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ヤツ等はみんな恋をする  作者: 椿 雅香
33/44

AZの中心人物たちの恋

少し短いです。


 工藤が、何も言わないのを了解の意と解したのか、遠山は岩崎を呼んだ。



 話は、これで終わり。そう眼で合図を送りながら。


 食事の途中で、工藤は何気なく尋ねた。


「ナツに思い人がいるって言ってたな。一体誰なんだ?」

「教えたら、告るの止めるか?」

「いや、一応、やるだけやってみるつもりだけど……」


 工藤が、憮然として言うと、簡単に手の内を見せた。



「ナツとDは、両想いなんだ」


 


 意外だった。あの二人が……。

 でも、一緒にいるところを見たことがない。




 岩崎は気付いていたのだろう。


 やっぱり、と小さくつぶやいた。



「どっちも告白もできないでいる。

 仕方がないんだ。


 二人ともAZのサブリーダーだから、あの二人に憧れてAZに入った連中だっている。

 だから、みんなの相手が決まるまで、あの二人は、自分たちの思いを口に出せないでいるんだ」


「じゃあ、どうして、両想いだって分かるんだ?」


「両方から、別々に相談があった。ワタシ以外誰も知らないことだ」

 

 

 喉の奥で笑うと、不思議な色気がにじみ出た。


 男でも女でもない微妙な色香だ。


 

 そそられて、マジマジと見つめる工藤を睨め付け、岩崎がさりげなく切り出した。



「大滝くんや森さんがそんな苦労してるってことは、君はもっと大変なんじゃないか?」



 

 それで、気が付いた。


 だから、遠山は神聖不可侵。女も男も相手にしないのだ。




 AZの結束のためには、恋愛は取り扱い注意事項だ。

 大滝や森が態度を明確にすると、男女間がギクシャクする可能性がある。

 大滝に言い寄られた女や、森に告白された男は、今いる恋人を放り出すかもしれない。




 それと同じように、遠山が旗幟鮮明にすると、AZが空中分解する恐れさえ出る。


 女でも男でも、遠山に愛していると言われて、普通でいる方が難しい。

 完全にのぼせ上がって、周りの連中のやっかみに合うだろう。 




「AZは、恋愛の自由を保障するんだろう?

 その活動を支えるため、結果的にリーダー自身の恋愛が制約されることになるのは、矛盾していると思わないか?」



 岩崎が重ねて言い募る。



 岩崎は、遠山を性別に関係なく手に入れたいと思っている。

 顔に、はっきりと遠山が欲しいと書いてある。



 AZのリーダーの恋愛が制約されるという現状は、岩崎にとって妨害以外の何ものでもないのだ。 

 


 工藤は、これまで表だって遠山の性別に言及した人間がいないことを思い出した。

 岩崎だけじゃなく、工藤にさえ隠すのだ。


 AZの結束の堅さを示すようだった。




 だが、岩崎は遠山の性別を度外視して恋をしていた。

 そこまで追いつめられていた。




「大丈夫。みんなのカップリングが進めば、最後にDとナツがカップリングしても誰も気にしない。

 みんなして祝福してくれるさ。あの二人が両思いで良かったよ。

 

 ワタシも最後に残った誰かとくっつくか、くっつかないか、それだって自由だ。


 それに、向こうへ行く前、こっちで恋愛を楽しむことだってできる。


 その点は、生真面目な工藤先生とは違う」




 遠山がなだめるように諭すと、岩崎も黙り込んだ。



 向こうへ行く前、こっちで恋愛を楽しむことだってできる。

 つまり、こっちで岩崎との恋愛を楽しむことだってできる、と言ったのだ。

 


 



岩崎は、遠山を得たいと悶々としているようです。

AZと別れたい工藤は、ここが踏ん張りどころです。頑張れ、工藤。

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