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うわさ

 サイモンさんに呼ばれた俺達はまずギルドに報告にいき、報酬や素材の買い取りをしてもらい、それをハミィと分けたことで俺の手持ちが銀貨3枚にまでなった。


 そのまま職人通りのカマウリさんの店に戻り、盾を購入したのだが、少し余裕があったしカマウリさんから「装備に金をけちるのはよくないぞ、いざという時に壊れたら話にならんからな」と言われた事から俺は頼んでいた銀貨1枚の盾ではなく、またまた少し無理を言って2枚でそれなりにいい盾を頼むと渋い顔をしながらも店の奥から持って来てくれた物を買い、そのまま4人で昼食を取る為に移動をすることにした。


 移動の最中もマジェとカッチェは周りをほとんど気にすることなくハミィに接してくれていて、二人のやさしさが伝わってくる。


 そんな俺達が向かった先はマジェがおすすめする店で注文する料理などは決まっておらず、店の人にこれが食べたい! と言うと作って持って来てくれるというちょっと変わった店のようだ。


 職人通りをそのままギルド方面へ行き、脇道に入った所にその店はあった、店の名前は―――。


 「リヴァイヴって……なんかで聞いた名前だな」


 その名前の響きになんとなく聞き覚えがあった様ななかったような~っと考える俺にカッチェが口を開く。


 「蘇生呪文の名前よ、リヴァイヴ事態使うのに何十人分の魔力を使うのかわからないってぐらいの魔法で、成功例は一度もないし、はっきり言っちゃうと名前だけで意味のない魔法のことだよ!」


 ヒーラーである自分に関係がある魔法ではあるんだからそんな言い方してていいのか? とも思ったのだがカッチェの隣にいたハミィも同じ意見だった様で、何度もうなずいていた、しかしなぜ店の名前をこれにしたんだ?


 「なんでそんな魔法名を店の名前にしちまったんだろう?」


 そんな俺の疑問は店の中から扉を開け、出てきた人物により解決してしまった。


 「そりゃ~うちの飯食って疲れてる体も蘇るって意味だ!」


 誰? という前にすでにマジェが反応をしている。


 「こんちわ! また食いに来たぜ、4人だけどいける?」


 マジェの問いに店の人は全然大丈夫だ! と中に通してくれて、俺達を席に案内してくれた。


 何を頼もうか……などと俺に考える暇はなく、座ると同時に4人分の肉料理をマジェが頼んでしまった、まぁいいんだけどさ。


 料理を待つ間何か話を~と思っていると、カッチェがそういえばさ~と話出したので聞いてみる。


 「最近ギルドでうわさになってるの聞いた?」


 噂? 人と話してないからわかりません。なんですかね? それ。


 「なんの噂? もしかして俺の噂とかか?」


 聞いていないって事は、噂の本人だけが知らないなんてこともありそうだしな。


 「ん? 違うよ~コウの噂なんてもうとっくに広まってるからみんな知ってるんじゃないかな? そんなことじゃないの~!」


 いや、俺にとってはそっちの方がかなり重要なんだけど!


 「ちなみに俺の噂ってどんなの?」


 「えっとね~発展場のサイモンの弟子は師匠があれだから変な奴でもしかたない~だったかな」


 「サイモ~~~ン!!!!!」


 そう言われた俺は噂の原因であろうあの人に憎しみを込めて叫び上げた。


 「コウうるさい! それでね、噂のことなんだけど、なんかダンジョンに行った人が帰ってこない事が増えてるんだって!」


 「それは私も聞いたけど、でもダンジョンに行って帰ってこないなんて今までもあったし、そこまで噂になるほどのことなのかなって思ったからあまり気にしてなかったかな」


 そう言ったハミィはカッチェの次の言葉を聞き、考えを改める事になった。


 「確かに今までもあったみたいだけど、トリーアの、しかも東側にあるダンジョンに行った人達だけ帰ってこないんだよ?おかしくない?」


 町の東側、墓地を抜けた先の荒野にはいくつものダンジョンが存在している、そのどれもが駆け出しの練習場所として使われることが多く、何度も踏破されている場所だ。


 そんな場所に行った人達だけが帰ってこない、最弱のダンジョンではあるがもちろん危険もある、だが死ぬことにまでなることは早々ないと聞いたが……。


 なんとも言えない、そんな空気になった。だってわからないしね。


 そんな俺の横に座っていたマジェがなんだかソワソワとしている様にみえた。


 「ちょっと待て、なんか外騒がしくないか?」


 そう言いだしたマジェは席を立ち、店の扉を開け外をのぞき見に行った。


 確かになんか騒がしいような……誰かが何か言っている様に聞こえる。


 「おい、ヤバいぞ! ギルドから町にいる冒険者全員に召集がかかってるみたいだ、すぐに集まれって外で言ってる!」


 全員だと!? とんでもない数がこの町にいるんだぞ? その全員に集まれって………これろくなことじゃないだろ!


