井戸端会議
少し短いですが、アップします。
工藤の誕生日。
AZビルの談話室では、森を中心にAZの女たちが集まって、工藤を肴に盛り上がっていた。
「工藤くん、お誕生日に外泊するなんて、何するつもりなんだか……」
「きっと、うっふ~んって、ことになってるんでしょうね」
「当然でしょ。真由子ちゃん、工藤くんにベタ惚れなんだもの」
「とりあえず、一歩前進ってわけね」
「工藤くんって、そっちの経験ってあった?」
「AZじゃ……聞いたことないわ」
「そうね。彼って、AZじゃ品行方正なお医者さまって感じじゃない?」
「高校時代はどうだったのかしら?」
「噂じゃ、優等生だったらしいわよ」
「だったら、初めてってこと?」
「誰か、指導してあげたら良かったのに」
「そんなこと言っちゃって、相手して欲しかったんじゃない?」
「工藤くんだったら、一晩だけのお付き合いでも良いって?」
「…まあ、そうとも言えるけど」
「残念でした。彼は今夜で真由子ちゃんのものよ」
「でも、あの子、結構したたかよ」
「そうそう、聞いたわ。院長の娘って立場を逆手にとって、ドクターを何人も手玉にとってたって」
「こうなったら、あの子の目的は、何だと思う?」
「そりゃあ、もちろん」
「そうそう、目指すは、あれしかないわ」
「あれって、何?」
「もう、真子ちゃんってウブなんだから。デキ婚に決まってるじゃない」
「デキ婚って?」
「いわゆる『デキちゃった婚』ってヤツ。あの計算高い田所院長に工藤くんを認めさせるには、それが一番手っ取り早いもん」
「確かに。院長に工藤くんを認めさせるには、それが一番ね」
「でも、それじゃあ、下手すると、田所院長に工藤くんを取られてしまうわ」
「工藤くんを取られる前に、こっちに真由子ちゃんを取り込まなくちゃ」
「取り込むって?」
「真由子さんに工藤くんと一緒に移住してもらうってこと」
「でも、あの子、何にもできないわよ。あの爪見た?」
「見た見た。絵に描いたような馬鹿ね。キャンプにネイルアートして来るなんて、馬鹿以外の何ものでもないわ」
「可奈ちゃん、何もそこまで言わなくても」
「甘いわ。あの子、爪が短くても何もできないわよ。きっと」
「そんなことないわよ。お料理ぐらいするんじゃない?」
「ああいう子って、自分勝手なものなのよ。いくら、工藤くんが頼んでも、私は家付き娘だから料理や洗濯は家政婦がすることになってるって思ってるもんよ」
「でも、工藤くん、あの子が好きなんでしょ?」
「ナツの次に好きなのよ」
「ナツがかまってあげれば良かったのに。告白されたんでしょ?」
「簡単に断ったんだって?」
「しょうがないじゃない。
私、工藤くんみたいに計算高い人って、好みじゃないんですもの。
ハルみたいに、損得なしで動く人が良いの」
「でも、工藤くんは、あの計算高いところが魅力なんじゃない?」
「まあ、好き好きね」
「でも、真由子ちゃんって、それなりに仕込まなきゃ、使えないわ」
「せいぜい、優しく指導してよ。私たちのせいで鬱にでもなったら、工藤くんに恨まれるわよ」
女たちの井戸端会議は深夜まで続いた。
女たちの井戸端会議でした。女は怖い。
 




