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【イケメンのクラスメイトが俺の幼馴染を狙っているみたいだ。完璧過ぎて勝てそうにないので、仲良しッぷりを暴露して諦めさせようと思う】2話

 次の日の放課後。悠斗は教室の近くにある人気のない踊り場に向かう。部活や、帰宅していて学校内にほとんど誰も居ないようで、廊下や階段はシーン……っと静まり返っていた。悠斗はそれでも不安のようでキョロキョロと辺りを見渡す。


「悠斗君、話って何?」


 相原は悠斗に呼び出されたのが不快だったのか、眉を顰めて明らかに嫌そうな表情を浮かべて、階段を上ってきた。


「悪いな、呼び出して。俺と千秋の事だけど……俺達、部活のない日はほぼ毎日、一緒に帰っているぐらい仲が良いから」


 相原はいきなり何を言っているんだ? と思っているのか、眉ひとつ動かさない。


「は?」

「それから、千秋の手料理を食べた事あるし、毎年、バレンタインチョコだって貰っている」

「ふーん……」


 相原はだから? といった感じで、まったく興味が無さそうだ。あまりに無反応だったからか、悠斗は「休みの日に買い物に付き合わされる時、手を繋ぐ事だってあるんだぞ」と、嘘をつく。


 本当は小学校までで、高校に入ってからはお互い意識をしてしまって出来ていなかった。


「へぇー……」

「キ、キスだってした事あるんだぞ」


 キスは本当だが、ハプニングで軽く触れる程度だった。でもさすがに相原は不快だったようで、ピクリと眉毛が動き、表情が強張る。


「あ、そう。それから?」


 相原は黙って悠斗を睨みつけるように見つめているだけで、いまの話を聞いても、諦める雰囲気は感じられなかった。


「お風呂だって一緒に入った事がある!」


 相原にはそんな子供だましは通じないようで、「ふーん……」と、冷めた態度で返事をすると、「で?」と、返した。


 悠斗はこれ以上は通じないと思ったのか「だから……千秋の事は諦めて欲しい」と、素直気持ちを口にした。


「そういう事ね」

「自分でも情けないと思うけど、イケメンで運動も出来て、頭も良い。そんな相原君に告白されれば、俺に勝ち目はない」と、悠斗は言って、拳をギュッと握る。


「千秋とは幼稚園の頃からずっと一緒で、彼女と居るといつも幸せな気分になれるんだ。だから頼む。俺から取らないでくれ!」


 悠斗は拳をフルフルと震わせながら、必死に相原にお願いするが、相原は表情一つ変えずに、ただ聞いていた。


「関係ないね」


 相原の冷酷な言葉が悠斗の胸に突き刺さったようで、悠斗は顔を歪める。相原は悠斗に近づき、横に立つ。


「本当に情けねぇな。男だったらそんな回りくどいことしてないで、堂々と告白して勝ち取れよ」


 相原は冷たい目で、そう言うと行ってしまった――悠斗は相原の最後の言葉に何も言い返せず、立ちつくす事しか出来ないようだった。


「悠斗!」と、千秋が悠斗の後ろから声を掛ける。悠斗は心臓が飛び出そうなぐらいビックリしたようで、背筋をピンッと伸ばしながら「うわぁ!」と声を上げた。


「──何で後ろを振り向かないの?」


 きっと怖かったからだろうが、そんな事を言えるはずもなく、悠斗はゆっくりと後ろを振り向く。千秋は複雑な表情を浮かべ、そんな悠斗を階段から見下ろすように見つめていた。


「千秋、いつからそこに?」


 千秋は自分の髪を撫で始めると、「いつからだって良いじゃない。そんなことよりあんた、こんな場所で何をやってるのよ!」


「面目ない」

「まったく……誰かに聞かれるに決まっているでしょ!」

「返す言葉もございません」


 千秋は、ふー……っと鼻から息を吐き出すと、表情を元に戻す。――少し沈黙をはさみ、口を開くと「私も相原君の言う通りだと思う」



 そして悠斗に背を向けると、そそくさと階段を上って行った。悠斗は話を聞かれ、嫌われたと思っているようで、悲しげな表情を浮かべていた。


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