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剣と弓とダガーと杖

 俯いて黙り、気配を消し、人に触れないようにする、それが私の今の在り方。


 体が重い、当然だ、変わってしまっているのだから、心が痛い、でもきっと気のせいだ、何も……考えない様にしているのだから。


 声が聞こえた気がした、話がしたい、しかし私には関係のないことだろう、私に話しかけてくる人なんていないのだから。


 あの日以来わたしは一人なのだから、そう、私には……関係がないことだ……


 さぁ、今日もクエストを受けて生活費を稼がないと、もう蓄えはなくなってしまったのだから。


 ゆっくりと顔を上げるとみんなが私を見ている、いや、正確には私の横を見ている様だ、何を見ているの……?


 私は顔を横に向け、みんなが見る方向を向くとそこには一人の青年がたっていた、そう、仲介所で会った人が。


 何故この人がここにいるの? いや、冒険者ならギルドにいるのは当たり前か、では何故この人は私の隣にいるの? その答えは――――



 「さっきはすいません、少し話をさせてもらってもいいですか?」


********************************************************************************************************





 近寄り声をかけたが本人は自分に言われていると思っていないのかうつむいたままだ、そんな彼女とは正反対に周りの視線はみんな俺を見ていた。


 すごくやりにくい……そんな思いを持ちながら彼女を見ると、ゆっくりと顔を上げて困惑している様に見えた、やっぱり俺の声が自分に言われたものだとは考えてないようだ。


 それならもう一度言おう、俺は話をしたい、そう思ったのだから。


 「さっきはすいません、少し話をさせてもらってもいいですか?」


 彼女の目を見ながら言い切った俺は周りからくる視線に気を取られながらではあるが彼女だけを見る。


 返事を待つが彼女は驚いていてそれどころじゃないといった感じに思えた、周りから来る視線は相変わらず俺達を見ている、この状況で彼女と話せるとは思わない方がいいだろう、ならどうするか、簡単だ、場所を移すだけだ。


 「ちょっとごめん、ついてきて」


 俺は彼女にそう声をかけ、手を掴み、ギルドの外へと引っ張っていくが思わず握った手はゴツゴツしていて、本当に男の体なんだなと認識させられる。


 ギルドの裏側、そこは人もほとんどいない、そのことは何度か通った時に確認済みだ、話をするなら人目につかない場所がいいだろうと手を引き、彼女をそこに連れて行き俺はもう一度言う。


 「話がしたいんです、少しだけでもいいので時間をいただいてもいいですか?」


 そう尋ねると言葉には出さないまでも首を縦に振って返事をしてくれた、俺がまずしなければならない事は謝罪だろう、まずはそこから始めないと何も話せない。


 「先ほどの仲介所ではすいませんでした、まともに返事も出来ずに気を使わせてしまって、傷つけてしまって、本当に申し訳ありませんでした」


 「いえ、大丈夫です、気にしないでください」


 そう返事をしてくれた彼女を見ながら俺は話を進めていく。


 「実は、ある人から貴方の話を少し聞かせてもらいました」


 俺がそう言うと動揺するかと思っていたが彼女の態度に変化はなく、ただこう言った。


 「多分町の人のほとんどが知っていることですし、かまいませんよ」


 その言葉を聞いた時、俺は何となく上っ面だけの会話をした所で意味はないだろうと判断した、怒りもしない、悲しみもしない、すべてをあきらめているかの様なそのあり様に。


 「あの、敬語やめて普通に話してもいいですか? 本音で話をする為にも」


 そう言った俺の提案は彼女のうなずきにより許可が出たと判断し、とりつくろわず、ありのままの俺で、話をする。


 「仲介所に来てたのは相方を探してるからだよね? あの時は本当にごめん! 正直に言うと俺はこの町に来たばかりで君の話を知らなかったから驚いて声が思うようにでなかったんだ」


