見せしめと抵抗
少し間隔空いています。すみませんm(_ _)m
互いに買い物を終え、フードコートで早めの昼食を済ませ、友哉と華はシネマの前に来ていた。
「見るのはこれだよな。お、ちょうど20分後に始まるからこれにするか」
友哉は上映時間の映し出されているボードとスマホに表示されている時間を見比べながら言った。
「うん。にしても、人少ないね」
いつもはカウンター前にある列が今はない。華はそれを不思議がっていたが、友哉は理由がわかっていた。
「そりゃ、俺達が来るのが早いだけだと思うよ。この時間は昼食時真っ只中だからね」
「なるほど。まぁ人が少ないならそれはそれでいいかな」
「だな、とりあえずチケット買いに行こう」
そう言ってカウンターの女性店員の元へ歩く。
ほんとに予約が少ないらしく、ど真ん中の特等席が空いていたので、迷わずにそこを選び、スピーディーにチケット購入を済ませた。
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「奏音、どうする?」
カウンターでチケットを購入し、ポップコーン売り場の方へ向かったのを見ていた友菜が、奏音に質問したが、意味がわからない様子で
「どうするってどういうこと?」
「私達も映画観る?ってことだよ。お金は余裕あるし、学生証も財布にあるし」
友菜は少し弱気な顔で聞いた。
「んー。私は観たいかな。気になってたし、ちょうどいい機会だから」
「そ、そお!?奏音が観たいって言うなら観ようかな!尾行作戦も続けられるし?」
(友菜ちゃんもやっぱり観たかったんだね。ふふふ、分かりやすかったもんなー)
と、奏音は心の中でクスッと笑った。
友菜がこの映画を観たがっているのは今に始まったことではなく、家でもテレビに映ったCMに目が釘付けになっていた。そのため、奏音はもちろん友哉もこのことを知っている。
「兄さん達も中に入るし、私達もチケット買って中行こうよ」
そう言って2人もカウンターに向かった。
そして、友哉が真ん中をとっていることを予想し、その2個上の席を取り、ポップコーンとドリンクを買いに行った。
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そして映画が終わる
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「いやー!楽しかったね!まさかあの人と結ばれるとは。感動しちゃったよ」
「そうだな。(友菜が観たがってたのも頷けるな。今度連れてくるか)」
友菜が一緒に見ていたことを知らない友哉はそう決め、映画の内容を振り返った。
(ほんとに良かったな。主人公の男子高校生が、同じクラスである学年一の美少女に恋をする。そしてその美少女と仲の良い幼馴染の女の子にそれを伝え、幼馴染は手伝うと言う。が、実はこれは幼馴染が我慢して飲んだんだよな。だって、幼馴染は美少女が主人公が好きなことを知っていたから。幼馴染は自分が主人公を好きな気持ちを抑え、恋のキューピットになる。普通はそんなこと出来ないよな。
で、文化祭を経て更に2人の想いは接近し、主人公は残酷にも幼馴染に文化祭の最後に告白することを伝える。
それを聞いた幼馴染はベランダで1人座るも、諦めきれずに最後だけあがくことを選択し、その現場へ向かう。
そして告白の直前にギリギリセーフで着き、大声でこう叫ぶ。
「いつも近くにいる人の想いに気づけ!バカヤロー!」と。いつも優しく、温厚だった彼女の言葉は、どちらの心にもしっかりと刺さった。
そして、次の年から美少女は父の仕事の都合転校し、学校を去ることになる。
そこで画面が暗くなり、次に写った一枚の写真には
「同じ指輪をはめた主人公と幼馴染が子供を抱きかかえており、その横で笑顔でピースしている美少女の指にも、2人とは別の指輪があった」)
「幼馴染のあの言葉刺さるな。「近くの人の想いに気づけ」って」
「そうだねー」
語尾をのばし続けアピールする華だったが
「ん?あ、ここにいたら邪魔になるしあっち行こう」
友哉の言葉によってそれは不発に終わった。
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「うぅぅ…」
友哉たちが出た数分後、友菜と奏音も外に出た。
「泣きすぎだよ友菜ちゃん。確かに感動したけど」
大泣きしてまだ収まらない友菜を、既に中で涙を収めてきた奏音が泣き止ます。
「ほら兄さん見失うから。早く出よ」
「うぅ…うん。分かった」
友菜はまだ涙目で目を少し赤くしながらも、尾行作戦を優先し、何とか足を動かした。
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「今日はありがとね。色々楽しかった!」
集合場所と同じ場所で、華が礼を告げる。
「こっちも楽しかったよ。また遊ぼうな」
友哉は最後の言葉を何気なく放ったつもりだったが、華にクリーンヒットしたようで、つい頬が緩む。
「うん!じゃあまたね。…?」
そう言ってすぐ、華は自分を見つめる視線に気づく。
その先にいるのはもちろん奏音と友菜。
あちらと目が合い、すぐに全てを悟った華は
「これ、今日付き合ってくれたお礼ね!」
と言い、友哉に抱きついた。
急な行動に友哉は「うぉっ?」と訳の分からない顔をしているが、華はしてやったりという笑顔で
「じゃ、今度こそまたね!」
それだけを言い、去っていった。
「・・・?なんだったんださっきのは…」
3分ほど意味がわからず立ちつくし、ようやく口から出した一言で我に返る。
すると
「お、お兄ちゃん。こ、ここで何してるの?」
立ちつくしていた友哉が心配になり、2人が歩き寄ってきた。
「ん?友菜と奏音?どうしてここに」
「買い物にね。兄さんも遊びに行くって言ってたから、私達も行きたいなって」
「そうか、楽しかったか?」
コクコクと頷く奏音に、友哉は「そりゃよかったな」と声をかける。
一方、奏音と違って華の最後の行動にとても衝撃を受けた友菜は、最初の言葉以来放心状態になっていた。
「ーい。おーい!」
「はっ!何?」
「何って。帰るぞ。時間遅いし」
「はーい。帰ろー」
友菜は友哉の近くに駆け寄り、手を繋いだ。
いつもは絶対しないのだが今日は別。友菜なりの華への対抗だった。
そして奏音も逆の手を繋ぎ、友哉は両手に美少女の手を握り、帰路についた。
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