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【飼い猫が運んでくれたもの】2話

 次の日。翼は自由時間になると、プラプラと廊下を歩き始めた。すると翼の友人の友和ともかずが後ろから近づいて「翼、一緒に回ろうぜ」と声を掛けた。


「うん、いいよ」

「なにを見て回る?」

「決めてない。時間はたっぷりあるし、順に覗いていこうぜ」

「そうだな」


 ――二人は三年生の教室から順々に見て回る。どこに行っても賑やかで、みんな、文化祭を楽しんでいるようだった。


「なぁなぁ、翼。今日はキャンプファイヤーまで残っていくだろ?」

「うーん……どうしようかな」


 翼はキャンプファイヤーの時に流れる曲を携帯で調べるぐらい楽しみにしているようだったが、それを前面に出すのは恥ずかしいようで、返事を濁していた。


「何だよ、一番ドキドキするイベントなのに出ないの?」と、友和は翼と違い正直な気持ちを口にする。


「出ないとは言ってないよ。決めてないだけ」

「そう。出るとしたら誰とリボンを交換するつもりだ?」

「うーん……それも決まってない」

「何だよそれ」


 本当は決まっているはずだが、翼はこれも本当の気持ちを口にしない。まだ夏海に話しかけようか迷っているのかもしれない。


「そういう友和は決まっているの?」

「もちろん決まっている!」

「誰?」

「内緒。ということで、夜は別行動な」

「分かった」


 ※※※


 外はすっかり暗くなり、夜を迎える。グラウンドの中央にキャンプファイヤーが灯され、その周りに生徒達がワラワラと集まっていた。


 フォークダンスが終われば、いよいよ好きな人とリボンを交換するイベントが始まる。それなのに翼は、気になる夏海と交換しようかまだ迷ってようで、浮かない表情をしていた。


「それでは皆さん、長らくお待たせ致しました。フォークダンスの始まりです」と、司会の男子生徒が言って、御馴染の音楽が流れる。


 翼は異性と楽しく踊れる気分じゃないのか。一人で校舎の中へと入っていく――人気の無さそうな三階へと移動すると、窓から外を見つめた。


「みんな楽しそうだな」


 翼は静寂な廊下で呟く――しばらくして翼は、外の様子が気になったようで、窓を開ける。


「えー……それではこの曲で最後になります。皆さん、心の準備をしておいてください」

「最後か…… 」


 翼は窓を閉めると、グラウンドに向かった――グラウンドに着くと丁度、音楽が鳴り止む。


「お疲れ様でした。では最終イベントのリボン交換です! もうあとは好きにやっちゃってください!!」


 司会者の声を聞くと各々、動き始める。翼は緊張の面持ちで、ウロウロと歩き始めた。


「あ……」


 翼は夏海を見つけたようで、立ち止まる。夏海は丁度、友達と分かれて、一人になった所だった。チャンスは今しかない! と、翼は思ったのか、グッと手を握る。──だが、臆病風に吹かれたのか、一歩が踏み出せないでいた。


 その時──友和が夏海に近づき、話を始める。


「さぁ残すところ10分となりました。悔いの残らない様に想いを告げちゃいましょう!!」


 司会者の言葉が翼を焦らせる。今なら友和に便乗して話が出来るかもしれない。でももし友和が夏海を好きだったら? そう思うと近づけないようで──夏海に背を向け歩き出し、リボン交換を諦めるのだった。


 ※※※


 翼は一人寂しく家に向かって歩いている。すると外灯の下にポツンと座っているニャータを見つけた。


「何だお前、あれから家に帰ってないのか? 仕方のない奴だ」


 翼はニャータに近づき、しゃがみ込む。ニャータはニャーと鳴くだけで逃げなかった。


「あんまり外をほっつき歩いていると、野良猫だと勘違いされるぞ? ――そうだ」


 翼は制服のズボンから交換出来なかったピンクのリボンを取り出す。ニャータの首にリボンを縛り付けると「お前は男だけど、これやるよ」


 ニャータは嫌がりもせずに、翼をみつめ座ってる。


「――嫌がらないなんて、珍しいな。おいで、帰るぞ」


 そう声を掛けると、ニャータはダァーっと走って行ってしまった。翼はスッと立ち上がり「まぁいいわ。追いかける気力もないし。好きな時に帰って来るだろ」と、呟いて、家に向かって歩き出した。


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