 「そんなに何度もあやまらなくていいよ、反応でこの人私の事知らない人だってわかったし、今の私じゃ驚かれるのも無理ないと思ってるしね、気にしなくていいよ」


 「そうか、ありがとう、それで本題なんだけど、仲介所に来てたのは相方を探しに来たであってるよね?」


 「そうだよ、それ以外にあそこには意味がないしね」


 「なら俺としばらく組んでみない?」


 そう言った俺の顔を驚きながら彼女は見ていた、というか俺自身にもわからない、何故そんな事を言ったのか。


 「本気なの? 確かに仲介所には行ったし、相方は欲しいとは思っているよ? でもね、今の私は()()()状態なんだよ? 聞いてるんでしょ? 私がこんな格好している理由」


 「うん、聞いてる、呪いで服装も限られたものしか着れないってね」


 そう、ラミアスさんから聞いたよ、装備も服装も男の体で女物しか着れない事。


 「そんな私と一緒にいると変な目であなたも見られるんだよ?」


 「多分そうなるだろうな、それでも、しばらく組んでみない?」


 意味がわからない、そう言いたいような顔をしている彼女の返事を黙って俺は待った、そしてしばらくうつむき考えこんでいた彼女だが顔を上げ、口を開いた。


 「わかった、それじゃあしばらくお願いすることにするね」


 その返事を聞き、何故かすこし安堵した俺の心だが原因はわからない、それに今は先に言わなければならない事がある。


 「それじゃ今日からよろしく! 俺の名前はコウ・アスト、コウでいいよ!」


 改めての挨拶を聞き、そういえば自分も名乗ってなかったと彼女は自分の胸に手を当てながら教えてくれた。


「そっか、ちゃんと自己紹介してなかったね、私の名前はハミィです。今日からしばらくの間よろしくお願いします」


 お互いに手を伸ばし、握手をすると、俺の中での気持ちの切り替えがよくわからない感じになり、とりあえずもう即クエストに行けばいいんじゃね? となった事から動き出す。


 「それじゃクエスト受けにいこうか!」


 「うん……え?? 今から? 中人凄いいっぱいいるんだよ? わかってるよね?」


 「わかってるよ? ほらいくぞ~」


 「え!? ちょっと待って! なんでそんなに平気なの!? 私と一緒なんだよ!? 少しはためらわない?」


 そう言い、気にしているハミィの言葉を聞こえない振りをし、ギルドの中に入って行った。


  ギルドに入りクエストを見ていたがハミィがいずらそうだったので適当にハニービーのクエストを受け、生息地である南に行く為に移動をはじめた。


 向かう最中にも周りの目はかなりあったが気にしない様に職人通りを歩くとおなじみのカマウリさんの店が見えてきた。


 相変わらず店主は店の前で腕を組み、仁王立ちをしている、また客をとれなかったようだ。


 毎日ああしてるのかな? と考えていると向こうもこっちに気づいたようで軽く手を挙げて挨拶をしてくる、ちょうど盾のこともあるし、挨拶をしてから移動しようと俺は話かける。


 「こんにちわ、カマウリさん。丁度よかったよ」


 「よう! コウ丁度よかったってなんか用事だったのか?」


 「うん、盾のことでちょっと相談がね……会うたびにこんなこと言うのは申し訳ないんだけど、安い盾ってない?」


 現状お金はほとんどないと言っていいほどしか持ち合わせがないのだ、残りのお金も二人から貰った銀貨の残りで、ただ生活するだけならある程度まではもつだろうが俺の目的は盾だ。


 いつまでも二人を待たせているわけにはいかない。


 「安い盾ねぇ………、コウ、その質問はちと難しいな」


 質問がむずかしい? どうゆうことだろう? 安い盾があるかどうかを聞いただけなんだけど。


 「いいか、盾ってのはなピンからキリまである。もちろんこの言い方をしたら剣や鎧なんかもそうなるだろうが、盾に関しちゃまた別なんだよ、一言で盾と言っても色々ある、木で作っているものや鉄で作っているもの、その中でも魔法職用の盾、近接用の盾ってなぐわいに色々あんだよ、お前さんが求めているのはどれかがわからんって事だ、後ろにいるの連れだろ? そっちの盾なのかコウの盾なのか、そこら辺も言ってくれんとな」


