到達の証明
「魂魄体からの精神領域の隔離に成功!」
「地脈との接続、安定しています!」
「対象が擬似凍結状態に移行!バイタルは基準値をクリアしました!」
研究者風の衣装に身を包む集団が忙しなく声を上げながら機械を操作している。彼らがいる部屋の壁は一面ガラスになっており、ガラスの向こう側には輝く床の上に一人の男が横たわっている。
「対象の魔力回路にプロトコルを記述……成功しました!」
「プロトコルと亜空間情報集積機構の互換性を確認!」
「現フェーズでの処理の完遂を確認しました。続いて、次フェーズの処理を開始します。」
男が横たわる床が輝きを変え男を中心として波紋のように波打ち始める。そして男の姿が薄く光を纏いつつ半透明になり、空中を浮遊し始める。
「擬似凍結処理維持機能の正常な起動を確認!」
「対象に観測機能及び発信機能を付与……成功しました!」
「追跡観測機能は正常に稼働しています!」
研究者たちの声が次々に発せられ部屋に響き渡る。声が響くとともに男の姿も変わる。纏う光は広がり膜となる。床に灯る光が消え、複雑な魔法陣が描き出される。魔法陣が宙に浮き膜に沿うように丸まり始める。魔法陣が膜を包み終わると一瞬発光する。その後、魔法陣も光の膜も男の姿も無い。
「全フェーズの終了を確認しました。以上を持ちまして『継承プロジェクト:到達の証明』は成功です。」
「皆様、お疲れさまでした」
その宣言を聞いた研究者たちは一瞬動きを止める。周囲が静寂に包まれる。歓声が響く。あるものは笑う。あるものは涙を流す。また、あるものは周囲と喜びを分かち合う。すべての者が達成感に包まれる。
喜びの感情の発露はその後いつまでも続いた……
……そして1000年後、物語は動き始める。