チョコレートの兆し
夜の見張りは先にスーリヤに頼み、アタシは交代のまま、朝ごはんの支度もする。
朝は、残ったシチューと、パン代わりにワッフルでも焼くことにした。
ワッフル生地をボウルで混ぜる。牛乳がないので、今回はアイスクリームを溶かして代わりにする。金型は2つあるので二刀流で焼きつつ、焼けたら影空間に皿毎収納。
鉄瓶でお茶も入れ、日が上ったところで皆を起こした。
「ワッフルって美味しい!これ、ドワーフ郷で作られた金型なんだ?ドワーフ郷だけは実は行ってないんだよ。あいつら、こんなもの作ってたのか!」
スーリヤの話によると、エルフとドワーフは昔から仲が悪いらしい。食生活が元々合わないのだとか。
そりゃあ、肉食と草食の違いみたいなものだしね。
それに、静けさや詫び錆び、質素な優雅さを求めるエルフと、騒々しく活力に溢れるドワーフとは、性格も合わないのが多いのだろう。
商人さん一家も喜んでくれた。
そうだ、この商人さん、トレディンさんって言うんだけど、南方のギャザランド王国とも取引はしていたんだそうだ。
黒くてトロッとした、樽売りの液体について聞いてみた。
「それはチャコットと呼ばれるものですね。一応飲み物なんですが、味が濃すぎて一度にほんの少ししか口に出来ません。苦いですが、滋養強壮に効くと言われてます。暑い地域では液体ですが、この辺の気候だと直ぐ固まってします」
ますますチョコレートっぽいね。
アタシは、トレディンさんがもし、今後も商売を続けてチャコットを手に入れる機会があるなら、一樽買いたい事をお願いした。
そしたらトレディンさん、快く応じてくれて、その時が来たら冒険者ギルド経由で連絡をとる手筈を約束してくれた。夢がまた広がるね!
ただし、チョコレートは配合とか融かす温度管理が厳しい。誰か専門的な料理人が欲しくなる。
「あのう、どうしてペネロッテさんは、チャコットを欲しがってるんですか?」
こう聞いてきたのはトレディンさんの娘で2人いる姉妹の姉、カティーさん。
「アタシの知ってるチョコレートと同じものかなぁと思って。砂糖やミルクを上手く混ぜて固めると、すっごく美味しいスイーツになるのよ」
この話にカティーさんが食いついた。色々と会話してると、自分でチョコレート開発をやってみたい、と。
じゃあ、それが出来る状況になったら、カティーさんにアタシも協力して、チョコレートの開発やってみるか!
とは言え、まずはトレディンさんの商売が軌道に乗らないことには話にならない。
アタシ達は朝食を終えると出発し、昼前には公都ランテルムに到着。
ここの門衛は、リデル村でエデンさんが使っていた、神偽判定の水晶で出入りする人々をチェックしていた。