 どうやらカマウリさんは俺の後にいるハミィを見てそう言ったようだが、彼女の今の状態を見ても態度、対応を変えないで話してくれている事に俺は深く感謝し、この人は本当にいい人なんだなと思い、彼女に見えない様に目を閉じ、顔を軽く下げお礼をした。それはそうと話をすすめないと。


 「盾は俺のだよ! そろそろ欲しいんだけど安いのない?」


 結構無茶を言っている気はするが自分で考えるよりこの人に聞いた方が間違いはないだろう。


 「ん~コウの盾か、そうなると鉄の物になるな。まぁいい、銀貨1枚でなんとかしてやんよ! それでどうだ?」


 盾の相場は正直全く分からないけどこの人が言うならそれはかなり安いだろう。


 「うん、それでお願いします! まだお金ちょっと足りないから後でまたくるね!」


 「なんだ、今じゃねぇのか、わかった! 用意しとくからいつでも来な!」


 そう言ってくれたカマウリさんにお礼を言い、俺達は南の外へと移動し、ハニービーの生息地へと移動して行く、町の外は晴れているという事もあり、モンスターはいつもどおりうろうろしていて、数も周辺にかなりいるようだった。


 周囲を見渡している俺に風が優しく吹き、本当にいい天気だなと思わせてくれる。なんとなくハミィの方を見ると、腰当たりまである長い髪を手で抑えて空を見ていた、その仕草はとても綺麗で目を奪われ――



 今は男だ!!!



 それを思いだし正気に戻った、だが次に風が彼女の香りを俺へと運んで来る、それはとてもいい香りで安らぎを与えてくれ、俺は心を奪われ――――




 駄目だ男だ!!!




 また正気に戻った、なんだこれ!? 魅了の魔法でも使ってんのか!? このままじゃまずい、兎に角受けたクエストをやろう! そう決意を新たにハミィを見ない用にする。


 今回受けたクエストはハニービーの討伐5匹で報酬は銅貨5枚と安いものだが目的はそれだけではなく、周辺にいる奴も狩り、素材をもち帰る。


 早速始めようと俺は剣を抜きハミィを見るともう準備はできている様で、俺を待っている様に見えた事から手始めに近くにいる奴に行こうと走り出した所で俺は自分の体が薄く光に包まれている事に気がついた。


 なんだこれ?と不思議に思い、止まっていると後ろからハミィが何かを言っていたのでとりあえず彼女の所に戻る。


 戻って来た俺を見て、なにしてんの? と言いたげな表情だったのだが体が光るなんて今まで味わったことがないんだ、まずこれを説明してほしい!


 「ハミィ、俺の体なんか薄く光ってるんだけどこれなに??」


 「なにって……シールドだけど……?」


 なんですかそれ? 聞いたことないんですけど!!


 「ごめん、シールドってなに?」


 「そっか知らなかったんだね、えっとね、シールドは魔法をかけた対象の防御力を上げてくれる魔法だよ!タンクさんが突っ込む時に合わせて使うから、行く時は一言言ってくれるとかけやすいと思うよ!」


 そんな魔法があったのか、俺の基準はカッチェになってるから知らないことも多いんだろうなと考えていたのだが。


 「シールドはヒーラー職に就いた時に必ず行くことになる場所で教えてもらうの、だからどのヒーラーさんでも使えると思うよ?」


 どうやらカッチェが使ってなかっただけの様だと思い知らされた、そんな物持ってるなら使ってくれよカッチェ! コーン相手にダメージ食らわなくてすんだんじゃないのかこれ! まぁいまさら言ってもしかたがないんだけどさ。


 俺は気持ちを切り替えてもう一度突っ込む体制に入り、走り出す前に行くね! と声をかけて走り出した。


 走りながら剣を構え、狙いを付け、ふらふらと飛んでいる所をすり抜ける様に斬り落とすと、ハニービーはそのまま地面に落っこちて死んでいた、動きも遅かったし逆に外してたらかっこわるかっただろうな~などと考えながら針を回収しハミィの元に戻る。


 「おつかれ! コウって盾持ってなかったから心配だったんだけど大丈夫そうだね!」


 なるほど、さっきのシールドはハニービー相手にでも信用されてなかったってことだったのか。


 「さすがに大丈夫だよ、ハニービーだしね!」


 「そっかそっか、ならパパっと釣っちゃうからコウに処理任せて行ってもいいかな?」


 おそらくハミィがモンスターをおびき寄せて俺が倒すってことだろう、それぐらいなら大丈夫だがそもそもどうやって釣るつもりなんだろう?


