遠山の決断
パソコンの調子が悪くって、苦労してます。マウスが言うことを聞いてくれないんです。仕方がないので、昨日、新しいパソコンを買って来ました。この話が完結したら、キリが良いので、パソコンを変えようと思ってます。
遠山から報告を受けたAZたちは憤慨した。
特に、小林は、真由子の昔の行状を知っているだけに、田所親子をこき下ろした。
「信じらんない!田所院長って、ホント、超自分勝手なんだから!
本人たちが移住に同意してるんだから、黙って認めたら良いのよ!
もう子供じゃないんだし。あの誓約書だって、書いたのは、真由子ちゃんが二十五のときよ。
自由意思で書いたに決まってるじゃない。
こっちだって、あんなに何もできない子を受け入れようって覚悟を決めたのに。
百歩譲って、真由子ちゃんが残るとしても、大輔くんが付き合う必要ないわ。
例えソウちゃんがいるにしても、真由子ちゃんは真由子ちゃん、大輔くんは大輔くんなのよ。
大輔くんがこっちに残る必要なんかないんだから!
金づくで話をつけようってのも、むっちゃむかつく!
これは、大輔くんと真由子ちゃんの問題なのよ。親がしゃしゃり出てくる場面じゃないの!
大輔くんと真由子ちゃんはAZに同行すると言ってるのに。
それなのに、親が横やりを入れるなんて!
親馬鹿も良いとこよ!
自分こそ、金に飽かせて、真由子ちゃんや大輔くんを縛ってるじゃない!
横暴よ!」
「でも、真由子ちゃんの本音も見え隠れしてるような気がするなあ。
我が儘なお嬢さまだろ?
むこうでの仕事を考えたら、内心、移住したくないんだよ。きっと」
「そんなこと言っても、こっちに残るのだって、食料の自給率から言って、かなり大変なんだけどなあ……」
「それが分かってるなら、真由子ちゃんだって、田所院長を説得できたんじゃないかな。
危機感がないんだよ」
「こうなったら、大輔と真由子ちゃんに別れてもらうしかない。
そうすりゃ、少なくとも大輔は移住できる」
「でも、それって、大輔くんに離婚してもらうってことよ?」
「大輔だって、分かってて結婚したんだ。今さら、約束を破るようなことはしないさ」
「そうよ、真由子ちゃんがネックになるなら、離婚すべきよ」
数日後、大輔と真由子を呼び出して、AZたち、特に女たちは、二人して移住できないのなら、大輔だけでも移住するよう迫った。
つまり、離婚を迫ったのだ。
だが、大輔は真由子と別れたくないと主張し、真由子は大輔を離さないと泣きわめく。
どうにもこうにもお手上げだった。
とんでもない愁嘆場だ。
紛糾した会議をまとめたのは、やっぱり遠山だ。
小さなため息をつくと、独り言のように言ったのだ。
「無理強いできる話じゃないからな……」
怒りで顔を真っ赤にして 田所院長を罵倒する大滝をなだめて、遠山が暗い顔で言った。
「みんなが怒るのももっともだけど、二人をロミオとジュリエットにしたくない。
好き同士は、一緒にいる方が良い。
ソウちゃんのためにもその方が良い。
例え、後で、後悔するようなことになったとしても、納得して行動しないと、一生悔いが残る」
それから、大輔に向き直って静かに言った。
見たこともないような悲しげな顔だ。
大輔は、一瞬、遠山が泣くのじゃないか、とさえ思った。
「お前を世話した期間にかかった経費を積算する。
それを支払ってくれれば良い。
ウチとしても、移住に向けて、お金がいくらあっても足りないんだ。
田所院長が出してくれるなら、それに越したことはない」
数日後、田所院長はAZから送られてきた請求額を見て驚いた。
もっと、ふっかけられると思っていたのだ。
真由子は、あの程度のお金で一生縛ろうとするなんて卑劣だ、と気を吐いた。
金というのは、使いどきだ。
今でこそ、大した額じゃないと言えるけど、あの頃の俺やAZにとっては大金だった。
しかも、請求額は、俺が働いた分を差し引いた良心的なものだ。
本当は、こんなもんじゃない。
大輔は、喉まで出かかった台詞を止めた。
真由子も長田と同じく、金の苦労を知らない。
理解できないだろう、と思ったのだ。
結局、工藤の思惑どおり、AZと別れることに成功しますが、それって、正解なんでしょうか?
お話は続きます。




