契約の儀式?
テントの中
「いつまで放置しているんだ。メシはまだか!」
ずっと縛られたまま放置され、コモルはわめいている。本音では怖くてたまらなかったが、騒いでないと不安に押しつぶされそうだった。
その時、テントが開いて、何人かの美少女が入ってくる。
金髪ツインテールの美少女、赤髪と青髪の美女と、メガネをかけた白髪の美少女だった。
彼らは何事か話し合うと、金髪がコモルの前にたつ。15歳くらいのかわいらしい少女だった。
彼女はコモルの目の前にくると、ジーっと彼の目を見つめてくる。
「お嬢ちゃんは誰だ?もしかして、これがテンプレってやつか?」
期待でドキドキしているが、彼女たちは困惑しているように顔を見合わせる。
しかし、コモルはそんなのどうでもいいとばかりに、金髪少女と見つめていた。
(この子が俺のご主人様になるのか。まあちょっと幼いけど、かわいいな。何年かしたらストライクゾーンに入るから、ゆっくり育てるか。とりあえず、唾つけて)
そんなことを思ってニヤニヤしているコモルに、金髪の少女は心配そうな顔をしてやってきた。
「凸凹凸凹凸凹……」
何かつぶやきながら、紫色の液体が入った瓶を渡してくる。
「これを飲めって?いやだなぁ」
そうは言うが、周りを騎士の格好をした少女たちに取り囲まれている彼に選択肢はない
「わかったよ。えいっ!」
覚悟を決めて飲み干すと、甘い味が口いっぱいに広がった。
金髪少女は飲んだのを確認するかのように、顔を近づけてくる。
その綺麗な顔を見ていると、邪な思いがわきあがってきた。
(おっ。契約の儀式か。いいぜ。ばっちこーい)
そんなことを思いつつ唇を突き出して待っていたが、金髪の少女は首をかしげるだけで一向に近づいてこなかった。
(じれったいな。よし!)
コモルは自ら顔を前に出し、金髪少女の口にそっと自分の口を近づける。
口と口が合わさった瞬間、テントにバチーンという音か響き渡り、コモルは吹っ飛んでいった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!無理やりキスされたぁぁぁぁ!」
少女は地面にしゃがみこんで泣きじゃくっている。
奇妙なことに言っている言語はわからないが、同時通訳のように意味が頭に伝わってくる・
「シ、シャロン様!気をしっかりもってください。だ、大丈夫です。モンスターにでも噛まれたと思って……」
「で、でもトリスタン!ボクは初めてだったのにぃ!」
トリスタンと呼ばれた青髪美女に慰められても、シャロンという金髪少女は泣き続けていた。
「あっはっは!まさか姫にキスするとはな。度胸あるじゃねえか!!」
赤髪の美女は腹を抱えて笑っていた。
「こ、この恥知らずめ。姫に破廉恥行為を行うとは。いかに女神に選ばれた者だとしても、許せん!」
頭に血が昇った青髪美女が剣を振り上げるが、隣の赤髪美女に止められる。
「トリスタン。彼はみたところ、我々エルフじゃねえみたいだぜ。耳が平べったい。習慣が違うんだろう」
「ガラハット。ぐぬう。しかし……」
トリスタンは剣を降ろして耳を傾ける。
「彼を召喚したのは俺たちだぜ。異人種コミニュケーションにはいろいろ行き違いもあるだろ。それをいちいち咎めていたら、俺たちには誰も味方してもらえなくなるぜ」
「……わかった」
トリスタンはしぶしぶ剣を納めた。
「どういうことだ!お前たち俺を召喚したのか!」
それを聞いたコモルは、食って掛かる。
そのとき、怯えてみていた白髪のメガネ少女が、コモルに話しかけた。
「あ、あの、えっと。言葉が通じるようになったんですね?『言語』の基礎ポーションが効いたみたいでよかったです」
「ごまかすな!」
「ご、ごめんなさい。私は宮廷騎士のシルビアと申します。シャロン姫に代わって、勝手に召喚したことを謝罪します」
白髪の少女、シルビアはふかぶかと頭を下げた。
謝罪と聞いて、コモルはにんまりとする。
「ふーん。俺は被害者なのに縛られたままなのかぁ?」
それを聞いたシルビアは慌てて騎士たちに伝える。
「彼を丁重に扱ってください!」
ようやくコモルを縛っていたロープがはずされるのだった。