 「大丈夫だけどどうやって釣るの?」


 「ん? こうやって!」


 そう言ったハミィは杖を少し離れた場所で飛んでいるハニービーに向けると、杖の先から青く丸い塊を飛ばしてぶつけて見せた。


 なにそれ!? そんな事もできるの!? そう驚いていた俺だったが攻撃をされた事に怒り、こっちに向かって来るのが見えていたのでとにかく倒してからだ、と向かって来るハニービーに剣を構え、届く範囲に来た時に斬り落とした。


 針の回収をしなければならなかったのだがそれよりもさっきの方が気になる!



 「今のなに? なんか飛んで行ったけど!?」


 そう質問し、驚いている俺にハミィは説明してくれた。


 「今のは杖の先に魔力を集めて飛ばす魔法だよ、これも初めに教えてもらう技だからヒーラーはみんな使えるよ……?」


 みんな使える? カッチェとはまだそんなに一緒にクエストをこなしてないけど、一回も使ってる所見た事ないんだけど! それ使ってくれてたらもうちょっと楽にこなせてたんじゃないか? まぁいいけどさ。


 そんなことを考えていた俺をよそにハミィは持っている杖をブンブンと振り回しなにやら気合を入れている様に見えた。


 「それじゃぁドンドンいくよ~!」


 そういいながらハミィは周りに飛んでいる奴に狙いをつけ、次々に球を飛ばし当てて行き、俺は次から次へとくるハニービーを斬り落として行き、狩りを初めてからどれくらいがたったのか、俺は疲れ果てて地面に転がっていた、ハミィが提案したやり方は効率面でいえばかなり良かったのだがどうにも俺の体力がもたない。


 それにハミィが釣り、俺が狩る、このやり方を続けるにはまず釣ったハミィに魔物が近ずく前に倒してしまわないと彼女が怪我をするおそれがある、弱いとはいえハニービーは普通の鉢に比べれば大きさが全く違う、そんなのにもし刺されでもしたらかなりの怪我をおうことになるだろう、それを防ぐ為には近づいて来たところを倒すしかないのだが、そこにも少し問題があった。


 ハミィは一匹目を釣り終るとすぐに二匹目を釣り、俺が倒しているのを確認したうえでまた次を釣る。

そんなやり方でやると当然俺の体力がもつわけがない、その結果俺は地面に転がり動けなくなるほどにまで疲労していた、まぁそのかいあってかハミィを中心に全方位に死体が転がっている状態にはなる。


 数だけで言うとかなりの数を倒したが素材の回収はハミィに任せ、俺は兎に角動けるように休息をとるしかない、目を閉じ、浅い呼吸を繰り返し休息を取る俺にハミィは素材を回収する手を動かしながら話しかけてくる。


 「おつかれ~、大丈夫? そのままでいいよ! 回収はこっちでやるから~」


 なんだろう、いいように使われているような気にもなるが今はまかせよう。


 「ごめん、ちょっと頼むわ。少しでいいから休ませて……」


 「はいはい、いいよ! そのまま転がってて~」


 その言葉に俺は甘えることにし、大の字になるながら閉じていた目を開け空を見る、始める前と今では空の色もほとんど変わりはなく、そんなに時間がたっていないのだろうか? と思うほどなのだが、気になったのは他にもある、倒した数だ。