 「どうするよ!?」


 どうすると言われても……


 「へいお待ち! 注文の肉料理だぜ!」


 そう言って料理が運ばれて来たのを見て俺は。



 「集まるまでに時間もかかるだろうしささっと食ってからギルドに行って、話を聞いて、その後考えよう!」



 そう言ったのだが、集まれってことは強制だろうな……と何もおきない事を祈りつつ、とにかく肉をほおばった。


 そしてリヴァイヴにて食事を済ませ、俺達はその後ギルドへと向かう。


 集まるまでに時間がかかるだろうとは思っていたがそんなにゆっくりとはしているわけにもいかず、急ぎ気味に歩き、ついたころにはギルドにはかなりの数の人が集まっていた。


 ギルドの建物は小さいわけではないが、そんな人数を中に収容できるほどの規模はない、その為外にまで人が溢れかえっていて、近隣の住民からしたらいい迷惑だろう。


 どんな人達がきているのかと、周りを見渡すと俺が初めてギルドに来た時に絡んできたおっさんや、ハミィとペアを組む事になった時に俺達を見ていた人など、いろんな人が見える、そして最も目立っていたのが青いフルプレートに盾を持ち、仁王立ちで前だけを見据えているサイモンさんだった。


 目立っている理由はその鎧だけではない、何故か周りの人達はサイモンさんから距離を取る様にしている為、彼を中心にポッカリとその場所だけが丸く開いている、そのことがより彼を目立たせる要因にもなっているようだった。


 修行の事もあり、俺達は人ごみを掻き分け彼の元に行き声をかける。


 「サイモンさん来てたんですね、というか何故ここだけこんなに空いてるんです?」


 「わからん……私は何もしてはいないのだがな」


 そう言ったサイモンさんからは、顔まですっぽりと防具で隠している状態でも、私少し傷ついています。とその声を聴くと伝わってくるようだった、そんな俺達に人混みを掻き分けてギルドの方から来た人が容赦ない言葉を浴びせた。


 「サイモンの鎧の中が蒸れ蒸れで湿ってるのが原因なんじゃない?」


 さすがにそれはひどい……、俺も将来この姿になる予定なのだ、あまり他人事ではない。


 「失礼な事を言うな! 蒸れてないわ! スベスベに決まってるだろうが」


 そう反論するサイモンさんなんだが、蒸れてないのはわかったけどスベスベってなんですかね? ちょっと気になるのですが……


 「シーラ、そんな事より中はどうだった? 他のみんなはどうした?」


 無慈悲な言葉を発したシーラと呼ばれたその女性は、首を横に振り、ダメだと態度で示しながら中での様子をサイモンさんに伝える。


 「中はここより凄い事になってたよ、誰かに話を聞ける様な状態なんかじゃない、他の皆は多分今戻ってきてる所じゃないかな? あとサイモン、蒸れると臭くなるからちゃんと鎧、洗いなよ?」


 「蒸れてな~~~い!!!!!」


 シーラと呼ばれる女性からの言葉の一撃はサイモンさんの大事な所を大いに傷つけた様で、事実無根だと、それを主張するかの様に叫びを上げていた。


 その叫び声が原因なのかシーラさんの言葉が原因なのかはわからないが、ただでさえポッカリと周りから距離を取られていたのに、さらに距離を取る様に周りが一斉にザっと動いた。


 そんな様子を気にする事もなく、サイモンさんを放置し、すぐ近くにいた俺達に笑顔でシーラと呼ばれた女性は話しかける。


 「はじめまして! 私はシーラ、サイモンのパーティーメンバーでもあり、相方よ! よろしくね! 君でしょ? サイモンの弟子って子は」


 確かに弟子と言われればそうなんだろう、しかし何故この人はその相手が俺だとわかったんだ?


 「はじめまして、サイモンさんには色々お世話になっています、俺の名前はコウで、後ろにいるのが仲間のマジェ、カッチェ、ハミィです、よろしくお願いします」


 俺がそう挨拶をすると後ろにいた皆は軽く頭を下げる形で挨拶をしてくれた。


 「うんうん、いい子達だね~! これからよろしくね! さて、他の皆は~~あ、丁度来たみたいね」


 周囲を見渡し、目的の人達を見つけた様で手を振りながらこっちだとシーラさんが合図すると、人混みの中からはおそらくサイモンさんの仲間なのだろうと思われる人達が出て来た。


 「なんでここだけこんなに空いてんだ?」


 「どうせサイモンが何かやったんでしょ?」


 そう言いながら近づいて来た一組の男女に向かってシーラさんは説明をし始めた。


 「サイモンの弟子の子達と知り合ったのよ! あなた達も挨拶してあげてね! それとここの出来事はサイモンの鎧が蒸れて臭いせいだから気にしなくていいわよ」


 そのあんまりな言い分に流石にかわいそうになった俺がサイモンさんを見ると、握りこぶしを作り、顔をうつむかせ、フルプレートの全身をブルブルと震わせている事によってカチャカチャと音を立て、なにかに耐えているようだ。


 俺だったら泣いていただろう。


 「サイモンの弟子? あの噂になっていた子か! まともな子なのか?」


 「サイモンの弟子がまともなわけがないよ」


 そんな言葉をまだ名前も知らない人から投げられ、俺は悲しみのあまり後ろを振り向くと、顔をそらし、口元を隠してプルプルと震えながら明らかに笑いをこらえている二人がいた。


 あとで覚えていろよ、マジェ! カッチェ!。


 ハミィは……ハミィは大丈夫だよな? そう願いながら彼女を見ると、俺からの視線を受けた彼女は哀れみの視線を俺に向けていた。


 あんまりだ……! 俺のこれは絶対にとばっちりだぞ! なんで……なんで……!


 「なんでこうなったぁぁぁ!!!!」


 叫びながら膝を折り曲げ、地面に手を付き、うなだれる。


 いきなり近くにいた人がそんな事をすれば事情を知らない人はびっくりするだろう、その反応は出て来たサイモンさんの仲間も同じ様であった。


 そんな俺を指さし、シーラさんは二人に俺の事を話す。


 「えっと……ラグ、クコ、この子がサイモンの弟子のコウよ………」


 「やっぱ変なやつじゃん」


 「噂通りだったね……」


 三人の会話を聞き、羞恥心と悲しみでフルフルと震えだした俺を周りは見続け、なんともいえない空気が場所を支配した。

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