旦休息をとってから、出口を目指そう」


 ビリウスの荷物を回収して、またしばらくアサヒに乗って走った後、比較的開けた場所を見つけ野営の準備をする。バリアマジックアイテムを起動させ、焚き火をする。


「これで肉でもあれば最高なんだがな」

「ですねえ」


 ここ数日まともな食事を食べてないライ達が、愚痴をこぼす。


「だったら、あの蛇ハどうデス?」


 亜空間からバジリスクを取り出す。この蛇は結構美味いんだ。身が引き締まった鶏肉みたいで。

 突然現れたバジリスクに、ライはポカンとしている。


「確かに、エピメタロスィバジリスクの肉は珍味として有名ですね」

「...毒とか大丈夫なのか」

「はい。彼らは頬に毒袋があるので、頭を落とせば大丈夫ですよ」


 そうなんだ。毒も効かないから、今まで頭からバリバリ食べてたわ。人前ではよそう。


「では、調理しますか。道具もないですし、大したことはできませんけど」

「ああ、手伝うよ」

「お、俺も」


 ライが剣で頭を落とし、俺が持ち前のバカ力で一気に皮を剥ぐ。また若干白い目で見られたが気にしない。俺が、頭と皮を亜空間にしまっていると、ライが肉を食べやすい大きさに切り分けてくれた。

 いつの間にか焚き火の上に網を張っていたビリウスが鉄串に肉を手早く刺して、焼いていく。


 焼き色が着いたら塩と、砕いた香草をまぶして、バジリスクの串焼き完成!


「おかわりもどんどん作れますから、たくさんどうぞ」


 自分の分の串焼きを渡されて、俺は思わずじいんとする。


「い、イタダキマス」


 大きく口を開けて、肉にかぶりつく。

 瞬間、全身に電流が走った。


 う、美味い!!


 焼き加減が絶妙でぷりっぷり!肉の臭みを消す香草の匂いと、塩が旨みを引き立てて最っ高!

 こっちに来て初めてちゃんとしたもの食べた...。

 あまりの感動に涙が出る。


「う、うますぎる...」


 泣きながら肉を頬張っていると、ビリウス達が苦笑する。うぅ、なんか恥ずかしい。

 でも食欲に抗えない。


「まだまだありますから、たくさん食べてください」


 食事が必要ない体になったけど、やっぱり美味いものを食べるって幸せだ。

 それからビリウスは何回もおかわりを焼いてくれて、みんなで肉を堪能した。


「マサキ...華奢なのに、良く食べるね」

「私達も結構食べる方なんですがね...」


 結局最後まで食べていた俺は、二人から若干引きつった笑みを向けられる。

 食べなくても平気なのだが、食べても即エネルギーに変換されてしまうため、俺の胃に限界はない。

 そのため、出されただけ食べてしまった。

 焼いてない肉もアサヒがほとんど食べちゃったし、二人が狩った獲物なのに図々しすぎた?


「スッスミマセッ...俺、食べすぎて、」


 真っ赤になって土下座する。


「いえ、そんなに気持ちよく食べて頂いて、こちらも作りがいがあります」

「うん。頬張ってる顔もかわいかったしね」


 か、かわいいはちょっと複雑だけど...。

 でも、この人達は優しい!師匠も社長も本当に鬼畜だったから...沁みる。




 それから少し仮眠を取り、アサヒの背にみんなで乗って出発する。

デーモンアントの巣を突き抜けたスピードだと、乗ってる彼らが疲れてしまうので、心地いいくらいの速度に落として走る事役十二時間。


 いや、この世界に生まれて約15年。





 俺はようやく、この迷宮の出口に辿り着いたのだ。





誤字脱字、教えていただければありがたいです。

素人文ですので、意味違いや不適切な表現等あるかもしれません。

その際もこっそり教えていただければ^^

できる限り対応致します!

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[一言] 15年で初めて外へ。
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