 近づいてくるのを倒す事に必死になっていて倒した数なんて考えてはいなかった。


 「ハミィ、結局どれくらい倒せたの?」


 自分のこの疲労感にあうだけの数を倒せているのだろうか? 時間から考えるとそこまでの数にはなっていないような気もするのだが。


 「んとねぇ、今32個目回収したところ~」


 32個だと……? 疲れるわけだ、まぁでも悪い気分ではないな……


 収穫はあった、それに今回の事で自分には体力もまだたりない事が解ったし、今後の課題も知ることが出来た、それが何よりの収穫だろう、今後はそっち方面も鍛えていかなければ……


 そんな事を考えながら今も地面に転がりながらも空を見て休息を取る俺にハミィの声が届いた。


 「コウ~、終わったよ! お疲れ様~大丈夫?」


 素材の回収を終え俺のそばに歩いて来たハミィがそう声をかけて来たのだが、地面に転がっている俺を立ったまま腰を折り曲げ、肩から流れてくる髪を抑えながら言うその仕草は目を引かれるような気持になる。


 狩りを始める前もそうだったが、なぜか目をくぎ付けにされるその仕草はある意味反則だろうと思うが、もしかしたら自分が気にしすぎているだけなのか? とも考えてしまう、なんせ今は男なのだから!


 しかしこれはもう一つの課題を付け足すことも考えてもいいかもしれない、精神面の強化という課題を。


 そう考えているとハミィが俺に手を差し伸べ、立たせようとしてきた、その手は当然ではあるが男の手でゴツゴツとしている、でもなぜだろう? なんと言うか優しさを感じる様な手だ。


 差し出されたその手を取って立ち上がるがまだ少し疲れて足がおぼつかない感じはする、でも普通に行動することぐらいはできそうになってはいる。


 手を貸してくれた事に礼をいい、深呼吸をして呼吸を整える、その間も彼女は待っていてくれた、その事にすこし申し訳なくなるが話をきりだす。


 「ありがとうな、それでどれぐらいの数になったの?」


 さっき聞いた時はまだ途中だったから最終的にどれぐらい俺は倒したのかな。


 「えっとぉ~全部で39個! 頑張ったね~コウ! それにね! いいもの見つけたよ!」


 そういって差し出された手の平に乗っている物を見ると星石が一つあった。


 これだけでもかなりのプラスにはなる、素材も考えると盾を買うこともできるだろう。


 「頑張ったかいがあったよ……ハミィはこれぐらいの稼ぎで大丈夫? まだたりなさそう?」


 勢いでペアを組んだものの彼女の必要とする額を聞いていなかった、足りないのに帰ることはできないし、確認はしておかないと。


 「そんなことないよ、十分すぎるぐらいだよ! 石だけでもそれなりになるしコウのおかげで素材もかなり集めることができたしね! 買い取ってもらったら二人で分けてもかなりの額になると思うよ!」


 少し喜びながら言う彼女の表情は初めて会った時や、ギルドで話しかけた時と比べると見違えるように明るくなってはいた、喜んでもらえたならよかった。


 「それじゃ町に戻ろうか、お腹も減ったしね」


 「そうだね! それじゃぁ戻ろっか!」


 そう言葉を交わし並んで歩く二人の足取りは軽く、その先にある町へと進んでいった。





 町に付き、門をくぐり、少し歩くとカマウリさんの店が見えて来る、店の前には店主であるカマウリさんが仁王立ちしている所しか見たことがなかったのだが今はいないようだ、やっと客捕まえれたのかな? などと思っていると店から見慣れた二人組が出てくるのが見えた。


