チビッ子オーガ
「て、てめえ!」
激昂して殴り掛かってくる男の拳を、すかさず召還した黒騎士が掌で受け止める。
「な、なんだ、てめえは?!」
「アタシが召還した黒騎士だよ」
冷ややかにアタシが言うと同時に、黒騎士のストレートが炸裂。
アタシはゆらり、と立ち上がる。
「アタシの大事なナツコさんとマーニャとピナッチを奪おうだって?」
愛槍、燕宿を取りだし、男達に突きつける。同時に、一旦、影空間に戻った黒騎士を奴らの背後に、黒槍、影鬼を構えて配置する。
二度と悪さしないように、寸止めならぬ、寸止まらずで連突攻撃!
男の額、頬、両肩、鳩尾、両膝への浅く突き入れる7連撃を繰り出し、両肩両膝を痛めて戦闘力を奪うと同時に恐怖を刻み込んでやる!
最後は槍を半回転させて石突きで股間潰しの一撃!
「さあ、次は誰だ?」
アタシが睨み付けると不良冒険者達は逃げだそうとし……黒騎士に捕まってギルドから殴り飛ばされた。
ギルド内は拍手喝采。この日の出来事で、ランテルム冒険者ギルドでアタシ達は一躍有名になると同時に、アタシは怪力と容赦なしの所業に、「チビッ子オーガ」と言う不本意な呼ばれ方で恐れられるようになってしまった。
こんなに可愛い少女なのに解せぬ……って、言ったら、パーティーの皆に総ツッコミされたよ。
アタシ達がパーティーを組んで早1ヶ月。
ユリースが冒険者ランクDに無事上がり、今日は隊商の護衛でランテルムから北の街フォードまで、片道3日の旅の途中。
初日は特に問題もなく、2日目の今日もこれまでのところ平穏で、今は野営の最中だ。
晩御飯は焼きたてのパンとコーンスープ、猪のあぶり肉にオレンジ。
パンはねえ、酵母を作りましたよ。
ブドウ潰して瓶に容れて温めて、時間経過する空間収納のウェストポーチに入れて発酵させてみた。
そしてパン生地も、強力粉を購入して練り、一次発酵までさせた生地を影空間収納に。
パン焼く時は、生地を早めにポーチ収納に移して二次発酵しておけば、木の枝に巻き付けて焚き火で焼ける。
コーンスープは、市場で売ってたトウモロコシを錬金術で分解したら、粉末が出来た。
牛乳とバターとチーズはランテルムの直売所で購入。
結局、バターとチーズ工房は見学させて貰ったけど、工房の規模が小さくて、牧場も小さなものだった。リデル村とは上手くやれば競合はしなさそう。むしろ、バターとチーズ製作を規模拡大したいって工房主さんが言ってたので、業務提携出来そうだ。
牛乳はパンにもスープにも大活躍だし、バターもパンに必須。アタシ達の野営の食事は非常にレベルの高いものになり、隊商の人達にも大好評だった。
夜半に夜番を交代し、ユリースとアリシアコンビから、アタシとスーリヤコンビに変わって、2時間程もした頃。
空気が変わった。虫の鳴き声が止まり、殺気なのか凍てついた雰囲気。