 一人はハンターでもう一人はヒーラー、その二人を見て俺はたまらず声をかける。


 「マジェ! カッチェ! なにしてんの~?」


 その声を聴き、振り向いたふたりは俺を見つけるとそばまで駆け寄り、嬉しそうにしていた。


 「よう! そっちこそ何してたんだ?」


 「どこかいってたの? 疲れてない?」


 機嫌よさそうにそう二人が話しかけてくれて、俺はまた会えたことからの喜びを抑えながら言う。


 「今クエストの帰りなんだよ、少しお金稼ぎたくてね! 疲れてはいるけどお腹減ってることの方がしんどいかな」


 「お? 腹へってるのか? それじゃどっか食いにいこうぜ!」


 「そうだね! 私たちもお昼にしようかって話してたところだし!」


 そう誘ってくれた二人だが問題がある、今の俺は一人じゃない、この町でハミィの事はほとんどの人が知っていることらしいが二人の反応がわからない。


 どう説明すればいいんだろう、ペアを組んだ所から話してみるべきか。


 「コウ、大丈夫だよ~、コウが選んだ人なんでしょ? なら私達は何も思わないよ」


 「そうだな、気にする必要なんかないぞ!ってかカッチェ! 俺達まだ挨拶すらしてないぞ!」


 「あ、そうだね! それじゃぁ……」


 そういうと二人は俺の後ろにいたハミィに近づき、手を伸ばし、こう言ってくれた。


 「俺はマジェ、コウの仲間だからよろしくな!」


 「はじめまして! カッチェスです、気軽にカッチェと呼んでくださいね」


 二人の唐突な自己紹介に困惑しながらも出された手を順番に握り返し、彼女は言う。


 「コウさんとしばらくペアを組ませていただく事になりましたハミィです、よろしくおねがいします」


 おそらく緊張をしているせいか少し声が裏返っていたが三人のそんな姿を見れてよかったと思った時だった、ガチャガチャと音を立てながら近づいて来た人が俺のすぐ後ろで止まった事に気づき、振り返ってみると。


 「コウではないか、こんなところで会うとはな、頑張っているか?」


 と声をかけて来た、そして俺は見た! その人の鎧はとても素晴らしい物だと……磨き上げられた()()のフルプレートで何者をも寄せ付けぬ盾……あぁ……これは……これは………!





 「貴方だれですか?」




 そう自然と声が出た、だって顔見えないんだもの! わからないよ?



 「ぬ? 貴様、師匠の姿もわからんとは……なんてやつだ……」


 そういいながら隠れていた兜を取ると、中からはいつものサイモンさんの顔がそこにあった。


 「なんだ、サイモンさんじゃないですか。そんなの着てたらわかりませんよ」


 「何を言っている、気でわかるだろうが!」


 いや、教えてもらったけどちゃんと使いこなせてないんだからそんな事まで感じとれませんよ?


 「それでサイモンさん何しているのですか?」


 「なに、鎧の整備に来てたが今から戻るところだ、しかしまだまだ修行がたりんな、コウ! 貴様はこのまま鍛錬所に来い! 鍛えてやる!」


 「ごはん食べてからでもいいですか?」


 「許す!」


 あ、いいんだ!? 言っといてなんだけどダメだと言われると思ってた。


 「わかりました、ではあとでうかがいますね」


 「よし、それはそうと後ろにいる三人はコウの仲間か?」


 後ろにいる三人、マジェ、カッチェ、ハミィのことだろう。


 「はい、マジェとカッチェは俺が鍛錬所に行く前からの付き合いで、ハミィは今日ペアを組んだ相方です」


 「ふむ、そうか……」


 そういいながら何かを考えこむサイモンさんだが、何故か俺にはそれがろくなことじゃないという感じがした。


 「よし、後ろの三人も連れて鍛錬所に来い!」


 なんだって? 全員で来いと? 他の三人はタンク職の訓練には関係ないでしょうが!? それにあんな場所にみんなを連れていけるわけがない!


 「いや、サイモンさんまっ―――」


 「では待っているぞ!」


 そう言い残し、俺の言葉も聞かずに行ってしまった、やっぱりろくなことじゃなかった……。


 恐る恐る後ろを振り返ると、先ほどまで仲良さそうに自己紹介をしていた三人は突然現れたサイモンさんの言葉に驚き呆然としている、しかし驚くのも無理はないだろう、関係がない職業の人間まで来いと言いはなったのだから。


 全く、相変わらずとんでもない人だなと俺はサイモンさんが歩いて行った道をただただ見つめ、とりあえず動かない三人にこう言った。



 「あきらめろ」と。

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